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おばあちゃんの『膜』炸裂 

田房永子2014.09.08

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 日曜日にNちゃん(私の娘・2歳半)と二人でデパートに行った時のこと。
小さい子供が遊ぶキッズスペースがあった。スポンジで出来たカラフルな遊具が置いてある。親たちは囲いに座り、子供たちを見守る。遊具に登ったり、ボールを投げているだけで、ギャーギャーと大盛り上がりの子供たち。2?4歳くらいの子が多く、Nちゃんもマットの上で跳ねたりしていた。

 5歳くらいの女の子が、まだ歩けない0歳と思しき、まるまるとした赤ちゃんを抱っこしたりあやしたりして一緒に遊んでいる。お揃いの服を着ているので、きょうだいだろう。(上の子の面倒見がよくてすごいな~、えらいな~)と思いながら、私は囲いに座ってその様子をボーっと見ていた。


 すると私の隣にいた女性が急に「ぎゃあっ! 危ないッ!」とかなりの音量で叫んだ。その声に怒気が含まれていたので、私の体はビクッとなった。1メートル先でリボン柄の服の赤ちゃんがコロリン…とひっくり返っている。「あっ」という顔で立っている5歳くらいの女の子。手をすべらせたようだった。私も、小学生の時の、親戚の赤ちゃんを抱っこしていて手をすべらせた、あの時感じた冷や汗と自己嫌悪を瞬時に思い出した。
母親らしき人が駆け寄り、コロリン…とひっくり返った赤ちゃんを抱き起こした。私の隣で声を上げたのは、おばあちゃんらしく、5歳くらいの女の子(上の子)に「なんでそういうことするのッ!」と怖い声で怒鳴った。またたく間に上の子の顔はくしゃくしゃになり、うえ~~と泣き出した。


 キッズスペース自体、子供たちが大騒ぎでひっくり返ってドタバタと阿鼻叫喚状態だし、赤ちゃんがコロリン…となるくらいどうってことない光景だった。他の赤ちゃんもコロリン…となっていたし。
 母親の肩を掴んで泣いている上の子。
 おばあちゃんが「ちいちゃん、こっちおいで」と言った。大きい声出してごめんね、びっくりしたのよ、とか言ってなぐさめるのかなと思ったら、「ちいちゃん」は赤ちゃんのほうだった。

 おばあちゃんは赤ちゃんを抱っこして、上の子に向かって「ちいちゃんに謝りなさいっ!」とまた怒声を上げた。すかさず「やだ!」と返し、母親に抱きついて涙がたまった目でおばあちゃんをキッとにらみ、「ばあば…、バァ~カ!」と言った。

 「コラッ、そういうこと言わないの」と母親がたしなめる。おばあちゃんは「赤ちゃんは大事にしなきゃダメでしょ!」とか「ちいちゃんに謝りなさい!」とかヒステリックに謝罪を要求し、ついに母親も「おばあちゃんとちいちゃんに謝りなさい」と言い出した。上の子は母親のひざに座りななめのほうをにらみながら「ゴメンナサイ」と棒読みで投げやりに言った。
 おばあちゃんは「そんな言い方じゃダメでしょっ! ちゃんと言いなさいッ!」と叫ぶ。
 しぶしぶ、ちゃんとしたトーンの「ごめんなさい」を言う上の子。「おばあちゃんにもちゃんと謝りなさいっ!」と怒鳴るおばあちゃん。


 もういい加減にしろよ、と、私は反射的におばあちゃんの顔を見てしまった。私に見られたおばあちゃんは眉間のしわを瞬間的に消し、私に苦笑いをした。それが“「うちの子、『バカ』とかいうんです、ほんとお恥ずかしいですわ」的な苦笑い”に見えて、つい、「あの… 上のお子さん、下の子を面倒見てましたよ」と口に出してしまった。
 

 ムッとされると思ったら、おばあちゃんは「えっ? どういうこと?」って感じの顔をするので、私は止まらなくなり、「さっきから、上の子、面倒見てすごくえらいな?と思って見てました。えらいですね」と続けた。
 それを聞いたおばあちゃんは、にこやかに、その口調とはちぐはぐなことを語りだした。
「下が生まれてからねぇ…、どうしても下にばかり構ってしまうじゃないですか、それがいやみたいでねぇ、下の子にわざと意地悪するんです」

 びっくり。「わざと」「意地悪」って何? あんなにちゃんと遊んであげてたのに。
 そう思ってるなら、なんで上の子に下の子を子守させるの? わざと意地悪するって分かってる子に見させてるなら、下の子に対してもヒドいじゃないか。

