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戌年の終わりに思う「コミュ力は犬猫に学べ」

牧野雅子2018.12.26

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2018年も終わろうとしている。この一年、何かと驚く事が多かった。
たとえば、医学部入試の性差別問題。そういうことが行われている事実自体にも驚いたし、それを正当化しようとする「論理」が性差別そのものなのに公言してはばからない現状の差別認識にも驚いた。こういう大学や病院は、そこで働くすべての女性職員や患者に対しても同様の差別認識でもって対応してるんだろうなと思う。

女子はコミュ力が高いから男子との能力差を補正したとかいう正当化にも、びっくりした。コミュ力が高い医者って、最高じゃないですか。わたしは、この数年間に何度も入院を経験してきたから、患者としていろいろ言いたいことがあるのだけれど、患者の声に耳を傾け、ちゃんと向き合ってしてくれる医者は、大歓迎ですよ。
若い男性には伸びしろがあるとかいうのも、そんな未知の不確定な可能性に賭けるのなら、何のために入学試験やってんの? 受験料とるんじゃないよ、と怒りが湧く。こんな論理で守られるしかない若い男子学生も相当にバカにされていると思う。ガラスの天井ならぬガラスの高下駄。さぞ、歩きにくかろう。

今を遡ること20年、大学院のとある有名男性教授のゼミで、自分の研究テーマを説明していたときのこと。たしか、女性の性的自己決定権だとか、フェミニズムの議論を云々かんぬん、というようなことを説明したと思う。すると、その教授は、男女平等を掲げる憲法下にあって、性差別は存在しえない、仮にあったとしたら、憲法に反するとして社会問題になっているはずである、今、性差別であるかのように見えるのは「差別」ではなく、単に女性の努力不足によるものである、てなことを、言ったのだった。

その時わたしは、下を向いて呆れるのを通り越して笑いをこらえながら思っていた。「うっわー、こんなオッサン、まだ、おったんや…」

この教授は、このやりとりで、自らの差別意識の強固さを、わたしたちに知らしめてくれたわけなのだが、医学部入試問題が発覚したとき、思ったのがこの人のことだった。あの教授は、このニュースをどんな思いで見たのだろう。この明らかな女性差別も、女性の努力不足だと言ったりするのだろうか。女性が不利に扱われていることは分かっているのだから、男と同様に見られたければもっと努力せよ、とか言ってたりして。コミュ力云々という正当化についても、是非、見解を伺いたいところだ。

コミュ力といえば、多くの人がうなずいてくれると確信するが、犬のコミュ力の高さときたら、そりゃあもう、ヒト以上だと思う。飼い主がふさぎ込んでいる時に、そっと近づいて横に座り、時折ちらちらとこちらを見て、ぬれた鼻を顔に押しつけてぺろっとほっぺたをなめてくる。そのまなざしの優しいことといったら!
撫でてもいいよー、と、背中を向ける仕草は、普段の「ほれほれ、撫でなさいよ」と要求する時とは全く違う。撫でているうちに気持ちも落ち着いてくる。ううう、思い出しただけでも泣けてくるぞ。

最近、犬に加えて猫とも一緒に暮らすことになった。犬の散歩でよくお会いする方から、野良猫が庭で子猫を産んだ、引き取って貰える人を探している、と声をかけられ、なんだかんだで、雄の子猫がうちにやってくることになったのだ。猫飼い初心者のわたしは、おっかなびっくりの毎日だったが、いやいや、これが面白い。猫ってこんなにかわいいの? と、毎日びっくりしている。もちろん、子猫なので、なにかと大変ではある。毎朝早くから起こされるわ、あちこち傷は絶えないわ、洗濯物がエラいことになるわ、壁やらラグやらくちゃくちゃになるわ……。今朝も5時前に、ゴハンをねだる鳴き声に起こされた。

子猫が来てからというものの、この高さだったらジャンプしてくるかも、とか、この隙間だとすり抜けちゃうかも、とか、子猫サイズでものを見るようになった。子猫基準だと、うちの12キロの中型犬は、犬というより、牛や馬のレベル。子猫の爪切りをした後に犬のところに行くと、「うわ、牛? 黒毛和牛?」って感じでびっくりしてしまう。

よく聞かれるのが、犬と猫、ケンカしませんか、というものだ。実はうちの犬、子猫に対してもそのコミュ力をいかんなく発揮するのである。鼻を合わせて軽く挨拶すると、くるりと背を向けて匂いをかいでもいいよー、と促す。その後は、お気に入りの、太いロープの両端に結び目を作ったおもちゃを咥えてきて、猫の前に差し出して伏せの姿勢で待つ。猫が興味を持ったところで、結び目の片方を咥えて振り回し、一緒に引っ張りっこしようと誘う。
大きな黒犬が、白茶の子猫の前でロープ振り回して暴れているだけに見えなくもないが、子猫の方も、怖じ気づく様子はなく、ちょっかいをだしてみたり、犬のゴハンの様子を、家政婦は見たよろしく、柱に半分隠れて覗いてみたり、犬の尻尾をおもちゃ代わりに追いかけてみたり。

双方ともに、それなりに相手の生活空間に配慮しつつ、距離を縮めようとしているようで、飼い主としてはほほえましいことこの上ない。コミュ力は犬猫に学べ、なのである。

戌年だった2018年ももう、終わり。来年(こそ)はいい年になりますように。

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牧野雅子(まきの・まさこ)

龍谷大学犯罪学研究センター
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。 

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