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この数ヶ月、毎週金曜日になると流れるニュースがある。「Friday for Future」というデモのニュースだ。

「Friday for Future」とは、昨年、当時15歳だったスウェーデン人の少女、グレタ・トゥンベリが地球温暖化対策を訴えて一人で国会前に座り込みを始めた行動がその後ヨーロッパ各地の中高生へと広がり、毎週金曜日に学校へ行く代わりに地球温暖化への環境対策を訴えたデモに参加する、という運動だ。

日本でもFriday for Future Japanが立ち上げられ、2月に国会議事堂前に大学生たちが集まってプラカードを掲げたというニュースを読んだが、私自身は遅ればせながら3月末くらいだったろうか、そのきっかけとなった行動を起こしたグレタのインタビュービデオを見たときは唸ってしまった。

自身のSNSアカウントのプロフィールに「環境活動家でアスペルガー症候群」と書く彼女は、アスペルガーゆえに自分の見る世界は黒か白かのどちらかしかないもので、だからこそ「権力のある大人たち」がなぜ物事をそんなに複雑にしたのかわからない、という。

そして、学校に行く貴重な時間を無駄にしている、という批判には、政治家たちは否定と怠慢で何十年も時間を無駄にしたではないか、と辛辣に返す。
希望の持てない将来のために学校へ行って勉強するのは意味がない、という理屈は確かに筋は通っている。
そうした希望を失わせたのは大人たちの責任で、グレタの指摘にはぐうの音も出ない。

さてドイツでは、今年に入って徐々に各地で広がったこの「Friday for Future」運動。回を重ねるごとに開催都市は増え、参加者も増え、今では各都市で数千人から数万人の規模でデモが行われている。
一方で、主張はともかくとして授業に出ない、ということは是なのか非なのか、という議論も起こっている。

ドイツでは、無断欠席をすると虐待を疑われて警察が家にやってくることがあるほど義務教育を受けさせる親の義務と就学せねばならない子どもの義務が徹底して定められているほどなので、学校を休んでデモに行く、というのは大事なのだ。

もちろん学校側がそれを受理するわけはなく、当然規則に反して欠席する、ということになる。参加者を称える政治家や世論がある一方で、他の政治家や世論は、褒められることではない、親は子どもの手綱をしっかり持て、と当初は意見が二分した。

そうした中、メルケル首相が3月の初めに「素晴らしい取り組みだと思う」と理解を示したポッドキャストの談話は大きな反響と反発を呼んだ。個人としての意見も率直に述べる彼女らしい発言だが、子どもたちが学校へ行かないことを首相が奨励するのはいかがなものか、というわけだ。

とはいえ、デモの矛先はメルケル氏率いる政府でもあるのだから、真意はどうあれ彼女のポジティブな反応を得たというのは大きな手応えだ。

そもそも選挙権すらない年齢の子どもたちが教室から町へ出てスローガンを叫ぶというその行動が、今、国を動かしつつある。
そんな時代がついに来たか、という気持ちは、次世代への明るい希望と同時に大人がしっかりしていないという暗い嘆息が混ざったもので複雑だ。

グレタは国連COP24でのスピーチでこう語った。

「2078年、私は75歳になっていて、もし自分の子どもがいたら、彼らはこう尋ねるだろう、行動する時間があったのに、なぜ何もしなかったのか? と」

この言葉に、私は不覚にも泣きそうになった。そんなにも悲しい未来が子どもたちには待っているのだ。少なくとも、大人の私たちが何もしない今のままでは。

そんな大人たちに「Friday for Future」のティーンエイジャーたちはこんな要求を突きつける。

2035年までにドイツの温室効果ガス排出量を実質0まで引き下げること。
2030年までに炭力発電を停止すること。
2035年までに100%再生エネルギーでまかなうようにすること。

2030年までにドイツの温室効果ガス排出量を90年代の半分にすることを目標に掲げているメルケル首相をして、現実的でない、と言うほど厳しい要求は、大人の事情からすればまったく非現実的かもしれない。

しかし実際、この数年の異常気象やそれによる自然災害のすさまじさを通して地球温暖化の影響はひしひしと感じることを思うと、たしかに待ったなし、なのだ。


5月26日の欧州議会選挙を控えた5月24日金曜日のデモは、再び大きな集まりとなった。「Friday for Future」の訴える環境対策や要求を議員選挙を通して欧州議会にも届けようというわけだ。6万人集まったミュンスター市を始め、各地で大きなデモがあり、ここケルン市でも1万2000人集まったそうだが、その参加者の大半は授業を休んできた中高生たちである。

その参加者の一人である女子高生はラジオの街頭インタビューでこう話す。
このデモの参加者である自分たちにはまだ選挙権はない。

けれどもこうしてデモをすることで大人たちの関心を引き、彼らを投票に行かせる、彼らの一票に影響を与えるのよ、と。デモに参加している私の友人の子どもたちも口をそろえる。
自分たちはまだ投票できないのだから、代わりにこういう行動を起こすしかないんだ、と。

よく日本のインターネットで見かけるのは、数の多い年配世代が投票すれば彼らにだけ都合の良い要望が通ってしまうのだから、自分たちが選挙に行っても意味ないよね、というあきらめの声だ。

実はドイツでもこの何年か、30代、40代の層が選挙を棄権することが多く、その諦観の姿勢に対して批判が上がっていた。でも今、選挙権すらない欧州のティーンエイジャーたちは、自分たちにできることを、と自ら立ち上がっているのだ。

彼らのたくましさが頼もしく思える、なんて他人事のように言っている場合ではなく、大人はもっと危機感を持って彼らの意見を受け止め行動していかなければならない。

そうでなければ、世代間の断絶で社会は分裂し、世界はすたれていくだろう。
子どもたちの行動を支援し一緒に行動を、と呼びかけるParents for Futureという大人たちの運動も始まっている。

さて、その26日に開催された欧州議会選挙のドイツにおける結果は、これまでの二大政党のCDUとSPDが大きく票を失ったのに対し、環境政党である緑の党が大躍進し、かろうじて第一党を保持したCDUに迫る勢いで2位を得て、SPDよりも上に立った。

その理由の一つは明らかにFriday for Futureの力だろう。
選挙権のない子どもたちの力が政治を動かした、ということに私たちはあらためて自省し、彼らの訴えに真剣に向き合うべきだろう。



© Aki Nakazawa

選挙翌日のBild紙のタイトルは「記録的な投票率と緑の党にとって夢のような結果」ビルト紙は大衆紙なのでセンセーショナルなタイトルです。6割強の投票率では記録的ってほどでもないでしょ、とツッコミ入れたくなりますが……。

昨年のドイツ総選挙でも票を伸ばした緑の党。2011年の福島の原発事故の後のバーテン・ヴュルテンベルグ州選挙の時に第一与党のCDUを抜いてトップに立ったことで、CDUを率いていたメルケル首相が脱原発へと方針転換をして以来、ドイツは代替エネルギー開発を進めていますが、ますます時代は緑の党が支持される流れになりつつある、というよりならざるをえないのでしょうね。このFriday for Futureにどんな子どもたちが参加しているのか、次回はそのお話をしたいと思います。

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中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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