 もうやめとこうって思ったんだけど、「あのっ、でも、ちゃんとお世話してたし、ほめてあげて・・・ほしい・・・です…」と言ってしまった。おばあちゃんは「下の子はおとなしいんですけどねえ。上の子は、あんなで…」と困った笑顔で言う。
 5歳くらいの子に比べたら0歳はそりゃ大人しいよ。喋れないし歩けないし。何言ってんだばあさん。
自分が“余計なこと”をバンバン言い出しそうでやだったので、「上の子も下の子も、とっても可愛いですね!」と勝手に締めくくった。
(“余計なこと”の中身→「上のお子さん、『やだ』と自分の気持ちをしっかり言えて、本当にすごいですよ! 親や祖父母という、子どもにとって圧倒的な強者の存在になるというのは、弱者である子供を好き放題できるという、恐ろしすぎるおぞましすぎる権利も手に入れてしまうってことなんですよね! 『下の子に嫉妬して、いつも意地悪をする上の子』なんていう、事実とは全く違うねじ曲がった設定で子供の「性格」を自分の都合のよいように作り上げることもできちゃうんですよ! そうなったかもしれない原因(自分の行い)はまるでなかったことにもできてしまうし。しかもそれを本人にそのまま伝えても、「バカ」と言われるくらいで、こっちは済んじゃうんですよね。でも、子供からしたら、圧倒的に対抗できない存在、しかも本来は自分を守るべき存在から、そんな理不尽な扱いを受けるというのは、相当なダメージなんですよね?! しかも「バカ」と言われることは「やっぱりこの子はこんなに悪い子だわ」って、強者は安心して自分に都合のよい設定をゴリ押しできるから、実は強者にとってはいいことなんですよね。弱者側も、時間がたつと自分の状況をそれと信じ込んでいったり、このババアには何言ってもダメだって気づいて、『やだ』とハッキリ意思表示してくれなくなるんですよね。そうなっていくと、もうその家庭内では、親や祖父母にとって都合の良い「設定」が「現実」になっていっちゃうんですよね。『やだ』と意思表示してくれるって、本当はとっても有難いことなんですよね! でも親や祖父母になると得られる権利が強大すぎて、それを受け取ることがとっても難しいですよねー!」等)


 私の「上の子も下の子も可愛いですね」に対し、数秒黙っていたおばあちゃんは突然、「ちょっと! 来なさい! おばちゃんがいいこと教えてくれるって!」と上の子を呼び出した。はっ? 私のこと? 私から「えらいね」とか言わせようとしてる? 今まで自分がぶっ潰してきた5歳の孫との絆という畑を、初対面の私に耕させる気かこのばあさん…。
 目の前の光景がイヤすぎたから話しかけて、話しかけたからこんな事態になったんだけど、ばあさんに使われるのはイヤすぎる! と思い、私は咄嗟に帰り支度を始めた。
 「おばあちゃんが呼んでるから行きなさい」
 「ばあば バカだからやだ!」
 5歳の女の子は最後まで自分の意志を徹底してた。



[打って変わって『マレフィセント』を観たって話。ネタバレあり]

 「マレフィセント」を観た。新しすぎてもう私には何がなんだか分からなかった。「アナと雪の女王」は、「あれ…なんかコレって…見たことあんぞ…」と、おお当てはまる当てはまる! と自分の経験を当てはめて観たけど、マレフィセントはもうわかんない。

 だけどだけど、とにかくすごくすごく楽しくって、孤高のマレフィセントがたった一人でバッキバキ男どもをブッ倒していくシーンはむっちゃくちゃ気持ちよかった。マレフィセントに従うのが「女の子たち」じゃないところが、よかった。
 ビヨンセ(大好きだけど)のPVみたいに、セクシー女子軍団を引き連れて兵隊男たちにダンスで対抗みたいなのじゃなくて、マレフィセントは手下が樹木のモンスターみたいなやつらなのがよかった。色じかけ込みの攻撃、じゃなくて、本気の暴力で対抗してるのがよかった。
 だってもう、ビヨンセの「セクシー女子VS兵隊男」は、それ自体が「男に消費されるもの」って感じで、ビヨンセの世界観を女だけで楽しみたいのに、横にいる男が(そして画面の中の兵隊たちも)勃起してる、みたいなのがなんかやだった。
 だから「女」はマレフィセント一人で、あとはなんか樹木とか龍みたいなやつ、っていうのが超超、超超、よかった。

 もう、マレフィセントとオーロラの関係がなんなのか分かんな過ぎて、なんでもいっか、って思った。でも高橋フミコさんのコラム読んで、「フェミニスト大将と後輩」ってのが一番しっくり来るわ??って思った(笑) それしかない!

 最後の戴冠式で王子様がヘラヘラ笑って出てきたのが爆笑だったよね。なんだあいつ。ほんとただの精子要員でウケた。あの王子の仕事は「受精」だけで、あとは特に何もせずにヘラヘラしてカラスにため息つかれながら生きていくんだろう。なんて楽しい世界、ムーア国。あー、翼が欲しいよ。

 

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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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