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ジョージの「膜」、未だ堅し。

田房永子2015.03.04

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 ワイドショー番組「ミヤネ屋」に、離婚裁判の第1回口頭弁論を終えて囲み取材を受ける高橋ジョージが映っていた。顔が真っ白で、何よりも髪の毛がバッサバサのボッサボサ。憔悴とか狼狽って表現がピッタリな風貌だったが、その辺りへの番組からのツッコミは一切なかった。
 高橋ジョージの受け答えが“理路整然”としていたからだ。


 取材陣から、「出廷した理由は? 美佳さんは出廷しませんでしたけど」と聞かれると、「美佳さんのほうはお仕事だと聞いていますけど。僕は、自分のことなので。あくまで人に任せることでもないし、それから子どものこともありますので、他人事じゃないので(ここで半笑い)、出られるんだったら出たいと思って」と答えるジョージ。


 美佳さん側がモラル・ハラスメントの本を証拠として出してきたことについて尋ねられると、「これは、いろんな誤解があって。モラルハラスメントを受けている被害者の方がいるわけですよね、現に。その辺の気遣いがあるので、そうだともそうでないとも言えませんけども、今の段階では、提訴の内容を見ると、僕にとってはまったく心当たりがない内容なので」と言い切り、「ただ、まあ、僕は、子どものことを第一に美佳さんが考えているって記者会見で見させていただいたんですけども。(ここから声が大きめに少し強くなる)であるならば、もしですね、仮に離婚と言うことを協議するんであれば、やっぱり子どもがね、将来、親が離婚について全く会わないで、話し合いもせずに終わったってことは、相当な心の傷になると思うんですよ」と、子どものトラウマについて懸念を示し、「なので僕は、結論はいずれにしても、今後ですけども、とにかく本人同士で、人を介してでも、話し合いたい。それから彼女のインタビューの中で『何回もそういう場所を設けている』と言ってますけど、(ここから強め口調)離婚の話は一度もございません。ですので、それが、僕は彼女にとってマイナス、まあ僕にとってもマイナスですけど、一番マイナスなのは子どもにとって。」とジョージは言った。


 「ちゃんとした人」感がすごい。世間的には、高橋ジョージは一切間違っていない。年の離れた若い妻からいきなり提訴されて、それに振り回されながら受け入れる懐の深い夫、という姿をバッチリ見せつけた。ミヤネやコメンテーターたちも「過度な束縛があったという報道がありますが、結婚した時、美佳さんは16歳だったから、ジョージさんとしては保護者の感覚だったのでは?」「美佳さんだけが大人になってしまって、親から巣立つ、っていう感じ」「ジョージさんは変わらずそのままだったということなんでしょう」と言っていた。ジョージと美佳は最初から親子じゃないんですけど・・・。
 しかし、他人が「親子喧嘩」と錯覚するほど、「大人の対応」な態度を徹底しているジョージ。狼狽っぷりは外見に出ちゃっているものの、冷静さを保ち、なんとかイメージを維持するジョージ。ジョージのカラクリは、世間的には見事に成功している。
 だけどジョージ、それじゃあ、美佳さんは永久に帰って来ないぞ!


 ジョージはこのあともいろいろ答えていたが、基本的に、美佳さんへの説教にしかなっていなかった。いきなり裁判で心当たりのないこと言われて僕も困惑してます、というスタンスで、親なら子どものためにちゃんと話し合いをするもんだと思うんですよ、と主張する。つまり美佳さんの行動で最終的に子どもが傷つく、ということを言っている。
 ジョージの発言を総括すると、「美佳さんには人としての常識がない、世間知らずなんです、俺はマトモ、それを分かって下さい。そして美佳よ、お前のやり方は間違っている。悔い改めよ」と言ってるだけとしか、私は思えなかった。


 そういう態度が嫌だ、と言われてるのに、取材越しにも世間を盾に妻へ説教を続けるジョージ。
「責任ある社会人なら、他人事じゃないんだから出廷するのは当然」みたいなこと言ってたけど、美佳さんはいま離婚を決意してるシングルマザー状態なんだから、出廷の度に仕事を休んだりなんかできないだろう。テレビの仕事って1回でかなりもらえるだろうし、休んだら呼ばれなくなる恐れがあるし、美佳さん大阪に住んでるし、いろいろ事情があるはず。本当に子どものことを思っていて、その子どもを育てている母親として美佳さんのことを捉えているんだったら、仕事で出廷を欠席する美佳さんに感謝の意を述べてもいいくらいだ。<美佳さんもいま、僕との子どもを一人の手で育てているわけですから、仕事を休んで東京に来ることが難しかったのかなと思います。お仕事がんばってほしいです>くらい、それくらい言えれば、言える男ならば、なあ~。


