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占いが大きらい

田房永子2014.12.01

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 気づいたら趣味や遊びが一切なくなってた。
 なんにもない、張り合いがない、キラキラしたわくわくすることがない。何かに興味をもちたい、ワクワクしたい、何かに夢中になりたい。虚しさが心を駆け巡り、行きつけのセラピーに行こうとしたけど1か月先まで予約が埋まってた。自助グループに行こうと思ったけど、行ける日にやってない。
 誰かと話したいという気持ちが数日おさまらず、なんかもう仕方ないから占いに行くことにした。

 

 私は占いが大きらいだ。
 占い師が勝手にベラベラ話してきて、当たってない時がものすごい気まずい。「胃腸が弱ってますね」とか誰でも当てはまるだろ・・・みたいなこと言われても、そんなの自分でも分かるし人間ドックとかやったほうが確実だろって思ってしまってイライラする。
 だから占いは2~3回しかみてもらったことない。
 韓国に行ったとき、友達がやるっていうからしぶしぶみてもらったことがあった。
 その韓国人の占い師の女性は、私の背後というかおでこというか、そのあたりに目線をやっているんだけど、どんどん私のことを言ってきてその内容が「当たってる」とかいうより違和感がない、という感じで納得できて、すごいよかった。だけどこんな占い師にあたる機会なんてそうそうないと思ったから、占い嫌いは続いてた。

 

 UFOとか宇宙メッセージとかチャクラとか「見えてる、感じてる」系のことは好きなんだけど、占いは「統計なので科学的根拠があります」みたいな雰囲気が好きになれない。「科学的根拠がある」って言っちゃうと当たってないとおかしいし、誰にでも当てはまることをドヤ顔で言われて、それに付き合うのが面倒くさい。
 一般的には、統計にもとづいた「占い」よりも、「見えます」系のほうが嫌われる気がする。「セラピー」とかはさらにもっと風当たりがきつい気がする。私はゲシュタルトセラピーを初めてやったとき、「ゲシュタルトセラピーは『自分のことを自分に聞く』って感じで信頼できる」と感じた。「それに比べて占いは・・・他人に聞くなんてよほど根拠がないじゃないか」と、さらに占い嫌いが加速していた。
 
 だけど、もう、「誰かと話したい」欲が抑えられず、なんでもいいから行ってみようと思った。
 適当にネットで探して、占いの館的なところへ行ってみた。「スピリチュアルカウンセラー兼占い師」という50代くらいの女性だった。(もうなんだっていい。とにかく私の話を聞いてくれ。この「趣味がない」という虚しさについて聞いてくれ。) ※()内は私の心の声
 占い師は、最初私の顔を見ながら、テーブルの下におろした左手を忙しく動かしていた。(チャネリングで私のハイヤーセルフにアクセスしてくれてるのかな、とにかく頼む、私のハイヤーセルフからの答えを教えてくれ!)
 すると「オーラが薄いです。元気がない」と言う。(そりゃ分かってんだよ、元気ないから来てんだよ。あと人見知りが激しいから初対面の人には緊張してて、そうなるとオーラって消えちゃうって感じがするからそれのせいじゃない?)
 占い師は続ける。「魂さんが言ってます。そうとう、生きづらかったでしょうね。今までよくがんばってきました」
 (それも知ってます! それはもう大前提だ! 早く、私がハマる趣味を教えて下さい。)
 と思ったけど実際には「はあ・・・そうですか・・・」と言い「最近、仕事ばかりで・・・・・・、ものを書く仕事なんですけど、趣味が・・・」と続けると、「どんな仕事?」と左手を動かしながら聞いてくる占い師。私が「漫画です」と言うと満面の笑みで「そうだと思った! 『漫画家』って上から聞こえたからね」と言ってて、うわーーーあと20分くらい、この「私すごいでしょ」に付き合わなきゃいけないのかなってウンザリした。
 
