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ムーミンとフェミニズム トーベが描いた優しい世界

行田トモ2019.05.23

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もう10年以上前のことになります。両親と私は、昼食をとりながら、アニメ『楽しいムーミン一家』(いわゆる平成版ムーミンですね)を見ていました。
素敵なキャラクターに、美味しそうな食べ物、綺麗な風景、誰からも愛される作品です。
その時、父がポツリとつぶやきました。「ムーミンたちはいいね。皆それぞれ全く違う見た目や性格をしていても、それを当たり前だと思って一緒に生きている」

私は驚きました。父がそんなふうにムーミンを見ていたなんて。

それから長い時間が経って、私は父から一生の宝物になる言葉をもらいます。それは、父がムーミンの物語を好んでいたことと決して無関係ではなかったのでしょう。そのことに気づかせてくれるストーリーが、英Stylist誌に掲載されました。

 

今月は皆さんに、ムーミンとフェミニズム、女性の可視化と権利に関する記事をご紹介します。

2019年、世界中のムーミンファン待望の新作アニメが公開され、ケイト・ウィンスレットなど豪華なキャスト陣が話題となりました。日本ではNHKの4Kチャンネルで放送され、スナフキン役に高橋一生など、これまた大きな注目を集めています。

しかし、Stylist誌は、ムーミンシリーズが愛される理由はキャラクターだけではなく、物語に散りばめられた人生訓にもあるとして、トーベの人生と女性の生き方について、姪のソフィアへのインタビューを行いました。

トーベの姪、ソフィア・ヤンソンは、現在Moomin Characters Ltd クリエイティブ・ディレクターを務めています。

彼女は「勇敢な女性ばかりがムーミンファミリーにいることは偶然ではない」とインタビューに答えています。

1945年に最初の本が出版されて以来、トーベは数十年にわたって世界中でテレビ番組や漫画、映画を生み出し、展覧会を行いました。彼女について、ソフィアはこう説明しました。

「トーベは、望んだように生きることのできる、強くて独立した女性でした。女性がこう活動すべき、こうした役割を担うべきだということに関して、限りないアイディアを持っていました。彼女が育った環境を考えると、そこまで驚くことではありません」

「フィンランドは常に女性の権利のリーダー国であり、1906年に女性に投票権を与えたヨーロッパで最初の国でもありました。しかし、誰もがこの恩恵にあずかれるわけではありません。自分が描いた物語で、世界中の女性が貧困から抜け出し、彼女たち自身の声を見出す助けになることを、トーベは嬉しく思うに違いありません」

 

 
 
 
 
 
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Moomin Characters Ltdは、Oxfam(Oxfam International=国際的なチャリティー団体。イギリスにも多数のチャリティショップを構える)と協力し、トーベの短編『目に見えない子』一冊の売り上げにつき最低4ポンドを、世界中の女性支援の活動に寄付することを発表したのです。

以前、ソフィアはガーディアン紙のインタビューの中で、トーベが「フェミニスト」という用語を使っていたかどうかはわからないとしたうえで、「彼女はあらゆる意味でフェミニストの一人だった」と語っています。

「彼女はその当時まだ社会が持っていた”女性はどのように生きるべきか”という多くの仮定に挑戦しました。例えば、”彼女たちは家で子育てに専念すべき”というようなものです。トーベは、必ずしも容易ではない生き方を大胆に選択していました」

 

Stylist誌は、ムーミンシリーズの女性キャラクター誕生の背景、そして、トーベのセクシュアリティも掘り下げていきます。

トーベは、自身の母親をモデルにムーミンママを生み出したように、彼女の人生において重要な女性たちをキャラクターとして物語に登場させました。

例えば、演劇監督のヴィヴィカ・バンドレルとの関係は、互いに献身的なトフスランとビフスランとして描かれたそうです。このキャラクターたちが、彼らだけの秘密の言葉を話し、貴重な赤いルビーをスーツケースに隠し持っていることに、Stylist誌は特別な意味を見出しているようです。

次いで、日本でもトーベのパートナーとして知られているトゥーリッキ・ピエティラ(トーティ)にも言及します。『ムーミン谷の冬』(山室 静訳/講談社)に登場するおしゃまさん(トゥーティッキ)は、トゥーリッキがモデルであり、彼女は、ムーミンに厳しい冬の間の恐れを乗り越え、新たな環境で生き残る術を教えてくれる重要なキャラクターです。

 

 
 
 
 
 
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そして、トーベが生きた時代について説明を加えています。

“トーベは同性愛がまだ違法だった時代を、同性愛者として生きた人でした。フィンランドでは、1971年に同性愛は非犯罪化されましたが、養子縁組、体外受精、公認の長期の財政支援など、その他の様々な法的問題への対応が進んだのは90年代以降のことでした。そして、トーベは2001年にこの世を去ったのです”

ソフィアが語ったように、トーベが築いたパートナーシップも、当時の女性にとっては「容易ではない選択」だったのです。しかし、彼女は自身の生き方を貫き、その素晴らしさを、物語の中にキャラクターとして織り込んだのです。

 

