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妊娠中のTENGAの必要性

田房永子2014.04.06

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 妊娠中の友人の家へ遊びに行く時、お土産にTENGAを持って行くことにした。  TENGAとは、女性器を模した男性用のオナニーグッズ。妊娠中の夫婦には、TENGAが必要だと私は思っている。


 私は妊娠中、セックスをする気になれなかった。アソコが実際は腫れてないのだけどなんとなく猿の尻のように赤く腫れているような感覚があって、ここに何かを挿入するなんて考えられなかった。だけど夫とのコミュニケーションは取りたくて、TENGAを自分のアソコの代わりとして使ってみたら、通常のセックスとは違う感覚を楽しめた。


 妊婦雑誌の「セックス特集」は、体位のことばっかり書いてある。「赤ちゃんに無理のない体位は後側位」とか「屈曲位はお腹を圧迫するのでNG」とか図解や「体調が悪かったら無理せず、愛撫までにしましょう」という解説が載っている。それらは暗に「セックス=『挿入』か『愛撫(手コキかフェラチオ)』することが前提の行為」であるとしている。私は妊娠中、触るのも抵抗があった。だから「挿入」か「愛撫」のどちらもできず、そういう人は「まったくしない」を選択するしか無い。
 そこにTENGAという女性器を模したものがあれば、直接、肌に触れずに負担なく「セックス」することができる。男性側のよく聞く意見「妊娠中のアソコに挿れるなんて怖くてできない」も、TENGAによって解消される。ゼロか100、どちらかを選択しなければならなかった妊娠中のセックスに、50という猶予をTENGAは与えた。

 

 

mamadatteTENGA.jpg  妊娠中の妻をもつ夫の浮気や風俗店への来店は、「よくあること」として世の中で認知されている。妊婦は「心身の負担をかけずに過ごせ」とあちこちから言われ、酒にも煙草にも「胎児の発育に悪影響のおそれがあります」と書いてある。酒と煙草の害は気をつけろ、とやたら言われるが、夫の浮気や風俗通いがもたらす心理的ダメージについての医療界などからの言及はほとんどされない。夫が他の女とまぐわうだけでイライラするのに、これから子どもが生まれるという時にわざわざそんなことをするなんて、今後への不安も高まり胎児へいい影響があるわけがない。本当に世の中が「胎児の発育」を真剣に考えているのならば、風俗店やセクシーパブ等の店頭に「妊娠中の奥様を持つ方のご利用は、奥様の心身の負担になり、胎児の発育に悪影響を与えるおそれがあります」という看板を出してもいいはずだ。
 

 

 

 「妊婦は酒も煙草も我慢して、セックスを100%で受け入れられないなら、夫が他の女を相手に射精することも仕方がないと思わなければならない」ということを世の中は静かに主張してくる。風俗店が協力して禁止してくれるわけでもなく、周りの人には「妊娠中は仕方ないよ」と言われることもあったりする。そんな状況にキレたらキレたで「妊婦はやっぱり赤ちゃんを守る母性本能で性格が変わってしまう」とかで片付けられて、全ての責任を妊婦一人に背負わせようとする。
 しかし自宅に女性器を模した物品(TENGA)があることで、50のセックスが可能になる。「家庭で“セックス”ができないから」という男側の「動機」を少しでも消滅させることで、一方的な理不尽さを和らげることができる。妊娠が判明した時に役所が渡す「母子手帳」と共にTENGAを配るべきだし、「たまごクラブ」にTENGAの広告が載るべきだと、私は本気で思っている。 
 

 「妊娠中にはTENGAが必要だ」と言い続けていたことが実ったのか、2012年の「たまごクラブ」のセックス特集にTENGAが小さく紹介された。「やる気のあるママにオススメ☆ なんとかしてパパの性欲を満たしてあげたいママにおすすめのグッズ」とキャッチがついていた。「たまごクラブ」がTENGAでのセックスに「精子管理」的な「妻のおつとめ」感を持っている様子が見えた。違う違う、そうじゃ、そうじゃない(鈴木雅之)。その辺のことは、先々週に発売された私の妊娠エッセイ漫画「ママだって、人間」(河出書房新社)に描いたので是非とも読んでいただけたらと切に願う。
 とにもかくにも、「たまごクラブ」で紹介されたことは、大きな前進だと思った。しかし2013年の「たまごクラブ」のセックス特集は無数の円グラフで埋め尽くされた信じられないほど地味なページになっていた。もしかしたら何かクレームがきたのかもしれない。前途は多難である。


 先述の友人に、TENGA・EGGの6個入りの詰め合わせと一緒に「ママだって、人間」もプレゼントした。本当は、妊娠中のセックスには実用性で言うとEGGタイプよりもカップタイプのものがオススメなのだが、TENGA・EGGはパッケージがとても可愛く、入門編としては最適なので選んだ。
 「妊娠してから体が変わっちゃって全くしていない、だけどしたいとは思っている」と言う友人はTENGA・EGGに興味津々で、「どうやって使うの?」と聞いてきた。少し説明をしたのだが、「『ママだって、人間』にそういえば描いた...」と思い「詳しくはこれ読んでみて」と伝えた。TENGAと「ママだって、人間」のセット(名付けて「ママだって、TENGA」セット)は産後も使えますので、妊娠や出産をした方へのプレゼントに最適です。
 ここまでTENGAのコマーシャルをしているけど、私には一銭も入らない。ノーマネーの勝負である。

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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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