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ブランドインタビュー 第7弾!「OHNUT は性交痛の女性を助けるトーイであり、人と人を繋ぐプロダクト」

ラブピスタッフ2019.10.23

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女性の75%が経験する表面や内側のつらい性交痛を軽減するアイテムとして、登場した「OHNUT」。ペニスの根元に装着すると、2人の間のクッションとなって女性のからだを守る、というアイデアから生まれた「OHNUT」は、瞬く間にトップセラープロダクトとなりました。
ラブピースクラブでもSNSの投稿に対して異例の数の反響をいただき、また、お客様からの感想も非常に多かった商品です。

近年、テクノロジーを駆使したトーイ開発、とりわけ女性開発者によって女性のための安心と安全を追求したトーイが多くリリースされていることご存知でしょうか?
この新たな分野は、Female+Technologyをかけあわせた造語「FemTech」(フェムテック)と呼ばれ、いまトーイ業界でもっとも勢いのある分野となっています。
そんなフェムテックから登場したのが、「OHNUT」です。

今回、私たちラブピスタッフはアメリカ・ニューヨークで開催された「Sex expo2019」にて、「OHNUT」を作ったCEOのエミリー・ザウアーさんに会いお話を伺ってきました。

エミリーさんが2017年1月にOHNUT開発のために起業したのは、親しい友人にも話すことのできなかった「セックスの痛み」についての自身の悩みから着想を得て。
医師に相談しても解決策が見つからず、痛みの身体的なつらさだけでなく、『自分はダメなんだ』と自責して精神的にもつらい思いをしている女性が自分以外にも多くいることを知ったエミリー。
多くの女性が抱えているのにきちんと向き合われてこなかったこの現実に、医師や研究者と提携して、痛みを軽減するOHNUTの開発に着手しました。

また、エミリーさんは、エンジニアやコスメ・美容業界からセックストーイ業界に転職する人が多いなか、テクニカルディレクターからセックストーイ業界に転職した異色の経歴の持ち主。OHNUT誕生の経緯や開発の話だけでなく、この業界で働く意味についてお話してくださいました。

 

■ラブピ:発売からラブピースクラブでも大反響のトーイになりました! お客様からも、そして私たちスタッフも思ったのは「どうやってこんな形を思いついたの!?」ということです。OHNUTのインスピレーションはどこから生まれたのでしょうか。

エミリー: わあ!日本の皆さんにも好評でとても嬉しいです。本当に嬉しい!
OHNUTのコンセプトは、見たままと思われるかもしれないけれど、ドーナッツです。
でもドーナッツのイメージで作ったので、最初に作ったときはとても重くて、厚みもあって、伸縮性もありませんでした。アイデアを実際形にしてみて思ったのは、厚みや深さを細かく調節したい人がいるだろうということです。
そこでドーナッツのような見た目から、フットボールのような見た目に変えて、モニターのお客様からのフィードバックを聞いたところ、人の動きにフィットしないトーイになっていました。どうすれば良いだろうと思いました。でも、フィードバックを聞いたり試行錯誤する内に私たちは、「もっと付け替えたり、組み立てできたりするものだったら使いやすいんじゃないか」と学んだのです。OHNUTを使う人は「もっとリングを足したり、引いたりできるようにしてほしい」と望んでいるのではないか、とも思いました。

そして、私たちは本当に簡単に使えるようにするために、組み立て機能の開発を始めました。OHNUTを身につけ、リングを追加できるようになると、取り外すこともシームレスにできるようになりました。

■ラブピ:そうして生まれた今のOHNUTの形ですが、私たちは色にも注目しています。肌に当てても不快感のない、本当に美しい色だと思いました。色はどのように決めましたか?

エミリー: 色を決めるまでは本当に長い道のりで……。OHNUTはしっかりした目的をもった“ウェアラブル”トーイです。医療に近い意味も持っているし、身体もそうですが、痛みがなくなることで気持ちの距離も近づき、本当の意味で2人の間をつなぐ意味も持っているのです。OHNUTはそういう意味で新しいカテゴリーであり、そして本当にヘルシーなプロダクトだから、私たちはOHNUTを“ウェアラブル”と呼んでいるのです。

たいてい医療的な場所ではブルーを使うと思うのですが、私たちはブルーよりもっと自然に近い色はないか考えたのです。そうして、このジェードグリーン(緑色)にしました。あとセックストーイの多くは、はっきりした色やマットな見た目のものが多いと思うのですが、私たちは、自然を連想するような、透明感のあるトーイにしました。

OHNUT は性交痛の女性を助けるトーイです。しかしながら同時に、男性も装着するトーイなのです。OHNUTは男性が着けることで、パートナー同士、2人をより引き立たせるようなトーイであると思っています。だから私たちはOHNUTを身体の延長線だとか、身体の一部のふりをしているものにしたくなくて、肌に近い色にはしませんでした。