ところで、Oxfamとのコラボに選ばれた『目に見えない子』とはどのような物語でしょうか。

『ムーミン谷の仲間たち』(山室 静訳/講談社)に、ニンニという女の子がおしゃまさんに連れられて、ムーミンハウスにやってくるというエピソードがあります。
保護者であるおばさんから冷たい扱いを受け続けた結果、姿が見えなくなり、声も出せなくなってしまったニンニ。しかし、ムーミン一家の、特にムーミンママの優しさと愛情に触れ、少しずつ姿と声を取り戻し、最後にはすっかり姿が見えるようになって、笑えるようになるという心温まるお話です。

Moomin Characters LtdとOxfamは、このニンニの物語にトーベの女性に対する優しさに満ちた思いが込めらていると確信し、チャリティーのテーマとすることにしたそうです。

 

Oxfamの女性の権利とジェンダーの公正部門のディレクターであるニッキ・ヴァン・デア・ガーグはインタビューに次のように答えています。

「正義、思いやり、優しさなど、トーベ・ヤンソンの素晴らしい物語に織り込まれた価値観は、オックスファムが主張し、日々そのために闘っているものと完全に呼応し合っています」

「私たちは、すべての女性と少女が、その姿が目に見えるものとなり、声を聞いてもらう価値のある存在だと信じています。ですから、ムーミンのキャラクターたちとパートナーとなり、この感動的なムーミンの物語を世に送り出せることを誇らしく思います」

第二次大戦中に風刺画家として活動し、そして自身もマイノリティであったトーベのことですから、ニンニの物語も単なるハートウォーミングストーリーではないでしょう。世界中で存在を認識されず、声をあげることもできない少女が数多くいることを知った上での執筆だったはずです。

自身の死後20年近く経って、ニンニの物語が世界中の女性や少女の助けとなるべく再び脚光を浴びていることは、ソフィアが語ったように、トーベにとって非常に喜ばしいことではないでしょうか。

そして、これは私の勝手な想像ですが、ニンニをムーミン一家の元に連れてくるのがおしゃまさんであることに、トーベの深い愛を感じざるを得ないのです。


さて、私の話の続きをさせてください。

3年前のある日、おしゃまさんのように素敵な、私のトゥーリッキがいることを、父に打ち明けることにしました。まず母が事のあらましを伝えてくれたそうなのですが、それを聞いた父の第一声は「今の家で二人暮らしは狭いんじゃないか?」

拍子抜けした母は、娘のセクシュアリティについては何も思わないのか尋ねたそうです。すると、父は顔色ひとつ変えずに「誰を好きになるのかは、本当に個人の自由だから」と言ってくれたのでした。

そして、私には「お互いを対等な立場で、尊重しあい健康に暮らしていってください」という言葉を送ってくれました。

生涯忘れることはないでしょう。

まだまだ自立とは程遠く心配をかけてばかりの娘を、個人として認め、自分との違いを受け入れ、そして愛してくれたのです。
父の中にも、大きな愛を持つムーミンママがいました。ムーミン谷が、トーベの世界が息づいていました。

私はその優しさに救われたのです。

父の日には間に合いませんが、ロンドンに行ったら、Oxfamのお店をのぞいて、ムーミングッズを買ってくるつもりです。そして、このコラムのURLを手紙に書いて、グッズに込められたOxfamと私の気持ちを父に届けようと思います。

家族からは「ミイ」と言われている私ですが、たまには素直になることもあるのです。

 

 
 
 
 
 
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The feminist backstory that will make you love The Moomins even more
「フェミニストの生い立ちを知れば、あなたはもっとムーミンを好きになる」
https://www.stylist.co.uk/books/moomins-feminist-tove-jansson-sophia-characters-tv-series-2019/130347

 

『目に見えない子』はトートバッグやティータオル、ハンカチなどのムーミングッズと併せて、waterstones.com(※イギリスの書店)または oxfam.org.ukで購入することができます。

マクミラン・チルドレン・ブックス(イギリスの出版社)はポケットサイズのムーミンの塗り絵本とフィンランドのブランドであるフィスカルス(ハサミメーカー)とフィンレイソン(ムーミン柄のバッグなどを販売している)の各売り上げから1ポンドを寄付する予定です。

Oxfamのグッズに関する各HPにはこちらからアクセスできます。

Oxfam ムーミン特設ページ
https://www.oxfam.org.uk/shop/moomins

Waterstones 書籍ページ
https://www.waterstones.com/book/the-invisible-child-and-the-fir-tree/tove-jansson/9781908745743

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行田トモ(ゆきた・とも)

エッセイスト・翻訳家
立教大学 文学部 文学科 文芸・思想専修卒
在学中に一年間ロンドンに留学。
ストックフォト会社、美術館、出版社事務を経て、現在はうつ病との共生を目指して半療養中。自身の病気と、セクハラ被害を受けたことをきっかけに、女性のwellbeingを模索中。同時にジェンダー、セクシュアリティ、クィア、フェミニズムについて考える日々。
趣味は読書、観劇、『ル・ポールのドラァグ・レース』『Queer Eye』を見ること、海外セレブウォッチ、
ハムスターの世話(でも噛まれて泣いた)
最近のブームは韓国ドラマ&文学、アルゼンチンタンゴ。
笑顔で沼に沈没中。

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