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「オアシスにて」

茶屋ひろし2014.04.15

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前に書いた、職場で利用するビルのトイレでは、ときどき不思議なことが起こります。
件の小便器の上にある出っ張りというか、手荷物を置くスペースに、二、三ヶ月前の「赤旗」(新聞)が立てかけられるのです。
二分の一に折りたたんで、一面を見せるように広げて、二ヶ月たったくらいの古びた色合いになったものを、誰かが月に一度くらいの割合で置いていくようです。
掃除の人が見つけたら処分してしまうようで、その滞在時間は短いと思われます。なので、私が目にする偶然を思うと、もう少し頻繁に行われているかもしれません。
しかし一体なんのために・・。その一面記事も、とくにビッグニュースでもなく、なにより二、三ヶ月前の新聞で、しかもトイレに置いていく、という感覚が解せません。というか、気持ち悪い。
共産党関連の出版社からの年賀状には、「昨年も刊行物の配布に努めてくださりありがとうございました」と書いてあり、それらを販売するということは、広報か布教か、といった感覚なんだわ、と軽く驚いたことがありました。
トイレに古い赤旗を置いていく行為も、きっとそういう意味なのでしょう。
たった一人の(だと思う・・)行為を取り上げてこんなことを言うことはおかしいとわかっていますが、そういうセンスだから支持者が増えないのではないか、と案じてしまいます。
書店のほうも、元をたどれば「広報書店」がスタートでした。なので、昔からのお客さんにとっては、ウチで働いている人たちは、みな共産党を支持している、と思っている方も少なくないようです。
一般書とコミックを増やして懐柔路線(?)になっている今はそんなことはありません。「日本共産党」は必要な前提であっても、スタッフが支持するかしないかは別の話です。私ですら、いつも揺れ動いています。
そんななか、高齢の男性のお客さんにスタッフの女性が怒鳴られました。共産党関連の出版物を尋ねられて、探せなかったことが原因です。
そのときに、「この店で働いているくせに、なんだ、その心構えは」みたいな、ことを言われたらしく、彼女は驚きとともに憤慨して、最終的には嫌悪感に満たされていました。それは高圧的な物言いへの拒絶反応のようでした。
「そんなんだから、支持者が増えないのよ、ねぇ」と共感しましたが、ウチの店が「共産党」を売りにしていることも事実です。
「そんなところ辞めれば? と旦那に言われました」と返されて、なんとも言えなくなりました。
「そういえばウチの『アンネの日記』は破られていませんか」と無理からに話題をそらしてみると、「それは大丈夫です」と文庫の担当をしている彼女は笑いました。
『アンネの日記』の文庫本は、『苦海浄土』や『沈黙の春』などと同じく、売れるか売れないかではなく定番として常備しています。
「それよりも茶屋さん、竹田恒泰や櫻井よし子の文庫本が、たまにひっくり返されています」と報告してくれました。背表紙を見せないようにして棚に差し戻している、という意味です。「小さい」とその抵抗を笑ってしまいました。
私は身近な人(職場とか)と政治的な話題をするのが苦手です。それは、どんなテーマであれすぐに(私が)感情的になって、相手との関係を悪化させてしまう気がするからです。
高圧的なお客のことをどうこういう資格はありません。
右傾化に参加しているつもりはありませんが、そんな自分を省みると、その内容ではなく、政治への接し方としては、「右傾化現象」と同じ方法に寄っているような気がします。政治を身内感覚に落としてしまうせいかもしれません。
けれどその一方で、感情的にならない政治って何? なんか意味あんの? とヤンキー座りもしたくなります。
職場の会議で、アルバイトの人たちに長時間労働を頼もうとする社長(父)に延々と抵抗していたら、「君はいつからそんなに人権にこだわるようになったのか」とくたびれた声で言われました。そう来るとは思いませんでした。
家族で近所の神社に行った日は、石の階段を下りながら、「今の若いもんはもっと政府に怒らなあかん。ワシらの時はなんでもすぐに怒っとったけどな」と言ってたくせに(って、会社は政府ではありませんが)。
chaya140410.jpgそんなある日、書店で車椅子に乗った男性から、「科学的社会主義の本はどこにありますか」と尋ねられました。単語が聞き取れなくて、もう一度聞き返してしまうと、ムッとしながらも大きな声で同じことを言われました。
その時はよくわかっていませんでしたが、そのあと読んだ本で、日本共産党ではマルクス主義のことをそう呼ぶと知りました。じっさい店の奥にも選集が置いてあります。そのときはなんとなく思い当たって案内しました。
しばらくして通りかかると、その棚の前で、男性は気持ちよさそうに眠っていて、車椅子を押していた介助の男性はしゃがみこんで休憩していました。
ここはオアシスか! と胸の中で突っ込みました。
※写真は茶屋さんが勤める書店のマルクスコーナー。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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