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睡眠時間とおべんとう

中島さおり2015.12.25

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 日本女性は世界で一番、睡眠時間が少ないのだそうだ。最近、『ニューズウィーク日本版』に出ていた、武蔵野大学の舞田敏彦講師がOECDの調査を元に作成した図表によると、40代後半の女性がまたその中でも一番、寝ておらず、平均睡眠時間が396分(6時間35分)。
 高校生の子どもを持つ母親は乳飲み子を持つ母親と同じくらい、寝ていないのだという。その一番の理由はお弁当作り。学校に学食がなかったり、部活が大変だったり、その上、遠距離通学になるのでお母さんは早起きしなければならず、結果、寝不足になるという話である。

 さて、私も高校生の子を持つ母親だが、フランスに住んでいると睡眠不足にはならない。それもそのはず、お弁当を作らなくてよいのだ。
 そのためか、フランス女性の平均睡眠時間は、同じ出典によると、OECD平均の510分をわずか超えている(フランスでの他の調査では平均7時間5分というのを見たことがあるが)。
 フランスでは保育学校(幼稚園に相当する3歳児から5歳児の在学する学校)から高校まで、学校に食堂は完備しているし、給食を食べたくなければ家に帰って昼食をとってもよい。高校も基本、歩いて行ける近所の学校に行くので帰って食べる子もいる。部活というものもないから、休日、部活のためにお弁当が必要ということもない。

 そんなフランスの学校でも、ごくたまに、お弁当が必要な機会がある。遠足あるいは運動会などのイベントで外で食べなければならない場合だ。
 そういう場合には、バゲットにハムやパテを挟んだサンドイッチをアルミホイルで包み、ポテトチップの袋や、デザートにするチューブ入りのコンポートなどをスーパーでもらうようなプラスチックの袋に入れて持っていく。
 実はうちの息子にしても、週に1回だけ、中学にお弁当を持って行く。「給食は不味い」と言うので、昼ごはんは家に帰ってよいことにしたところが仲良しの友だちに誘われて演劇クラブに入り、その活動が月曜日の昼休み。そんなわけで不肖私もお弁当を作ることがある。が、たいした負担にはならない。育ち盛りでおにぎりの数こそ4個、5個と要求するが、ラップに包んだおにぎりをビニール袋に入れて、水のボトル一本といっしょに持って行く。サンドイッチのこともあり、こうなるとバゲットを切って横に切り込みを入れ、ハムを挟んだだけで済んでしまう。

 この話をしたのは、彩り美しく、栄養バランスのとれたお弁当を子どもに持たせなければと朝、早起きして寝不足になってしまう日本のお母さんたちに、ちょっと手を抜いてもいいんじゃないかと思ってもらえたらなと思ってのことである。
 もちろん、学食を完備させるとか、部活というシステムを考え直すとか、働く母親に過重な負担がかからないよう行政がすべきことはあるだろう。けれど、システムが整わないなかでは個人が意識を変えて対応しなければという面もある。日本のお弁当は文化だと思うし、それはそれで素晴らしいものだが、美しいお弁当が作れなければ良い母親でないわけではないし、愛情を伝える手段は弁当だけではない。仕事があって忙しいお母さんが、睡眠時間を減らしてまですることはないのではないか?

 現に、働く女性がスタンダードなフランスでは、誰もお弁当作りのための早起きはしていないのだ。前の晩にバゲットを買っておいてハムを挟めば、立派なパリジャン・サンドイッチになるので、是非、パリジェンヌを気取って真似してみてはとおススメしたい。それほど早起きしなくても作れるし、高校生なら自分で作ってもよいと思う。

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中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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