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「韓国のホンネ」と「さよなら、韓流」と。

北原みのり2013.03.05

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たった今さっき、友だちの朴順梨さんから「韓国のホンネ」という本をいただいた。久しぶりに会ったら、目がキリッ!とかっこよかった。今日、帰ったら読もう。とても楽しみ!
 
 “在日韓国人3世”として生まれた朴順梨さんが、この本で何を書こうとしていたのか・・・それはこれからわかること。でも、読む前からすっごくわかる。“この手の本”を書くのが、非常に非常に心を削ぎ、体力を使うことだということは。朴さん、お疲れ様。本当に、お疲れ様。
 
 最近「さよなら、韓流」という本を河出書房新社から出した。本の企画自体は2年前からあった。「韓流はエロい!!」と浮かれていた私の気持ちがそのまま、企画として通ったのだ。女たちがこれほど韓流にひかれるのは何故か。日本の地価が軒並み下がるなか新大久保の土地の値段をあげるまでのブームは何か。韓国語を学ぶ女性がこれほど増えている、その情熱の根底にあるのは何か? そんなことを考えたくて、書き始めた。
 
 ところが、この二年で、韓流を取り巻く空気が非常にきな臭くなっている。特にネット上の言説をみていると、見るに堪えない文言が飛び交う。在日に対する激しい攻撃、韓国人への憎悪、北朝鮮への容赦ない嫌悪、そしてまた韓流にはまる女たちへの罵詈雑言。それらは、あまりにも醜く、ゲスだ。
 
 ゲスで醜い罵りなど、放置しておけば良いと思っていた。だけど、それが自分の身に降りかかると、やはり怖いのだった。ネットでプライベートを曝されたり、虚偽の情報を流されるようなことをされたらなおのこと、気味が悪いのだった。さらに全く意味があるとは思えない闘いなのに、お金と時間もかかったのは厳しかった。この一年、私は警察に通い、弁護士に相談し、他にももろもろ時間とお金を使わざるを得なくなった。そういう私に対し、発言するんだったらリスクを覚悟しろ、と言う人もいた。
 残念ながら、ここは、本当にせこい社会になったのだと思う。言いたいことを言えない、言ってはいけない、自由に発言してはいけない、発言するのは怖いこと・・・そんな空気が当たり前のように馴染みつつある。
 
 美濃部達吉さんが「天皇機関説」を発表したのは大正元年だったという。そのことを、恥ずかしい話だけど私は最近知ったのだった。衝撃だった。本当に、本当に、本当に、衝撃だった。だって「天皇機関説」に関して私が歴史で習ったのって、天皇機関説を出した”から”、美濃部達吉さんは貴族院を離職することになり、で後々には226事件にもつながっていく・・・のだと(すみませ~ん、うろおぼえよ~)と思っていた。つまりは1930年代半ばに美濃部達吉さんは「天皇機関説」を説いたのだと思い込んでた。
 
 でも、実際にはウヨクがギャーギャー騒ぐ20年も前に、美濃部さんは「天皇機関説」を唱えていたのね。大正時代には、天皇について論じられる空気があったってことだよね。ちょっとちょっとそれってどーいうことよ! 一瞬だけどパニクった。なぜならば、「語ってはいけない」という空気になるまで、たった20年で十分だったのだ・・・ということを改めて突きつけられたから。
 
 時代も社会もあっという間に変わる。時代の空気に飲まれていたら、それは「私が大嫌いなものに、私の人生が超巻き込まれる」可能性があるということなのだと思った。
 
 10年前には言えていたことが言えなくなっていたり。または10年前では「それを言うのは憚られる」というようなことが、今、堂々と言えてしまったり。特に、韓国や中国や北朝鮮に対しては、そういう空気が強くなっている。日本社会を批判すると、「だったら出て行け」という声も大きくなっている。その中で、自分が考えていることを自由に発言する空気が、薄れているのを感じる。自由に発言することに、安心と安全を感じなくなっている。そんな空気がある。確実に濃厚になる方向で。
 
 怖いよ。言いたいことを言うのって。怖いよ。自分の立ち場を明らかにして声を出すのって。だけど、言いたいことを言えないという空気に呑み込まれるのはもっと怖いから、言おう。話そう。今日、朴順梨さんと話して、改めて思った。身体に力入れて、目力入れて、おっしゃっ! って声を出す人を潰しちゃいけない。あなたと共にいる。私の自由は絶対に奪わせない、という気持ちで。
 
※「韓国のホンネ」は竹書房新書から発売中です!
※「さよなら、韓流」は河出書房新社から発売中です!
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北原みのり

北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めてフェミニストが経営する女性向けのプレジャートイショップ「ラブピースクラブ」を始める。2021年シスターフッド出版社アジュマブックス設立。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)・佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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