 だけどジョージは「本来なら裁判じゃなくてテーブル囲んで家族でご飯を食べながら話し合いができたらいいのに」とか、とにかく「本人同士で話し合いがしたい」ということを繰り返していた。そしてその理由は、「双方の親が話し合いもせずして離婚したという事実は子どもの心に禍根を残すから」というもの。
 離婚って子どもを交えて家族で話し合って決める、とかってそんなにないと思うし、知らないあいだに親が進めてることのほうが多いと思う。失踪とか蒸発なら「本人同士話し合ってない」って感じがするけど、調停とか裁判してるんだから、そのへんの心配はご無用な気がするぞ、ジョージ。


 「お子さんのためを思って踏みとどまっているんですか?」と報道陣から聞かれると「子どものためを思って、話し合いで、離婚のほうがベストだというふうに、僕が変わるかもしれないです。話し合って、本人のこんなつらい気持ちがあったんだとかこういうことがあったんですよっていうことで、じゃあ僕とは無理だね、っていう話になればね、これはまだ分かりませんけど」と答えるジョージ。
 もうハッキリ本心言っちゃえばいいのに。「俺がぜんぜん納得できてないから、俺を納得させろ! 離婚するならするでいいんだよ、だけどとりあえずちゃんと俺が理解して納得して前に進められるように、俺に説明しろよぉぉブッヒィフエエーーン!!!」って、泣き叫べばいいのに。一回、世間に「ウワー・・・ヤバ・・・」って思われないと、妻子が帰ってくる可能性は1%に上がらないぞ! 


 だけど「自分が変わる」という選択はジョージの中に一切ない感じがする。「僕が変わるかもしれない」というのは「美佳の出した離婚という結論に納得できなかった僕が今後それを受け入れることがあるかもしれない」という意味であり、「じゃあ僕とは無理だね」というのは、「僕の妻でいることは無理だね」というニュアンスに聞こえる。あくまで、別居前の「美佳さん」で居続けることが、僕の妻としての条件、そこは揺るがなくて、だからそれができないということであれば離婚は仕方ないと思う、という感じに、聞こえた。ていうか、実際そういうことを言ってるんだと思う。


 「美佳さんに言いたいことは?」と聞かれたジョージは、フフッと嬉しそうに笑った。美佳さんとの生活が、ジョージにとって本当に楽しくて、大満足な日々で、その感覚が瞬時に湧いてホッとしてこぼれた笑み、という感じがした。
 優しい笑顔でジョージは答える。「そうですね 特にないんですけど。僕はじっくり時間をかけて療養というか、気持ちを整理していただきたいなと思うし、僕はいつでもじじいのほうですから門戸を開けて話し合いを持つ気でいます」
 りょ・・・・・・、療養?!
 やっぱりジョージの中では「何かしらの理由で疲れちゃってノイローゼ気味になり一時的に逃避してる妻」というイメージで美佳さんが存在していることが決定づけられた。どこまで話が通じないんだろう。別居1年半経って「気持ちの整理」がついたから調停やら裁判やらしてるんじゃないの。そしてこの裁判こそが唯一、ジョージに残された、そしてジョージ自身が熱望する最後の「話し合い」の場なのに、あくまで自分の思う「話し合い(自宅での子ども同席の食事)」を「持つ気でいる」とのこと。首の皮一枚でつながってるのに、超絶上から目線。マジでもう、一回下に降りて来いよ。しかも急に「じじい」を自称するところが巧妙すぎる。


 有名人で、子どもがいる状態で、離婚の裁判をするって、とても大変なことだと思う。美佳さんからしたら、夫の落ち度を訴えるのは子どもの半身を否定するようで心苦しいんじゃないかと推測する。ジョージ側もイメージが直結する職業だから、公では言えないこともあるだろう。だけど普通の一般人だったらテレビ越しに妻へ語りかけるなんてことできない。そんなチャンスは与えられない。それなのにあんな、自分の体裁を整えるためだけに、妻をバカにするようなことを未だに言うなんて。
 「療養」なんて言って、さも妻が現実逃避してるかのような“妄想”で現実逃避しないでほしい! がんばれジョージ! 大きなお世話だとは思うが!

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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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