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第五回 取材で出会った、「正義」という名の下に性犯罪自己責任論を女にだけ押しつけるメディアのマモルくん

牧野雅子2015.06.02

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研究テーマのせいか、経歴のせいか、性暴力について話を伺いたいという取材依頼が舞い込むことがある。中でもよくあるのが、女性が性暴力被害に遭わないためのアドバイスを、というものだ。ちなみに、依頼者はみな男性。
基本的に、わたしは取材を断らない。逆取材というわけではないけれど、記者やメディアがどんなことを考えているのか、それを知る絶好の機会でもあるからだ。
ある記者は、会うなり、こう飛ばしてきた。
「春から夏は、性犯罪が多くなるので、啓蒙的な記事を考えているんですよ。どうすれば、女性に、被害に遭わないように気をつけてもらえるかという内容で」
ツッコミどころ満載ですね。中には、女性が薄着になるから性犯罪が増えると断言する記者もいたりして、おいおい、ここから言わなあかんかあ、とタメイキがでることも少なくない。
だいたい、イマドキ「性犯罪」の被害防止を呼び掛けるキャンペーンってどうなのよ? 「夜道のひとり歩きはやめましょう」的な60年代、70年代と変わらない。わたしの実感としては、今の方がひどいかもしれない。
もちろん、彼らも、性暴力が被害当事者に与える影響は分かっている様子。だからこそ、と彼らは言う。
「若い女性を被害から守りたいって思うんですよ。記者として出来ることといったら、記事を書くことなんで」
おお、お出ましになりましたマモルくん。ここでは、とりあえず「若い」女性に限定したことには触れないでおきましょう。
「女性には、もっと警戒して欲しいんですよね」
なんだ、警戒って。 女性は外では常に緊張して警戒しないといけなんでしょうか。
「スマホを操作しながら歩いているとか、イヤフォンをして外の音が聞こえない状態で歩いているとか。狙われやすいと思うんですよ。加害者にとって格好の獲物というか」
獲物っていう言葉、それは加害者に聞いたこと?
「想像ですよ。自分がそう思うくらいだから、加害者はもっとそう思うんだろうな、と」
自分が加害者の気持ちになってみれば、ということですか。
「最近の女性は、見ていてもハラハラするんですよね。危ないなーって。もっと、こう、緊張感っていうか、見られているという意識を持ってくれよ、と」
いやいや、それはあなたが、普段から「そういう目」で女性を見ているということでしょう?
記者の言うことに、こうやっていちいちツッコミを入れていったら、場の空気が悪くなることこの上ない。
警戒せよというメッセージは、被害に遭った人に対して、警戒しなかったあなたが悪いという非難になると言うと、じゃあ、どうしたらいいんですかっ! 若い女性が被害に遭ってもいいと言うんですかっ! 少しでも防止できるのならその方法を知らせるのが我々の使命じゃないですかっ! と拳を振り上げ熱弁されることもあり、いやはや、マモルくんたちの「正義」の前では、わたしは女性被害者の敵みたいだ。
記者は、わたしが彼らの意図に同意して「アドバイス」をすると目論んでいたんだろうけれど、そもそもわたしに取材を申し込んできた段階で間違いです。「ご本を拝読してぜひお話を伺いたく」そう言って取材を申し込んできたけれど、本当にわたしの本を読んで取材に来たんだろうか?
マモルくん曰く、女性は自分が性犯罪の被害に遭わないために、知識を持って欲しい、のだそうだ。でも、それって、おかしくないか。
女性が、自分の心身の主体性を奪われないために、知識が必要だというのなら、分かる。自分の体のこと、心のこと、恋愛のこと、セックスのこと、その他諸々、こと「性」については教えられてこなかったと、自分のこれまでを振り返って、そう思うから。自分の体を慈しむ、そのための知識や知恵を、教わりたかったと思う。「性犯罪」に遭わないため(だけ)にではなく、自分の人生を思う存分生きるために。
性犯罪に関して「だけ」、知識を持つことや自衛を厳しく求められるのは、どういうことだろう。そう言うと、彼らは性教育の問題を指摘し始める。要は、寝た子を起こすな、ということらしい。彼らの論法は、女であるというだけで、男たちから狙われる存在なのだと知れ、そして守れの一本槍。性とは何かも、どうして自分が性暴力の対象になるのかも知らされず、何のために守るのかも、何を守るのかも曖昧なまま、とにかく守れ、それは自分の責任だ、と。
一方で、男性は女性のこと、女性の体や心について、どれくらい知っているんだろう。どれくらい、知ろうとしているんだろう。
「生理中だから」と彼とのセックスを断った彼女に、次の日も迫り、「だから、生理中だって言ってるでしょ」と言われたなら、「それは昨日じゃん、今日はOKでしょ」と宣った、びっくり仰天なオトコがいるという話を、一度ならず聞いたのだけれど、それは一体どういうことなんだろう。
そして。残念というか当然というか、こういうことを蕩々と語っても、記事になったという連絡はないわけですね。紙面の要望に合わせてコメントする気はさらさらないけど、なんだかなあという気持ちになってしまうのでした。

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牧野雅子(まきの・まさこ)

龍谷大学犯罪学研究センター
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。 

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