ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。

今週、ふと思っちゃったこと

田房永子2014.11.18

Loading...

 

 

 

lovp_201411_2.jpg

【その1】
 障害者情報番組「バリバラ」の再放送で、「出生前検査」についてやっていた。ダウン症の人が「ダウン症の人たちの意見は聞かれずに、この問題が取り沙汰されている」と話し、出生前検査そのものに怒りを主張していた。

 

 さいごのまとめで、司会者の小児麻痺をもつ人が、「幸せかどうか感じるのはその人自身であって、周りが感じることではない。最初から勝手にストーリーを描かないで欲しい」と言って、目が覚めるような感覚が体に走った。

 

 そのあともしばらく、その言葉が心に残っていた。

 もしかしたら、ダウン症とか難病とか、病気の人が生まれる前から「淘汰」(敢えてこの言葉を使います)されていって、まったくいなくなったら、こんどはえなりかずきみたいな顔の人が、「生まれたら愛されなくてかわいそうだから。苦労するから。美しい顔で生まれないと生きるのが大変だから」と、「淘汰」されていくようになるんじゃないのだろうか、と、「ごめんね青春!」で錦戸くんとえなりくんが並んで2人でしゃべっているシーンを見ながら、思った。
 

【その2】
 最近、youtubeにはおもちゃを紹介する動画がたくさんアップされている。娘(Nちゃん)がこれが大好きで、見たがるので一緒に観る。
 アンパンマンのおもちゃと、それを動かす男の手が映っていて、「じゃあ、アンパンマンの顔を、ジャムおじさんが焼いていくよぉ?」とか一人で喋りながら、ソフビ製のアンパンマンの顔をレンジを模したおもちゃに入れたりしている。声からして、30代くらいの男だ。
 気持ち悪すぎてゾゾゾ~~~ッとした。一体、この男はなんのつもりでやっているのか?! 幼児向けのおもちゃが好きなのか?! 趣味なのか?! 幼児が好きなのか?! 性癖なのか?! 
 しかし、そういう「素人」が自宅でおもちゃを紹介する動画というのは、この謎の男以外にも、無言で動かして撮っている人もいるし、自分の子どもに紹介させてテレビ番組風に撮っている人もいるし、「ずっと無言で撮っていたけど、今回から喋ることにしたよ」と喋り出すやつもいるし、ちゃんと手や腕の毛を処理してるやつもいるし、手袋をはめて撮ってるやつなど、アップしている人がたくさんいる。たぶん、動画広告収入というのかな、儲かるからやっている人がほとんどなんだと思う。
 他人がおもちゃをいじくるだけの動画、何が面白いのか分からないが、Nちゃん的には、いろんなおもちゃが見れて、おもちゃに詳しいおにいさんおねえさんに遊んでもらってるみたいな感じ? のようだ。とにかく、好きな動画が始まると「これこれ♪」という感じで、わーー!! と拍手したりして、本当に楽しそうだ。

 

 おもちゃ紹介動画を撮っている人たちの中に、「お父さん」と思しき人の動画がある。その人の動画の画面の端っこには、必ず一人の1歳くらいの子どもの足や手が見切れていて、自宅で一緒に撮っていることを窺わせる。
 だけど子どもの顔は映らず、ただ、お父さんが動画を撮っているところに近づいているというだけで、お父さんの意識は全面的に視聴者に向かっていて、子どもはそっちのけで進行する。さかなつりゲームの箱を紹介して「どんなゲームかな??」とか言いながら、バリバリと箱を開けていた。子どもが近づいてくるんだけど、お父さんが開けちゃってた。子どもも「あー」とか「うー」とか言いながら手伝おうとしているのだが、それに対してお父さんは「そだね?」とかちょっと相づちを打つだけで、すぐに「さかな! つれるかな~~!!」とかこっちに話しかけてきて、元気よく釣っていた。ねんどのおもちゃも一人でどんどん作っちゃう。子どもはただいるだけ。

 
 それを見ていると私は自分の子ども時代がフラッシュバックして「グエ~~~~(吐)」という声が体から出てくる。親の意識が、私ではなくて世間の不特定多数に向いている感じ。話しかけても親の笑顔は世間に向いていて、私のことは適当にあしらう感じ。本来は子どもの私が楽しむべきとして社会から提供されているアイテムを、親が率先して開封する感じ。そしてその楽しさを、親が私ではなくて世間に向けて紹介する感じ。
 夫に「この動画だけは、自分の親子関係を思い出してキツイ」と言ったら、「何がキツイのかよく分からない」と言われた。動画への視聴者のコメントも、「いつも楽しい動画ありがとうございます!」と絶賛されている。
 別に、他人がどんな動画をアップしようがいいんだけど、個人的に思ってしまう。「そういう動画を金のために撮るなら、子ども優先で楽しんでる様子を撮るか、子どもが寝てから一人で撮れーー!!!」

 

【その3】
 テレビで、グラビアアイドルがきわどい格好をしていた。「そういうほう(AV)もいくの?」と聞かれ、「私はそういうほうはいきません!」と言っていた。

 

 そのあと別の番組で、お笑い芸人がAVメーカーを訪ねる、というのをやっていた。社員の人と、AV女優が打ち合わせしているところが映って、その社員の女性がかなり可愛かった。「社員さんもAV出るんですか?」と聞かれ、女性社員が「私は真面目なんで、出ません!」と言っていた。
 AV女優は、「真面目じゃない」からAVに出ているのだろうか。
 例えばだけど、漫画編集者が「編集者さんも漫画家になるんですか?」と聞かれて「私は真面目なんで、(こんな保険もなにもない不安定な仕事は)しません!」とか、漫画家の目の前で言うようなものだと思った。そんな編集者がいたとしたら、仕事したくないなと思った。
 だけど、性的な要素を含む職業の女、というのは、こういう風に取り上げられるのが普通のことになってる。テレビ番組で、AV女優が「エッチが大好きな女です」という言動(すべてのことを下ネタに変換させる話術)をして、男のお笑い芸人が「いつもお世話になってます」と“ありがたい存在”としてAV女優に対して敬意を表する。そうやって均等性をやたらと表面化することにより場が保たれるが、その直後に「私は真面目じゃないからAVには出ない」という女の発言がその空間に舞い降りたりする。そこで男たちは「そうなんだ(だよね)」といい、男と、AV女優以外の女による、ほんのりとした共感によってその会話が終了する。
 「性的な行為を仕事でしているかしていないか」という目に見えないけど濃い線引きがある。スタッフの女も、普段はAV女優と仲良くしていても、そういう線引きの会話を男から提示されると、AV女優とつないでいた手をパッと離して「私はこの女とは違います」と言う。
 そんなことを目の前で言われたAV女優が、一体どんな気持ちなのか、いい気分なわけないと思うんだけど、そのへんは番組内では一切無視される。番組を作ってる人も出ているお笑い芸人も、実際はどう思ってるのか分からないほど、男たちの世界観だけが屈託無く披露される。

Loading...

田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

RANKING人気記事

Follow me!

  • Twitter
  • Facebook
  • instagram

TOP