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「♯保育園落ちたの私だ」の運動が燎原の火のように広がるのを目にして、ほんとうに日本は保育の問題をなおざりにしてきたのだなと思った。
 『パリの女は産んでいる』という本を書いて、フランスの女性が仕事を続けながら子どもを育てられる環境のことを伝えたのは、もう10年も前になるので、今日は知識をアップデートしながら、フランスの保育事情を書いてみようと思う。

 意外かもしれないが、フランスでも保育園はなかなか入所が難しい。2013年の調べによると、保育園およびそれに類する集団保育施設(日本的に言うと「認可・無認可含めた保育園」)に、少なくとも週に1回以上、預けられている3歳以下の子どもは全体の23%。だが、「週1回以上」となっているし、フランスの統計の「集団保育施設」には、週に2日とか3日しか預からない施設も含まれているので、日本で思い浮かべる「保育園」に限ればもっと少なくなるだろう。
 別の統計で、0から3歳児の面倒を「主に」見ているのは誰かというのがある。こちらは週に1日、2日預けるというケースは排除される。そうなると行き先が保育園という子どもは13%に過ぎない。
 実はフランスでも、「主に」面倒を見ているのはやはり親というケースが一番多い。およそ6割を占めている。ただし、なんらかの形で週1回以上、第三者に預けられている子どもはというと89%に達する。要するに、育児休業制度を利用して子どもが3歳になるまで仕事を休んだり、時短勤務をする人が多いということなのだろう。3歳時点で仕事に復帰できるのは、3歳児からは保育学校という幼稚園にあたるものが義務教育に準じていて、無償で全入になることが大きい。
 保育園の不足を補っているのは、保育ママである。「主に」の統計では、保育園の13%に対し、「保育ママ」は19%。「週に1回以上」の統計でも、一番多いのは認定された保育ママに預けられている子どもで30%を占めている。

 ひょっとして、フランスと日本の保育システムで一番違うのは「保育ママ」の活用かもしれない。共稼ぎ所帯に限れば、その38%が保育ママに頼っており、保育園に入れているのは21%だ。
 保育ママになる条件は、かつて子どもを育てた経験があり、受け入れに十分なスペースが家にあることだ。人物と家が認められて研修を120時間受ければ、自宅に4人まで子どもを預かることができる。保育士の資格があったりすれば、もちろん研修は受けなくてよい。
 近年、職業として認知度が高まった保育ママは、報酬は給与の形で受け取る。相場は子ども1人、1日(8時間)18,57ユーロ(1ユーロ=126,32円で計算して約2350円)。これで計算すると週5日で、月371,4ユーロ(約4万7千円)ということになる。保育ママとしては、4人預かれば1485,6ユーロ(約19万円)の計算になる。
 日本では保育士の給与水準が低過ぎて(平均17万)、仕事が続けられず潜在保育士がたくさんいるという。
 ではフランスの保育士の給与水準はどうかというと、2013年の調べで平均1698ユーロ(約21万円)である。フランスの平均給与が手取り2202ユーロ(約28万円)なので、25%下回ることになるから問題がないでもないが、日本よりは少しましかもしれない。

 保育士の年齢別の割合を見ると、25歳から30歳が最も多く14%でその後13%に下がったまま55歳までほぼ同じ。大変バランスがとれている。つまり、やめずに定年まで続けているということだと思う。
 一方、フランスでは保育士1人が担当するのは歩けない子どもであれば5人、歩ける子どもであれば8人だ。日本では0歳児3人に保育士1人、1〜2歳児6人に保育士1人なので、環境は日本のほうが良いようだ。
 保育ママ、保育園に次ぐ、子どもの預かり手は祖父母など家族メンバーで20%、保育学校の8%(2歳で入ってしまうケース)、家に専属のベビーシッターを雇うのが2%と続く。家庭で雇った場合の補助金もあることだし、保育園の費用は所得に応じてスライド制になるので高所得層にはかえって負担になる場合もあるため、管理職女性ではこの方法が4割に上るが、全体からみると非常にマイノリティーのようだ。その他、友人や認定のない保育ママなどが合わせて6%である。

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中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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