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キョンキョンは隠し、エリカは全部見せる……

高山真2014.04.21

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 4月17日に始まった小泉今日子主演の『続・最後から二番目の恋』。第1回オンエアに先駆け、キョンキョン本人もドラマのパブリシティでさまざまな媒体で宣伝活動をしていたわね。アタシがもっともビックリしのは『AERA』。それも中のインタビュー記事ではなく、表紙。
おそらくは肌のくすみとか小じわとかを目立たなくさせるための方策だったんだろうけど、色調の調整のしすぎで、逆に人間っぽさが消えてしまったキョンキョンが拝めます。使われている紙の質とあいまって、なんかもう「タンスのいちばん奥に眠ってたおかげで、照明焼けもなくキレイな状態のまま残っていた、昭和50年代の雑誌を見つけた」って感じなの。色調調整の技術はもちろん、「刷りのチェック」甘さにも、首をかしげざるをえないシロモノよ。現在の紙媒体の印刷レベル、もっと進んでいるはずだもの。
中のインタビューでせっかく「年を取ることの葛藤はまったくない」とキョンキョン自身が語っている(かつ、中の写真は、表紙とは対照的に40代のキョンキョンがいい感じに写し取られている)のに、この表紙は、「そこまで語っている小泉今日子の心意気に逆に水を差してんじゃないか」と思ったわ。AERAの表紙の写真ってたいてい、モデルの陰影をきちんととらえている仕上がりだから、余計にその落差にビックリしてしまったのよね。
 さて、そんなこんなで始まった『続・最後から二番目の恋』。小泉今日子と中井貴一の軽妙なやり取りがウリになっているのは、開始2分でわかる。たぶん、パート1のときから、「ふたりの会話」は人気の大きな要因だったんでしょう。
 ただ、アタシは『続・~~』の第1回目を見ながら、妙なデジャブ感にずっととらわれていました。気の強くて弁が立つオンナと、それに振り回されはするけれど芯の強いオトコ……。35歳以下の人たちにはわからないでしょうが、『男女7人夏物語』とそれに続く『男女7人秋物語』の、明石家さんまと大竹しのぶのやりとりにそっくりなのよ。
 軽口を叩き合ったり、いがみ合っているように見えるオンナとオトコは、実は「好き」という言葉の代わりになるものを探して、ふたりの時間を隙間なく埋めている。ふたりとも頭もカンもいいのに、そういうとこだけ不器用……。そんな「設定」になっているわけね。あの会話の密度を「楽しい」と思うか、「意味わかんない」とか「ウザい」と思うかで、このドラマの好き嫌いが分かれるのでしょう。
「小地味に見える着物は、人に見せない裏地のほうが派手。でも、それこそが粋」みたいな感覚なのかしらね。こういうの、いまの若い子にどこまで通じるのかしら。前回のこのコラムで、「恋愛ドラマが少なくなったのは、若いオンナたちが『恋愛』に夢を見ることができなくなったからなのかも」とアタシは書いたわ。その思いは変わっていないけれど、もしかしたら、「言わない言葉のほうに真実があって、それを汲み取る能力が大事」みたいな考えも徐々に少なくなってきたからなのかもね。
 そんなことを、沢尻エリカ主演の『ファースト・クラス』を見ながら、さらに強く感じたの。女子同士の格付けのシビアさを描いたドロドロドラマって触れ込み通り、まあ、登場するオンナたちが自分以外のオンナに全方位的に毒をまき散らす、わかりやすい作り。もちろん、毒は心の中で吐いているだけよ。でもね、アタシが何よりビックリしたのは、その「心の中で飛ばす罵詈雑言」が、ご丁寧に一字一句モノローグになって出ていたこと。役者の表情やカメラワークで「何かを感じさせよう」という志、一切ナシ。「着物は裏地まで全部見せないと意味がないでしょ」と言わんばかりの作りに、呆然を通り越してむしろ清々しさすら感じたわ。なんかね、「ドラマ」と言うよりは、「2時間バラエティの中の再現ドラマの金がかかったバージョン」なのよ。主な人物ひとりひとりの初登場シーンで、ご丁寧にキャラ説明のテロップ入ってるし。
 この原稿を書いている時点で、第1回目の視聴率は明らかになっていないけれど、このドラマが人気を博すなら、そりゃあ恋愛ドラマは苦戦するはずよ。登場人物が「好き」だの「愛してる」だの2分に1回は言いまくるような恋愛ドラマ、情緒もへったくれもあったもんじゃないものね。
 懐古主義者と言われるのを承知で言うけれど、アタシはやっぱり最近のヒット曲も好きになれない。「君が好き」「君に会えてよかったよ」「君に会えないのが寂しい」みたいな歌詞がひねりも何もなくバンバン出てくるんだもの。ついにドラマまでそういう作りになってしまったのかもしれないわね……。
 で、『ファースト・クラス』、やはり下敷きになっていたのは『プラダを着た悪魔』でした。キッツいオンナがいるファッション雑誌の編集部で、ファッションセンスがかけらもない主役の若いオンナが外見も中身もレベルアップする、という話になるんでしょう。でも、「ディティールにこそ神が宿る」と思っているアタシは、沢尻エリカ演じる主人公のちなみが「ファッション業界で働くことをずっと夢見ている。見習いとして編集部で働くことになった雑誌『ファースト・クラス』を、毎号買って、スクラップブックを作るくらい好き」なはずなのに、編集部に出勤する初日(超勝負服で行かなくていけない日)に、クソのようにダサいカッコで行ったことがどうにも不満です。だってありえないもの、「大人カワイイ」が大好きな女子が、勝負服としてサイズの合わないトレンチに中途半端な丈のスカート、色の合わないブーツを選び、おまけに変な柄のリュック背負うなんて。『プラダを着た悪魔』で主演のアン・ハサウェイが演じていたのは、「ファッション雑誌の編集部に勤めることになったものの、実は『ファッションは軽薄なもの』と軽蔑している」から、ダサいカッコでオフィスに行くことをなんとも思わなかったわけでしょ。
 このドラマの制作側は、ドラマの冒頭で、「ハーイ、ファッション・ヴィクティムのみなさん、最近どう?」みたいな英語ナレーションをぶちかましている割には、ファッションのことを知ろうともしていない。「その人のファッションを見れば、どんな雑誌を読んでいるか、ある程度わかる」という、ごくごく当たり前の常識すら知らないの。リアルを描く気がないのならそれでもいいのだろうけど、今後どうなることかしら。
あ、ちなみにビッチモデルを演じた佐々木希は思わぬ掘り出し物でした。セリフやモノローグはすべて棒読み。が、ぶんむくれの顔でかました「舌打ち」と、ヤンキーばりに「ああ?」とすごむモノローグのリアルさ! モノローグ部分の字幕スーパーは「はあ?」だったけど、実際は「ああ?」。ヤンキーがケンカを売る相手の斜め下から顔を覗き込みながら言う、あの「ああ?」だったわ。嫌いじゃないわ、こういうダダ漏れっぷり。うふふ。

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