 

■ラブピ:確かにOHNUTは新しいジャンルのプロダクトだと思いました。また、使い方の説明をすると「実は私も性交痛で…」という話を聞くことが増えました。それとOHNUTをお客様に説明すると、「アメリカは日本に比べてセクシュアルヘルスにオープンな国だと思っていたので、性交痛に苦しむ女性が多いというのが意外だ。」という声もありました。

エミリー: 人生で性交痛を経験すると答える女性は75%いますが、それも答えてくれた女性の一部にすぎません。実際はもっと多いのかもしれません。この女性たちの中でセックス中にパートナーに何か言う人は半数未満で、私たちは身近な人に対しても性交痛であるとオープンにするのを恥ずかしいと感じていますし、恐れています。

今、世の中では「セックス=プレジャー」であると捉えがちです。そしてセックスを語るとき、オーガズムとプレジャーに重点を当てているため、性交痛に悩む女性たちは「普通の人に比べてオーガズムもプレジャーもない自分は…」と、どんどん自己肯定感が低くなり、自分を責めてしまうのです。

■ラブピ:日本のセクシュアルヘルスが抱える問題とまるで同じで驚きました。特にメディアなどを通して悩みが更なる悩みになって、自己肯定感が低くなって……というループは、お悩みを抱えたお客様からお話を伺ったときに感じることがあります。病院などでも話せないし…とラブピに相談に来るお客様も多いのです。

エミリー: そうですね、日本ではセクシュアルヘルスについて話すことがタブーだと先ほど伺いましたが、私たちにとってもセクシュアルヘルスはタブーであるし、産婦人科などの医療機関でも「性交痛です」というような訴えに対しての会話スキルが訓練されていません。
私たちもどう質問していいか分からないし、医師も患者から「性交痛で悩んでいます」と言われても、なんと言葉を返していいか分からないのです。つまり、私たちからも、医師からも性交痛の会話は成立しないんです。双方に問題を抱えている、これが性交痛についての現状です。

■ラブピ:この問題に対しての一つの解決策がOHNUTということですね。

エミリー: そうだと思っています。それに、OHNUTへのフィードバックを通して、性交痛の悩みのある人は、他にも様々な問題も抱えている場合が多いということを知りました。身体の痛みはもちろんですが、その背景には性機能障害という身体、心の問題や、パートナー間のコミュニケーションの問題があるということです。
このようななかで一番大切なのは、医師たちの会議に出席し、毎日患者と接している医師にこの問題について伝えることです。つまり、誰がこの問題を知っている人なのか、解決の方法を知る人は誰なのか、どんな会話が起こるのか、何が必要なのかを伝えることです。今はこの方法しかありません。

■ラブピ:OHNUTを使ったアイデアは何かありますか?

エミリー: そうですね、OHNUTは組み立て式で、これはとても良いことだと思っています。だから、私たちは5つバージョンとか6つバージョンとか、さらに加えることができるんです。違うカラーも作れるし、何か追加の機能が欲しいという意見があったときに付け加えられるでしょう。
私たちは性交痛について非常にオープンに伝える会社なので、多くの人が相談やOHNUTのフィードバックを伝えに来てくださり、結果として、この分野に関してのエキスパートになりました。
先ほど、医師との情報共有の話をしましたが、今後はOHNUTをもっと医師に病院、クリニックで推奨できるアイテムとして広めていきたいです。


■ラブピ:ありがとうございます。ここからはちょっと個人的なご質問をさせていただきたいのですが、エミリーさんは子供の頃はどんな仕事をしたいと思っていましたか? また、写真家からセックス産業への転身は勇気がいると思いました。決めてになった出来事についてお伺いできればと思います。また、家族や周りの人の反応はどうだったのでしょうか。

エミリー: 私は子供の頃からずっとやってきたことの一つは、人と人を繋ぐきっかけを作って、人の悩みや人間関係が上手く進むように話したりすることです。人々と日常の話をして、問題をみつけて、1人では考えられなかったような可能性や希望を考え、挑戦してもらうようなアナログなことが大好きなんです。

私はいつも人と何か挑戦するのが好きです。私の最初の仕事も、人のモチベーションを上げるような仕事でした。そして、特にこのOHNUTの仕事は、そういう要素がたくさんあります。なぜなら、人々が「なんとかしたい」もしくは「なんとかしたいけどなんとかできない」と諦めていても、OHNUTがあればその問題を進ませられる会話が生まれるからです。悩みがなくても同様で、性交痛がなくても期待通りじゃないセックスの時、それをどう感じるか分かっているからです。
OHNUTがあるということが、人々がセックスに対して不満や悲しいという経験があるということを十分に意味していると思います。

