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No Women No Music 第25夜 インディアン・ポップスとジェンダー

ほんま えつ2016.02.01

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インドへ行ってきた。北インド、アグラ~バラナシ~デリーというお決まりの観光コース。
“女性1人でも安心”一人旅ツアー。空港からホテル、ホテルから列車乗車などの送迎、希望オプショナルツアーにのみガイドがつくというパッケージ。年末年始の大連休は日本にいるとなにかと気が滅入るのでここ数年は日本から脱出するようにしているのだが、この北インド旅は、多くの楽しいこともあったけれど、まのあたりに見る階層社会、ジェンダー差の不自由さに、道中そして帰国後もいろいろと後遺症を残している。
これといった目的もなく、でもずっと行ってみたかったインド。インディアン・ポップミュージックは巷にあふれかえり、アグラでボリウッド映画も堪能したが、しばらくは旅行前のように能天気に陽気なインディアン・ポップスを楽しむことはできないだろうな。

アグラで巨大なタージマハールを観光したあと、観に行った最新ヒンディー映画は“BAJIRAO MASTANI”。同じ映画館でかかっていた「スター・ウォーズ」の最新作よりはるかに人気があると思われる。
18世紀初期の王権を廻る戦争史劇。主演の王様役はダニエル・デイ・ルイスそっくりなインド人男優Ranveer Singh。その王様とラブ・ロマンスを繰り広げる2人のお妃は、双子ではないかと思うくらいそっくりなPriyanka Chopra(プリンヤカー・チョープラ:「バルフィ!人生に唄えば」にも出ていたのでご存知の方もいらっしゃるかも), Deepika Padukomeという2人の美人女優が演じている。王様を演じたRanveer Singhは、ホテルで観ていた大晦日のにぎやかなバラエティ特番やCMで何度もお目にかかったので現在おそらく大スターなのだろう。
休憩を挟み3時間余りにも及ぶこのヒンディー語映画(もちろん英語字幕などなし)。王権を守るためこれでもかとばかりに展開する剣や槍を使ったあまりにもマッチョで男臭い戦闘場面の連続と、そこに花とも毒と喩えられるような二人の妃との恋愛模様という単純なストーリーにうんざりしつつもそれなりに楽しめたのは、そこにふんだんに盛り込まれるこれぞボリウッド映画と言わんばかりの歌とダンスがあったから。
帰宅後調べたらこの映画のオリジナル歌曲はSanjay Leela Bhansaliとクレジットされている。監督も同人物。多彩な売れっ子職人か。そのつぼを得たメロディと群舞のミュージカルシーンでは、それまで観ていた血なまぐさい戦闘場面で血管がうきでるほどたぎっていたマッチョな王様が、ニカリとした作り笑顔でぶっ飛ぶほど過剰なダンスを繰り広げてくれる。ホテルで2015年ヒットソングを振り返るMTV(もちろんオール・インディアン・ポップ・ミュージック)を延々と観ていたが、この映画のミュージカル場面が何曲もかかっていた。大ヒットしたのでしょう。

MTVに溢れるインディアン・ポップスは、外見がいわゆる‘男らしい’(好みは別として)イケてるというか濃いいマッチョな男性スター歌手に、長い黒髪の典型的な美女とされる女性スター歌手がからむデュエットがほとんど。基本的に陽気でロマンティックなインドテイストをたっぷり含んだワビさびが耳に残り楽しく聞き惚れてしまう曲が多いけれど、そのステレオタイプなジェンダー規範ぶりになんだかだんだんこれってどうなの?という違和感を抱かずにはおれなくなってくる。

ヒンディー教の聖地といわれるバラナシで、ガンジス河に面して沐浴する人々、祈りを捧げる人々を眺めつつ一人で延々と歩いていると、通りすがる幾人かのインド人男性にガンミされ、かなり軽蔑を含んだモードで“Are you man?”声を掛けられちょっと怖かった。
私は女だが、いわゆるオトコ顔でショートカット、ここ20年近くスカートは着ていない。近所でキャバクラの呼び込みによく声をかけられるけれど、それはそれでなんだか男だか女だか見分けがつかない自分の見られ方を楽しんでいる。でもインドで見も知らぬ通りすがりのインド人男性に「お前は男か?」と突然声をかけられると、一瞬強張る。デリーのホテルは安宿街に近く、多くの男ばかりがたむろしていて、ホテルマンのエスコートがなくてはコカ・コーラ一本も買いに行けない。デリーのフマユーン廟でお揃いの制服を着た小学校高学年か中学生くらいかの女学生が団体で観光にきていた。その中で2人だけ髪が長くない女の子がいた。ひとりはボブ、もうひとりはショートカットだった。この2人の女の子が旅行中唯一見かけた髪の短いインド人女性だ。

ギラギラとエクストリームなボリウッド映画とインディアン・ポップス、その刷り込みともいえる押しつけがましいステレオタイプなジェンダー規範を超えるものに出会いたい(出会えてないだけかも)。根深い身勝手な男性中心社会、宗教の戒律と伝統が重んじられるインド社会の中で、ショートカットの女性スターは生まれ出るのか。クィアなインディアン・ポップスもとても面白そうだけどな。




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ほんま えつ(ほんま・えつ)

音楽、映画、本をこよなく愛して生きる趣味人女。
小学5年生のとき同級生の友達宅で聴かせてもらった「クィーン」に感動。
以後、洋楽を貪り始める。初めて買ったLPレコードは「アバ」のベスト盤。
いまではこれぞと思った音楽はジャンルを超えてなんでもござれの雑食派。
本連載、約10年ぶりのカムバックです。

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