ラブピースクラブはフェミニストが運営する日本初のラブグッズストアです。Since 1996

ajumabooks

リベンジポルノ男の扱われ方

田房永子2014.03.17

Loading...
 
 リベンジポルノについてのコラムを多く見るようになったけど、それらは「リベンジポルノにご用心!」「リベンジポルノは自分で防ぐ!」「彼の『撮らせて』を上手に断る方法」「自業自得と言われても仕方ありません!」などなど、女への警告ばかり。
 
 テレビのニュースでも、女子高生や10代の女の子にインタビューをして「裸の写真を撮らせてとか、送ってとか言われたことある?」「どうして送ったの?」と聞いているのを見た。「送らなかったら嫌われるかもって思った」「別れることになったらイヤだから」と答える女の子たち。「簡単に撮らせちゃダメでしょう(呆)」「ちゃんと断らなきゃ~(苦笑)」的な番組からのメッセージ。だけど男子への「裸の写真をちょうだいと頼んだことはある?」「どうして裸の写真をほしがるの?」と聞くインタビューは見たことが無い。一見、男子に聞くのはバカバカしく見える。男が女の裸やHな写真を欲しがるのは「当たり前」のことだから。だからテレビでいちいち流さないんだろう。
 
 だけど、「『撮らせて』って頼んだのに断られた時、不機嫌になったりしなかった?」「女の子が渋々撮らせてくれた時、どう思いながら撮った?」「女の子に振られたあと、『ばらまいてやる』って一瞬でも思ったことある?」とか、男子にも聞くことはたっくさんあるはず。「相手が乗り気じゃないのに写真撮っちゃだめでしょ~(呆)」とか、「仲良かった時にノリノリでくれた写真でも脅しとかに使っちゃだめでしょ~(失笑)」的な番組からのメッセージがあってもいいのに、男子側へのそういったものは見たことがない。
 だから、リベンジポルノに関連する女子は10代が多いと定義づけられているのが分かるのだが、男子がいくつなのかはよく分からない。同じ10代が多いのか、ちょっと年上の20代なのか。もしかしたら30代とか? 女の子ばかりが注目され、男は常にほったらかされている。
 
 こういう風に「女子に防止を啓発する際、同時に男子側にも啓発するべきだ」みたいなことをネットで言うと、「うちの長男に『こんなことするんじゃないよ』と言ったら『やらねえよ』って言われちゃいました。ちゃんと分かってる子は分かってるようです」という感じのことが返ってきたりする。その人の長男は、きっとちゃんとしてるんだろう、リベンジポルノはしないんだろう。だけど違和感がある。
 
 痴漢についての話の時もまったく同じだけど、なぜかこういう時「男はリベンジポルノ(痴漢)する人としない人がいる」とハッキリ分かれている、という言い方をするのが普通になっている。「しない男は一生しないしする奴はする」みたいな感じ。
 
 女の子は「リベンジポルノされる人とされない人がいる」という言い方はあまりされない。誰でもいつでも「被害者」になりうる、というのが前提になっていて、さらにそれは「撮らせてしまう、送ってしまう(痴漢の場合は「触られてしまう隙のある」)本人の落ち度」ってことで話がフィニッシュする。
 
 年はいくつでどんな人柄でどういう心理で行うのか、「リベンジポルノをする男」についても話すことはたくさんあるのに、まったく触れられない。触れられても「女の子に撮らないでって言われたのに撮るような人」とか「そんな男は付き合うに値しない」とか、『サル以下レベルの男です』と切り捨てられるリベンジポルノ加害者予備軍の男たち。そうやって進んだ話は結局「そんなサル以下レベルの男に写真を撮らせる女の子にも問題がありますよ」という女子への打撃オチがつく。
 
 「やっていない(やるはずのない)男には、お前もやるかもしれないから気をつけろと言ってはいけない」「男の子のことはまずは信用してあげなければいけない」空気が濃厚に漂っている。触れちゃいけない雰囲気、まずはそこから変えたほうがいいと思うし、もし本当に「リベンジポルノをする奴」が男たちの中でそんなにハッキリと異質な者として存在しているんだとしたら、直接その人たちへ防犯アクションを起こしたほうが被害が減るんじゃないだろうか?
 
lovepi20140316.jpg
 
 
Loading...
田房永子

田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

RANKING人気コラム

  • OLIVE
  • LOVE PIECE CLUB WOMENʼS SEX TOY STORE
  • femistation
  • bababoshi

Follow me!

  • Twitter
  • Facebook
  • instagram

TOPへ