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皆さまこんにちは、行田です。早くも2022年最初の月が終わろうとしていますね。年が変わって、新たな目標を立てられた方も多いのではないでしょうか? 行田の目標は「韓国語学習」だったのですが(既に過去形)、1日でハングルを覚えられるはずのテキストをなぜかぐるぐるしています。ドラマで感嘆詞なんかは覚えられるのですけどね……。

そんな韓国語で気になるワードに出会いました。それは「YOLO族」。「ヨルロジョッ」と読みます。YOLOとはYou Only Live Onceの頭文字をとった米英語のスラングで、一度きりの人生、自由に生きたい、また、そうした生き方を追求する(主に)若者を指す言葉だそうです。

刹那的な感じもしなくはないですが、いいですよね、YOLO。振り返ると以前こちらのコラムでご紹介した『この恋は初めてだから〜Because This is My First Life〜』にも”YOLO cafe”というお店が出てきました。この言葉を知っていたら初見時「なるほど!」と思えたのに……。

そんなお隣の国韓国のエッセイで、昨年の発売以来長いこと書店で平積み、ピックアップされていた本があります。それは、YOLOならばこんな暮らしがしてみたいなぁと思わせてくれる一冊でした。

『女ふたり、暮らしています。』
(キム・ハナ/ファン・ソヌ著、 清水知佐子訳、 CCCメディアハウス、 2021)

賃貸のルームシェアなら珍しくない話ですが、驚くことに、このふたりは共同でマンションを購入しているのです。ひとり暮らしに慣れたアラフォー女性がふたり暮らしを始めるまで、そしてその生活スタイルやエピソードを彼女らが交互に綴っています。

その言葉のひとつひとつに共感&感心しきりで、読んでいる間は赤べこ状態でした。

ハナさんは「ひとり暮らしの不安の解決策は結婚ではないように思えた」と言い切ります。このふたり暮らしの良い点はお互いがシングルのまま、家父長制に取り込まれることなく、原子ふたつがくっついてできた「分子家族」だと。くっつく原子の数は何個でも、固い結合でもゆるい結合でもいいのだと。そして、

“女と男という二つの原子の固い結合だけが家族の基本だった時代は過ぎ去ろうとしている”(p.016)

と、「家族」という単位の見方はもっと自由でもいいのではないかと言ってくれます。
整理整頓が大好きなハナさんに対して、ファッションフリークでハンガー・ラックを崩壊させるレベルのソヌさん。彼女は”今、そばにいる人が私の家族です”という章で、「生活同伴者」を法でカバーできないかとPACS(フランスのパートナーシップ法)を例をあげ、

“生涯を約束し、結婚というしっかりした形で互いを縛る決断を下すのはもちろん美しいことだ。でも、たとえそうでなくても、ひとりの人生のある時期に互いの面倒を見て支え合える関係性があるとしたら、それはまた十分に温かいことではないか。個人が喜んで誰かの福祉になるためには、法と制度の助けが必要だ。以前とは違う多様な形の家族が、より強く結ばれ、もっと健康になれば、その集合体である社会の幸福度も高まるだろう”(p.320)

と語っています。思わず涙が出そうになった箇所でした。全員血のつながりのない家族、同性同士の家族、友情で結ばれた家族。「家族」という単位。それが示す形態がもっとバリエーション豊かになったのなら、この社会は間違いなく変わるでしょう。

そんなハナさんとソヌさんという、新しい「家族」同士の関わり合いの様子は、人間関係のHow to本にもなります。中でも、

“自分と違うからといって、変な目で見たり、評価したりしないことは共存の第一条件だ”(p.43)

という箇所は過去の自分に5億回ほど言って聞かせたいです。
2本のしっかりとした柱が寄り添って大黒柱になっている、そんな印象を抱かせてくれてこのエッセイですが、残念ながら真似するのは簡単なことではありません。マンションではなく賃貸なら、と思いきや、ソウルの住宅事情はとってもシビアなのです。
Amazon Prime Videoで12月から配信されている『恋するイエカツ』というドラマがあります。海外出張に行っている間に担当雑誌が廃刊&賃貸が競売に出されてしまって住むところがない! という、なんとも不運な編集部員のヒロインと、ヒロインが担当することになる住宅雑誌の鬼編集長かつツンデレ大家のラブストーリーです。ヒロインを演じるのはチョン・ソミン。住む場所がないヒロインをチョン・ソミンが……と、ここまで書くと、韓国ドラマファンの方は「あれ?」と思われるのではないでしょうか。そう、『この恋は初めてだから〜Because This is My First Life〜』と同じですよね。ドラマを紹介しているKstyleではこの状況を、

” これは「家問題は若い世代にとってつねに共通する悩み」ということを示している。”

と評し、

“韓国では現在、首都圏を中心に住宅の価格が高騰、不動産バブル崩壊の危機が叫ばれている。勝ち組が高笑いする一方で若者や庶民にとって家を買うことは夢物語になり、不動産はいまや韓国で暮らす人々の最大の関心事といえる”
https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2182431より)

と解説しています。
NHKの『おはよう日本』で取り上げられたのは、分譲マンションの平均価格が一億円を超え、賃貸価格も高騰する一方の現状。月収約20万円の男性が約20㎡の半地下・窓なしの部屋でなんとかやりくりしながら暮らす様子も紹介されました。彼は結婚をして引っ越すことを検討するも、ソウルでは手の届く物件が見つからないとのことでした。

人間関係どうこう以前に、ひとりで暮らすためにも高〜いハードルがあるソウル。せちがらいなぁ、と思いつつ、それじゃあ日本の今はどうなの? と考えると思わず腕組みをしてしまいます。ですが、同居、と想像してすぐに相手が思い浮かぶのは幸せなことだな、とも感じる行田でした。

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行田トモ

行田トモ(ゆきた・とも)

エッセイスト・翻訳家
福岡県在住。立教大学文学部文学科文芸・思想専修卒。読んで書いて翻訳するフェミニスト。自身のセクシュアリティと、セクハラにあった経験からジェンダーやファミニズムについて考える日々が始まり今に至る。強めのガールズK-POPと韓国文学、北欧ミステリを愛でつつ、うつ病と共生中。30代でやりたいことは語学と水泳。

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