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1週間、筋肉痛が治らなかった。
筋肉痛なんて久しぶりだ。
腕から肩から、えらいことになり、試しに使った塗り薬が肌にキツくて、あちこち真っ赤になる、というおまけつき。
8月のフラワーデモで、スピーチをする方の横に立って、メガホンを抱えていたら、なんということか、メガホンの重さで筋肉痛になってしまったのだ。
抱え方がまずかったことに加えて、このところ筋トレもろもろサボっていたツケがきたかな、と。
年齢のせい、とはいうまい。
でもこの筋肉痛は、うれしい誤算でもある。
それだけ長時間にわたり、語りたいという人がいたということだから。
それを、横で聞かせてもらっていたということだから。

8月11日、日曜日、京都で初開催されたフラワーデモに参加した。
京都でもやろう! と声をあげて下さった方がいて、お手伝いをすることになったのだった。
京都のマチナカの公園。
お盆休み中だから、人はあまり来ないかも、なんてったって暑いしと、ゆるーく考えていたら、北原みのりさんがいらしたこともあって、え、こんなに? というほど沢山の人が集まっていた。
自分の考えの甘さを反省。

誰でも出入り自由なオープンな場所。
誰が参加しているのかわからない。
誰が聞いているのかもわからない。
もしかしたら、知り合いが通るかもしれない。
自分の経験を、大勢の人の前で話す。
自分の思いを、知らない人たちの前で話す。
面白かった映画の話や、おいしいランチを食べたとかいう話じゃない。
今まで何十年も誰にも話してこなかったこと、思いきって話したのに信じてもらえなかったこと、あなたが悪いと言われてもう誰にも言うまいと心の奥底にしまい込んできたこと……それを、話すのだ。
マイクを持って、自分の声で。
凄いことだと思いませんか。

語りはそれだけじゃ存在しない。
その語りに耳を傾ける人がいること、その耳への信頼があって、語られる、言葉が紡がれる。
心に響くスピーチは、その場に居るわたしたちへの信頼の証でもある。
この人たちになら話したいと思えること。
信じられる場があるということ。
ここなら話せると思えること。
フラワーデモは、そんな場だ。

ある場所でのフラワーデモで、スピーチに立ち、マイクを前にして、自分でも思っていなかったことを口にしたことがあった。
前に話した方の話に触発され、ここまで話してもいいんだと背中を押され、目の前で言葉を受け止めながら聞いてくれる人に助けられ……。
そのことを話したことで、少し前に進めた気がした。

自分の性被害のこと。
大事な人の被害のこと。
加害者を生まないために自分たちができること。
自分のこととして身に引きつけて考えたこと。
少女像を巡る問題。
国会議員による科研費バッシングのこと。
女性の人権問題としての戦時性暴力。
とても、とても多くの女性が被害に遭った事件のこと。
マイクを持ってのスピーチ、プラカードのメッセージ、後でこっそり伝えてくれた話。
どれも切実で、わたしの、そしてわたしたちの問題で、こうやって、経験や知恵を共有して、立ち位置を確認し、
そこに集まったさまざまな人たち。
現在進行形で事件のただ中にいる人。
過去の被害に向き合い始めた人。
こんな社会を変えたいとやむにやまれぬ思いでやって来た人。

こういう場があること、それが広がっていること、これを#Metooと呼ばずしてなんと呼ぼう。
8月11日のフラワーデモは、全国18箇所で開催された。
声は静かに広がっている。

でも、本当は。
こんな場が必要のない方がいいと思ってる。
日曜の夜は、ゆっくりご飯を食べて、家でのんびり過ごしていた方がいいと思ってる。
夏の蒸し暑い日、あちこち蚊に刺されてボリボリ掻きながら、メガホン抱えて筋肉痛になるなんて過ごし方、あんまりオススメできない。
性暴力のない社会、といえば夢物語に聞こえるだろうか。
そんな社会が実現したら、日曜日にデモに行くことも、メガホン抱えて筋肉痛になることも、ない。
被害の実態に即した法があって、事実が正しく調べられて、性被害を告白したからと言ってなんら不利益にならず、刑事手続きでも被害者が守られ、誰もが性差別や性暴力はダメだと思い、加害者にも適切な処置がされ、自分の体や性を大事にするための教育が充実していて……という社会では、まだまだないから。
こうして声をあげなきゃいけない理由があるから。

4月に、最初のフラワーデモが開催された時、弁護士たちからの酷いバッシングがあったことは忘れない。
言葉で仕事をする人たちが、よくもまあ、こんな言葉を使えるものだと、それはもう、驚いた。
その上、デマを流した弁護士までいたのだから、忘れようにも忘れられない。
ま、弁護士にもいろんな人がいるんだなー、弁護士だからってだれもが信用できるとは限らないんだなー、と身をもって教えて下さったと思って(←もちろん、ホメてない)、わたしたちは先に進むよ。

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牧野雅子

牧野雅子(まきの・まさこ)

龍谷大学犯罪学研究センター
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。 

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