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「アップデート」

茶屋ひろし2019.01.28

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遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

いろいろなニュースをTwitterで知ってしまうこの頃ですが、先日、雑誌『ダヴィンチ』の2月号で、漫画家の一条ゆかりが特集されていたのでつい買ってしまいました。もう一冊、『太陽の地図帳』という平凡社のムックでも『有閑俱楽部』が特集されていたので、なつかしくて併せ読みました。

『ダヴィンチ』のインタビューでは、40年間現役で走り続け、9年前に休筆に入り、これから70歳を迎えるという一条さんの、これまでとこれからを訊いていました。漫画を描いていた頃から一貫して変わらないのは、「世間の動きを常に見て、自分も変わって、アップデートしていかなければいけないということ」で、「そうすることでやっと『あの人はいつまでも変わらないわね』と言われるんです」とのこと。

正月に実家に帰った際、車庫に入れたままの『有閑倶楽部』全19巻を段ボール箱から引っ張り出しました。一緒に入っていたのは市東亮子の『やじきた学園道中記』というシリーズでした。この2作は大好きで、小学高学年から大学生になってまで何度も読み返していました。
喧嘩の強い女(武闘派)が好きだったんだわ・・と、その並びに感じ入りました。『有閑倶楽部』の中では「剣菱悠理」という登場人物がそれに当たります。

『やじきた』は買い直したものがすでに家にあるので、『有閑倶楽部』だけ自宅に持って帰って一気に読み返しました。読み進むうちに、「ホモ」という言葉が「ゲイ」に変わっていく様子に気づきました。連載開始が1981年で、それから2002年まで続いたシリーズです。
最初の頃は、「げっ、ホモかよ」といった感じで男性同性愛者を表現していたのに、90年代に入るとゲイカップルの恋愛成就の話を描くようになっていました。
さすがのアップデート。インタビューでの発言の裏が取れたような気分になりました。

作品には異性装の人物もよく登場するので、当時はそちらに目を奪われていたのか、著者と同じフォビアを内蔵していたのか、あまり考えていませんでしたが、いま読むとその変遷がありありと感じられました。

そして不遜にも、一条ゆかりの休筆を知ったとき、「時代についていけなくなったのかしら」と思ったことも思い出しました。男女の世界観がハッキリしていたからな~、なんて。

彼女が描く、いわゆる「いい女」たちに勇気づけられていたにもかかわらず、作品には異性愛の視点が一貫していたので、そこをアップデートできなかったのかしら、とわかったような気持ちでいました。
けれど、このふたつは矛盾するものではなくて、基本的に異性愛社会を軸に据えていたので、スーパーウーマンやセクシャルマイノリティがそこからはみだす者として魅力的に(時にえげつなく)描かれていた、ともいえます。

読者としても、ちょうど最後の(最新の)作品『プライド』は最後まで読んでいません。なんとなく離れちゃった・・くらいのものですが、その感覚は、かつて好きだった山田詠美作品に通じるものがあります。
その間に、世間ではBLがブレイクしていったのか、とか。

先日Twitterで、あるBLの新刊が紹介されていて、しかもゲイ男性の紹介だったので、店頭で探して読んでみました。
『同棲ヤンキー赤松セブン』(原作・SYOOWA 漫画・奥嶋ひろまさ 秋田書店)という作品です。
それは、私の望んでいたものでした。読み始めてわかりました。
本屋のくせに不勉強で、原作者も画を描いている人も知りませんでしたが、これがなんと、少女漫画の画ではなく、少年漫画の画だったのです。ヤンキー漫画を多く手掛けてきた人らしく、画だけではなく展開の仕方もチャンピオンコミックです。

これなのよ・・、とうれしくなりました。
なんだかんだ言って、今までずっと、少年漫画の世界に入りたかったのだと思いました。
けれど、そこに同性愛者はいないし、いても変人枠として描かれるだけ。それで少女漫画も読んで、同性愛者の扱いは似たようなものでも、描かれている女性像に自分を委託することはできた。でも自分は女性ではない。どこまで共感できているのかもわからない。
そこにBLが出てきて、ノンケの男なのにゲイみたいなことを言ったりやったりする。けれど、そのうちその定型に飽きてくる・・。年のせいか、獣人化には共感できない。
じゃあ、ゲイ男性の描いた漫画で良かったのでは、と思われますが、それはそれで向いている方向が一緒なので、少し面白くない。
というわけで、ノンケの男性が描くゲイに興奮する日が来るなんて。

昔は雑にされていたけど、いま思えばあれ差別だよね、という認識はアップデートされていくべきものだと思っていますが、性的欲望だけは、たかだか40年くらいの人生でも行きつ戻りつしてしまうし、進化のように左から右へ流れていくものではないのだわ、と改めて思いました。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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