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男湯は社会の縮図

アンティル2016.11.30

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 久しぶりに男湯に入った。私が胸の除去手術をした理由の3分の1を占める温泉。しかし手術しても安心してリラックスタイムを送る生活は手に入らなかった。

 このコラムでも何度も登場した“男湯”。10年ほど前に行った、とある温泉では唾をぺっぺと履きながら温泉の中を歩き回る姿に、男湯の衛生的問題を感じ、とある場所では男同士の場所取り合戦を観覧するはめとなり、その性に辟易とし、またある時は、広大な敷地になる露天風呂ですっ転び、すれ違った男に下半身のすべてを見せてしまったというハプニングもあり、とにかく結局“女湯”がいいという結果に落ち着いていた。

 髭や濃い体毛、そして平らな胸でありながらも、体型が完璧な“ふくよかなおばさん体型”である私は、毛さえ剃っていけば女湯に入ることができた。私は脱衣所で服を脱ぎ、すぐさま下半身が見える状態にし、“OPENな女”になる。しかし上半身はタオルし“恥ずかしがり屋な女”になる。私はいささかおかしい人間に思われてはいると思うが、まぁこれでゆっくり温泉に入ることができていた。

 この時に必要なのが体毛剃りなのだが、子供の頃から年季が入った濃い足毛をつるつるにするのには時間がかかった。片足に10分、両足で20分。おしり辺りも入念にそり上げて、30分かけて仕上げる。そんなこと温泉にいく度にしていたら、最近部分的に毛が生えない所が増えてきた。これが何とも言えずさみしい。ホルモン療法をする前からすでに立派であった私の足毛は、小学生の頃から注目の的で、あまりの濃さから冷やかされることなく、遠巻きに見られるほどのものだった。中学・高校生時代にもそれは健在で、「セーラー服と足毛」という映画が1本撮れるほど毛と私のストーリーは豊富だった。世間の目は毛に冷たい。その毛がだ!薄くなってしまったのだ!いまだかつてない薄い足毛。これ以上剃るともう出会えないかもしれない足毛。そう思うともう毛を剃れない。しかし部分的にはまだ充分毛が濃い足では女湯に入ることは難しい。

 そして同時に陰毛にも変化が訪れた。元々、広範囲に生えてはいるが毛根の間隔が広い私の陰毛が、さらにスカスカになってきた。スカスカになると私の股間にペニスがないことが露わになりやすい。一時たりともタオルを外すことができない。しかし、男湯の人々は他人に視線が向かないのか、“男同士”という安心感が強いのか、相手のカラダを見てはいるがあまりチェックしない傾向にあるようで、私もそこまで緊張感を持たなくて済む。そういう意味ではリラックスできる。女湯はそうはいかない。チェックが厳しい。いつも他人に目に晒されているからか、女湯では私のカラダに視線が突き刺さる。それをクリアするために入念な準備と、いつでも対応できる緊張感が求められるのだ。そう意味では女湯でリラックスはできない。そこで最近私は男湯に入っている。
 しかし、長年の女湯暮らしで忘れていた。緊張感に勝るとも劣らないのがペニスの存在。これがもう私にはいたたまらない。

 ペニスをタオルで隠して歩く人が多い場所、ほぼ隠さない場所の違いはエリアによる気がする。アンティル調べでは、沖縄そして北海道の男湯がもっともタオルで隠す人が少ないエリアである。このような男湯だと、目を反らしても反らしても目に入ってくる。私にとってはブラジルより馴染みのないペニスが当たり前のように視界に飛び込んでくる。それが一つ二つではない数で存在しているのを見ると、胃の辺りから変なものが込み上げてくる。そして、先日訪れた満員御礼の温泉位の人ごみになると完璧に私の許容範囲を超え、湯船を出ずにはいられなくなる。その存在感はいろいろな想像を掻き立て、昔聞いたある男の豆知識を思いだす。「男のペニスってカスがすごく付いていて、すごく汚いんだって。しかもよく洗わない人が多いんだよ。」私は温泉を凝視してカスを探す。何やら浮いているものを避けながら移動してはみるが、以外に浮遊物は多くそれに当たらずつかろうとするには無理がある。それを避けながら、私は入る前に股間を洗っているかチェックする変な警備員のようになって男達を凝視していた。その度に目に入るペニスペニスペニス!もう温泉につかるだけでへとへとだ。

 そんな男湯で、先日はある光景に驚いてしまった。垢すりができる男湯で、垢すりをする人が女性で、しかも清掃する人も女性だった。共に40代。その事実に愕然としながらも、さらに驚いたのが男達の行動だ。垢すりの順番を知らせに来る女性の前で、温泉の温度を測りに来る女性の前で股間を隠そうとしない。手にタオルがあるにも関わらずだ。なんというオープンマインド?!“目を反らすのはおまえの役目”だと言うかのようなその行動に私はやはり、男湯は社会の縮図だと思わされた。

 この男湯ではさらに驚きの行動が待っていた。その話しはまた次回へと続く。

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アンティル

アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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