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No Women No Music Vol.9 アフガニスタンの女性音楽家達

ほんま えつ2003.11.11

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去る11月1日の土曜日、朝起きていつもの様にテレビのスイッチを入れると、賀来千賀子がアフガニスタンを訪問するという番組が始まっていた。偶然出くわしたそのプログラムを、どうせ前にやった〈藤原紀香アフガンへ行く〉の二番煎じだろうと、半ばちょっと斜に構えつつも、最後までみてしまった。そして観終った後、なんだかんだとふつふつといろいろなことを考えてしまっていた。最初は賀来千賀子がいきおいアフガンへ飛び込み、戦地の傷跡やいまだ絶えない緊迫した雰囲気に徐々に焦燥し、しかし何かを求めるがごとくひたむきに生きる現地の人々に体当たりで解け込もうとする、ちょっと‘ウルルン’ちっくな演出に多少やられてしまったみたいだ。

そんな番組中に登場したアフガニスタンの人々に、36歳で7人の子供を育てているという女性がいた。正直とても36歳とは思えないほどにやつれている。どうみても40歳過ぎの生活につかれた女性の顔だった。うつしだされる彼女の子供たちは幼児から小学生くらいの年頃。小学校3~4年生くらいと思う男の子の表情は、あどけなさからは程遠いこわいこわい目でカメラを見ていた。アメリカ合衆国の武力攻撃、そして貧困は、子供たちを第2、第3世代のテロリストへ向かわせる予感を、この一瞬に実感する。

また、やっと学校へ通えるようになった女の子が、‘明日の勉強より今日の労働’という親の教えと世間の風潮の元に、行きたい学校を休み、牛の世話をする。翌年には学校を辞めさせられ、親の決めた男の人と結婚しなければならない。まだ10代の前半だろう。彼女の顔からも絶望という言葉がよみとれた。

わたしの親などは、昔々こんな番組を見ると決まって‘ほらご覧なさい、貧しくてもみんな親の言うことを聞いてガマンして頑張っているのよ。えらいわねぇ。あなたもこの子たちを見習いなさい’というセリフを吐いた。‘女は常に下を向いて生きよ’というのが我が家の教えであった。高峰秀子の子役時代にこんなような映画があったけど、わたしが生まれたのは1960年代後半だ。バブリー間近な時代でも、女が高学歴だとお嫁にいけないとかいうアホな理由で女子に大学へ(短大・専門学校さえも)行かさせない天然記念物のような親がいたのだ。賀来千賀子に学校に行けない悲しみを苦悶の表情だけで訴える女の子の姿に、ちょっとむかしを思いだし、忘れていた怒りと悔しさがこみ上げてきた。

ということで、やっと音楽の話題へ。今回ご紹介するのは“Afghanistan~Female Musicians in Herat”というちょっと珍しいアルバム。2002年にUNESCOからリリースされたもの。メイド・イン・フランス盤です。

これは1973年と1977年にアフガニスタンで録音、採録された音源らしい。Zainab Herawiという現地で唯一活躍する女性ミュージシャンがうたう歌、セレモニーやストリートで歌う女性をスタヂオへ呼んで録音したものなどが入っている。輸入盤で解説が英語&フランス語。英語すら満足でない私の読み取りなので、間違った情報だったらごめんなさい。

しかし、とてもスタヂオレコーディングとは思えない。リアルな村の人間の息遣い、儀式の閉塞感。これ1枚で、近年のアフガニスタンにおける、息が詰まりそうな女たちの地位と生活が伝わってくる。先に書いたテレビ番組に登場した女子の結婚式も、このCDから聞こえてくるような女性達のセレモニーソングによって成立するのだろうか。

番組中、学校での音楽授業風景では、男女混合でアラブ歌謡のようなものをうたっていたのだが。。。

民族音楽のフィールドワークのような学術的な側面も感じさせる1枚ですが、異国情緒が味わいたいときのBGMとしてもちょっといいかも。掘り出し物です。

ちなみに私は、タワーレコード新宿店のワールドミュージックコーナー、中東アジア~アラブの棚を貪欲に漁っていたときに発見しました。興味を持たれた方はがんばって探してみてください。

「Afghanistan/Female Musicians in Herat」D8284 UNESCO COLLECTION
www.unesco.org/culture/cdmusic

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ほんま えつ

ほんま えつ(ほんま・えつ)

音楽、映画、本をこよなく愛して生きる趣味人女。
小学5年生のとき同級生の友達宅で聴かせてもらった「クィーン」に感動。
以後、洋楽を貪り始める。初めて買ったLPレコードは「アバ」のベスト盤。
いまではこれぞと思った音楽はジャンルを超えてなんでもござれの雑食派。
本連載、約10年ぶりのカムバックです。

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