 占い師は私の話をさえぎって、スピリチュアル的解説をしてくれた。「ハトホルさんが云々」とか、「魂さんの雫がおりてきてどうの」とか言ってて、そういう話嫌いじゃないけどよく分からなかった。しかもこの話の分も私がお金を払ってると思うと、テーブルの上にセットされているストップウォッチを見てしまって集中して聞けない。気づくと占い師は左手をぜんぜん動かしてない。(動かすの忘れないでくれ!)
 負けじとハトホルトークをさえぎり悩みについて喋ってたら、気持ちよくなってきた。やっぱ私は、誰にも言えないことを、もう会わないであろう通りすがりの人に言いたかっただけなんだ。そして最終的には「あなたそれはさ~」とか言って、その占い師の女性自身の意見を言ってきた。それがすっごくしっくりきて、ほわわ~と体があったかくなった。
 
 時間はすぐに終わり、時間外になっていたが、「宇宙とつながるエクササイズ」を教えてくれるという。「このエクササイズは、周りに邪気が飛び散って危ないので、動物や植物や人間がいないところでやってね」と言う。宇宙とつながるとどういう効能があるのかは話してもらったか記憶が無い。
 「サッ!!」という発音で息を吐く、というのを32回やる、というものだった。占い師は「やってみせるので、私と一緒にやって、練習して身につけて」と言い、いきなり「サッ!! サッ!!」と言い出した。(え、邪気が飛び散るのでは?)と思ったけど、占い師からの邪気を跳ね返すように、私も「サッ!!!! サッ!!!!!」と言ってがんばった。
 占い師がエクササイズについて書いた手書きのプリントをくれたんだけど、「1日できるだけたくさん」のところに二重線が引かれ、「1日10回まで」とか書き直してあって、どういう基準で変わるのか分からないが、なんか面白かった。

 

 帰りはすげえ楽しい気分になってて、ホクホクした。何を言われたかあまり思い出せないが、とにかく楽しい気持ちになった。
 会話というのは浮かんだ言葉を口にする行為だから、それこそがスピリチュアルで、天からの言葉なんじゃないかと思った。だからそんな左手動かしたり、私は天とつながってる、みたいな“演出”をがんばってしてくれなくてもいいのになと思った。

 

 もっと占ってもらおう! と思い、そこからすぐの占いの館(10分で1000円くらい)に入った。占い師がおにぎり系のルックスの男性だったので、どうしようかなと思ったけど、タロットカードで占ってもらった。私はこの、タロットカードというのがもう、一番、怪しいと思ってて、手相とかよりワケ分かんない度が高い、と思ってて、ほんと嫌いで、だけど仕方ないので見てもらった。
 さっきは漠然としたことを話したので、今度は具体的に聞いてみた。するとおにぎり系男性占い師は出てきたタロットカードを説明してきて、それがもう私の身の回りのことでしかないので、うわーーーーーーー!!! え??? は??? って感じだった。あたってる、というのかなんだか分からないが、とにかく出てきたタロットを説明されるだけで、「はいはい、ああ、なんだ、そう考えればいいのか」ってビコンビコン頭に浮かんできて、勝手に整理されクリアになっていく、という感じ。
 何よりも、誰かと自分の未来とか今について話す、っていうことにすごい癒された。
 やっぱりそういう時間はお金を払わないと絶対得られないし、私の弱った時の行きつけリスト(精神科、心療内科、セラピー、自助グループなどなど)の中にこの占い師の人、というか占い、というジャンルが増えた。

 

 帰り道。。。。
 占いってすっごい楽しいなー!!! いいなーーー!!!
 って思った。
 人にこんなに元気を与える占いって、超いいものだなーー!!! と充足感に包まれた。タロットカードも可愛かったし、私もできるようになりたいなー!! 占いに興味出てきた~~!! あ~~~楽しい~!!! 
 占い師教室のサイトを検索し、ワクワクにつつまれながら帰宅したのだった。

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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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