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身体の話をしよう ②〜わたしの身体は誰のもの?後編〜

行田トモ2022.04.22

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皆さまこんにちは。行田です。

桜の季節があっという間に過ぎ去ってしまいましたね。そして突然の夏日。年々春らしい時間が減っているような気がいたします。
さて、先月はわたしが受けたセクハラについてお話ししました。一個人ではなく、”女の身体”として見られたことのつらさ、苦しさは、今も忘れられません。
過去を振り返って、改めて疑問に思いました。

「わたしの身体は誰のもの?」
小説家の王谷晶さんは、「女のカラダ」についてのコラムをまとめた『どうせカラダが目当てでしょ』(河出書房新社, 2019)の中でこう語っています。

“体型の話って、ただのボディラインの話ではなくて、尊厳と自尊心の話なのだ。どんな体型でも容姿でも自信を持って堂々としていよう!笑顔がイチバンのメイクアップ!みたいな話は、そりゃ間違いじゃないしそうあれたら素晴らしいけれど、でも人はルッキズムに晒される。特に女は。まだ頭に毛も生え揃っていないような時期から棺桶に入るまで、「美醜」という基準で勝手にジャッジされる続ける…(中略)…「自分の理想の姿になりたい」も「バカにされたくない、暴言吐かれたくない」も両方切実な想いだけど、やっぱり誰かの評価のために自分を変えるのは「減る」”(p.25)

尊厳と自尊心。わたしはそのどちらも踏みにじられたことがあります。
この身体は確かにわたしのものです。それと同時に、”女の身体”は、他者の欲望の標的でもありました。
留学中には美術館などで何度もナンパに遭いました。キャットコールをかけられました。会社の同期と食事を楽しんだ後、信号待ちをしていると、見知らぬ男性にいきなり手を握られました。

「一緒に帰ろう」

そう言った男性は、どこからどう見てもきちんとしたサラリーマンでした。恐怖のあまり振り払うこともできず、無理やり笑顔を作って何とか逃げました。横断歩道の先の交番に駆け込むこともできませんでした。
バイト先ではあの手この手で触ろうとしてくる上司におびえ続けました。
電車に乗ることが怖くなりました。
こうした時、わたしは身体の所有権を奪われたように感じます。”女の身体”が他者の欲望やルッキズムに支配されたように思います。
その一方で、わたしが内包しているルッキズムも、身体をむしばみます。これまで自分の軸になっていたものは、他者の評価をベースにしていました。そのせいで、この身体を愛せなくなってしまいました。男性のルッキズムに傷つけられたにもかかわらず、自分もそれに加担していたなんて。認めたくはありませんが、事実です。

“女の身体”を意識させられることは、他にもありました。生理の時です。

小学校で初潮を迎えてからずっと、生理に振り回され続けてきました。脂汗をにじませながら痛みに耐え、それでもダメな時は、学校を、会社を休みました。生理前の体調も生活に支障をきたすほどでした。夜全く眠れない。かと思えば睡眠薬を飲んだような眠気で起き上がれない。ざぁぁぁっと滝のように流れ出す不安。不定期にやってくる生理に、心身ともに支配されていました。
今は生理をコントロールしています。ヤーズフレックスという、最長120日間生理が来ないようにできるピルを飲んでいます。以前はひと月に一回、きっちり生理が来るようにするピルを飲んでいたのですが、うつ病患者にとって(もちろんそれ以外の人にとっても)、生理前のあの不安感は深刻な問題なので回数そのものを減らすことにしたのです。
月経カップも使用するようになりました。経血の不快感やナプキンによる蒸れが解消されて、生理中も快適に過ごせています。それでも、腹痛やだるさはコントロールできません。ピルには保険が適用されず、「避妊が目的でしょ」という世間のイメージも変わりません。
ひと月の大半を不調のまま過ごさなければならない。それでも普段と変わらないパフォーマンスを求められる女性たち。それなのに、生理=汚れ・恥ずかしいこととして、公の場で女性がそのつらさを語ることはいまだにタブー視されています。
フェミマガジン『エトセトラ vol.3』(長田杏奈責任編集, エトセトラブックス, 2020)で、翻訳家・小説家の松田青子さんはこう述べています。


“生理を隠さないといけないから、いつまでも生理が異様なものになっている この世が家父長制でなければ、生理は全く違う扱いをされていることだろう…(中略)…でも、このままだと、家父長制の思うツボだ。教育の敗北だと信じてきたけれど、彼らにとっては教育の勝利なのだ。生理が無理解のまま隠されている=家父長制のシステムが維持されている、なのだ。だから我々は、生理について語り、生理を可視化し、生理という現象にたっぷり陽の光を浴びてもらわなければならない”(p.30-31)

こうした声に、宝島社がこたえました。

“女性のカラダのいろいろを、タブーや神秘のままにしないで、正しい知識を身につけましょう。老若男女問わず、みんなでもっと言葉にしてみましょう”

”あらゆる世代の女性のカラダとココロを元気にする、フェムテック、フェムケアプロジェクト、はじめます!”

とフェムテック啓発プロジェクトを立ち上げたのです。
https://fashionbox.tkj.jp/femtech
『リンネル』3月号には『はじめよう!わたしたちのフェムテック』と題してSHELLYさん、長田杏奈さん、西部紗緒里さんの座談会が掲載されました。中でもSHELLYさんの

“日本女性が超えるべきハードルは「モテ」”

という指摘は非常に鋭いと思いました。男性にどう思われるかを気にして、身体について語れなかったり、コンプレックスを抱いてしまったりする。しかしそれでは、先述の松田さんの言葉のように、「家父長制の思う壺」です。尊厳や自尊心を他者にゆだねてしまう行為なのです。
生理を汚れと考える社会で大多数を占めるのは男性です。ルッキズムや「モテ」の呪縛は、女性の社会での立ち位置を限定してしまいます。わたしのように、自分の身体を愛せなくなってしまいます。変わるべきなのです。声を上げるべきなのです。後の世のために。何より、自分自身のために。

「わたしの身体はわたしのもの。当たり前でしょ?」

そう言える日が来ると信じて、今日もわたしは身体と向き合います。

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行田トモ

行田トモ(ゆきた・とも)

エッセイスト・翻訳家
福岡県在住。立教大学文学部文学科文芸・思想専修卒。読んで書いて翻訳するフェミニスト。自身のセクシュアリティと、セクハラにあった経験からジェンダーやファミニズムについて考える日々が始まり今に至る。強めのガールズK-POPと韓国文学、北欧ミステリを愛でつつ、うつ病と共生中。30代でやりたいことは語学と水泳。

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