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新閣僚の女性たち

北原みのり2009.09.17

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 3年前に戻って、「まぁ、そんなに深刻に受け止めなくても、だいじょーぶよーん」と、自分に言ってあげたいよ、という気分。3年前、安倍政権。美しい国ニッポンの男女共同参画担当大臣は高市早苗、というお先真っ暗感は、いったい何だったのでしょう、と笑い出したくなるほどの、今回の人事。福島瑞穂さん、男女共同参画担当。
 
 
「弁護士時代からライフワークとしてきた(男女平等)。ひじょうにやりがいと誇りを感じている」
 女性差別がまだまだ根強いニッポンのなか、女性差別問題に本気で取り組むと発言。女性の労働条件の改善やシングルマザーのサポートなど、本気でやろうとする大臣の存在は心強いものね。ただ、驚いたのは、報道陣の態度。他の大臣の時にはすぐに質問がバババッと出たのに、福島さんの時に限って、シーン・・・・。やっと出た質問は、福島さんが話したことと全く関係のないことでした。恐らく、男女平等とか、男性記者(ほとんど男性記者だった)には興味ないし、その場にいた少数の女性たち(エリート)には、どーでもいい話なのかも。
 また、法務大臣には千葉景子さん。国際基準に基づいた人権侵害救済機関を設置する、と明言。(日本政府は国際機関から、あんたら男女平等、全然達成できてないじゃないの、と今年、勧告されてます)はぁ・・・嘘みたいな、ご立派さ・・・。で、これについても、エリート記者集団はチンプンカンプンのようで、何の質問も出ませんでした。
 
 ”いきすぎた男女平等”に怒るバックラッシュな意見が00年代は跋扈してた(まぁ、現在形なところもあるけれど)。図書館からフェミ本が消え、宝島社が「まれに見るバカ女」というミソジニー(女性憎悪)まるだしの本を出し話題になり(『別冊宝島』といえば、レズビアンやフェミをいち早く刺激的に取り上げてきた歴史があるだけに・・・!)、一応全国紙であるはずの産経新聞も日々日々フェミ叩きに熱心だったりと。
 そういえば私も産経新聞には大きく取り上げられたわー。品川区の男女共同参画のシンポジウムに招かれた時なんて、誌面の5分の1くらいの大きな枠であることないこと書かれたのも、今はいい思い出(なわけねーよ)。まぁ、あることないこと、っていうのは大げさですね。あったことを、嘘みたいな表現で書かれたのね。
 
 
 産経新聞が書いたのは「性器をかたどったお面をかぶり公共の場で放送禁止用語を繰り返すアダルトグッズショップ店長が税金でシンポジウムに参加する」(←私からみてもやばいと思う)というようなこと。
 ちなみに、私がかぶったのは、性器をかたどったお面ではなく、ピンクのベルベットにビーズやファーをふわふわとつけた”かわいいぬいぐるみ”(それが”性器”に見えるなんて光栄です)。公共の場とは、市役所で行った20人程度のワークショップ内でのこと。放送禁止用語とはもちろん、まんこ。が、錯乱気味にまんこまんこと叫いたのではなく、なぜ、まんこ、を言ってはいけないのか、という話をするために、まんこ、と言ったのです。
 
 
 そんな勢いが産経新聞にあったことすら、今は、嘘だったのかしら・・・と、いう思いに。経営大丈夫? 安倍氏は顔色の悪い総理大臣、っていうことしか、心に残っていないしね。とはいえ、息絶えた・・・と油断していたら、やっぱり生きてました、とか、ゾンビになってしまいました・・・という方が怖いから、まだまだ用心していなくちゃいけないけど。
 
 
 今日、福島さんの演説を聴いていたら、インターFMとのやりとりに対する怒りが新しいものとして、よみがえってきた。2000年代に入ってからのフェミ叩きの嵐の中、もしかしたら私自身が意識しないままに、フェミであること、女の快楽を堂々と語ること、セックスのこと、オナニーのこと、性のこと、当たり前のこととしてそれらを表現することに、どこか萎縮していたかもしれない。
 
 ラジオ局に対して「女性の性の情報番組をつくりたい」とプレゼンしながらも、どこかで私は「もし、この人たちが産経新聞の記事を間に受ける人たちだったらどうしよう・・・」と考えた。「私は偏っている主張をしたいわけではありません」「私は常識的な人間です」 番組の中で何をしゃべりたいか、ということよりも、局の人たちが安心するような内容をまずは考えよう、としていた面もあったと思う。インターFMの男性社員が、「小学生レベルの性教育で十分。局としては、リスキーな番組を持ちたくない」というのを聞いて、はぁ!? と心で思いながら、「ははは」と反論せず力なく笑っただけの私だし。
 
 
 女がセックスを語り、女がマンコを語り、女がセックスを楽しむ。たったそれだけのことが、「リスク」になることのバカバカしさにすら、もう頭が及ばないくらい、ばかばかしいこの状況に頭と体が慣れてしまっていたのだと思う。過ぎたことに何を言ってもしかたないが、反省はできる。00年代で、あまりの理不尽な状態に破壊された数十マンコの脳細胞は取り戻せないかもしれないが、しばらくはリハビリ。民主党政権にそこまで期待しているの!? と言われれば、ええ、とりあえず、バックラッシュの息の根を止めてやってください、というくらいには、期待しています。政治が全てを変えるわけではないでしょうが、世の中の空気、というものは、前に立つ人の顔で決まることはとても大きい。そういうことを、私はこの00年の政治の変遷でずいぶん身にしみて感じてきたな、と、新政権の閣僚記者会見を、へーやるじゃん、と思ったり、この人いまいち、とか勝手なことを思いながら、色んな気持ちで見た。
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北原みのり

北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めてフェミニストが経営する女性向けのプレジャートイショップ「ラブピースクラブ」を始める。2021年シスターフッド出版社アジュマブックス設立。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)・佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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