それと、実は私の仕事は写真家というよりはテクニカルディレクターで、写真が生まれる場を統括するような仕事だったのです。だからその仕事はみんなのストレスを管理する仕事でもありました。
写真が上手くいったときは、皆に「本当にとても良いよ!」ということを伝えて、クライアントが満足していることを確認するために全ての人に連絡するなどの、現場の視点や空気を変えるようなコミュニケーションを生み出す役だったのです。
もし誰かが納得してくれないときに、どうやって納得してもらうか考えたりもしました。だから、ひとつとして同じやり方はありませんでした。なので、わかり合えたときは本当に嬉しかったです。

私はアメリカを代表するような政治家や、大手旅行会社、ナイキやアディダスのような大企業の撮影現場を統括しました。それは、私が現場をポジティブな環境にすると認めてもらっていたからだと思います。
繰り返すようですが、私は人と人が繋がるきっかけをつくったり、人間関係が円滑に進むように調整したりするようなことが本当に大好きなのです。

でも、OHNUTに取りかかったとき、父は最初はいい顔をしませんでした。父は私がなんだか良く分からないような大人のおもちゃを作っているようだと思っていたのです。少し時間はかかりましたが、父はやがて私が作っているのは人を助けるようなプロダクトなのだと理解してくれました。ただセクシュアルなだけでなく、パートナーとの関係性の手助けや、自身を取り戻すのを手伝ったり、必要な医療への道を拓く、そんなプロダクトだということです。母も理解してくれました。

父も母も、これまでもずっと私と心を開いて話してくれました。とはいえ、性交痛についてまで踏み込んで話しませんでした。でも今は、夕食の時に家族で話したりするんですよ。本当に素晴らしい両親だと思っています。

■ラブピ:最後になりますが、実は今、日本ではこの業界に興味をもつ女性が増えています。ですが、まだ社会的な女性のリーダーも少なく、セクシュアルヘルスやセックストーイに対しての偏見が多いのが現実です。このようななかでも、前に向かって歩いている彼女たちに向けて何かメッセージをいただけますか?

エミリー: わお!すごい!とても素晴らしいですね……!今、非常に感動しています。
彼女たちにメッセージを贈るのは、とても緊張してしまうのですが、まず、本当に大切なのは、トーイの会社やショップを経営するというのは、もはやセックスの偏見にとらわれず、人と人を繋ぐ場所を作ろうということなのです。私たちはみな、人とのつながりを求めています。
もしスティグマを感じるなら、人と人が繋がることはタブーではないということを意識して欲しいと思います。この業界に入ること、会社を作ること、それは、「困っている人や切実な思いを抱く人」を「最高の自分」に導くのと同じことなので、全く恥ではありません。

そういう考え方が、私をOHNUTの仕事に導いてくれたのだと思っています。それに、私はオーガズムを売っていると実は思ってません。
QOL(クオリティ オブ ライフ)は親交の深さで変わると思います。パートナーとの親密さを深めることができれば、文字通り私たちはQOLを向上させることができる、と伝えています。

だからこそ、たぶんラブピの皆さんはご存じだと思うのですが(笑)、私は常に「keep up the good work!(がんばりましょうね!良い仕事をしましょうね!)」と全ての連絡に返しているんです。それにこうやって仕事を一緒にしてくださっている方のことを、いつも話して、紹介し続けています。こうやって人と人の繋がりはさらに広がっていくんですね。

もちろん私もOHNUTを作っている最中はとてもナイーブになりました。「本当に良いのだろうか?」と何度も悩みましたし、自信を感じられないときもありました。そんなときもフィードバックを通して、ユーザーと悩みについて会話することで、彼らがそれまで感じたことのなかった自己肯定感を引き出すことができました。これが私の喜びです。
ああ、そして、皆さんがそう思ってくださったら、本当にとても嬉しいです!

 

 

*   *   *   *


【編集後記】
エミリーさんありがとうございました。
OHNUTを通して見えてきたのは、アメリカにおけるセクシュアルヘルスの問題でした。個人が抱える悩み、パートナーとの関係、医療機関との壁。それはどれも私たちラブピスタッフが日々お客様からお話を伺って感じるギャップと同じだったのです。
ですが、私たちはエミリーさんとお話をして、そういった悩みの壁を感じる悲しみを忘れるくらいリラックスした気持ちになりました。それは、彼女が悩みを抱える人の心に本気で寄り添い、向かい合ってきたという安心感が理由かもしれません。
悩みを語るとき、恐れを感じ、辛い思いをするのは当然のことです。それが性に関することだと、尚更恥ずかしさを感じるかもしれません。OHNUTはそんな人の気持ちを汲み上げ、人と人を繋げていくプロダクトです。

ラブピースクラブでは毎週水〜金曜日の14時〜17時に東京・本郷でショールームを行っています。(女性限定・完全予約制)
OHNUTも手に取ってご覧いただけますので、ぜひご予約ください。
https://www.lpcyoyaku.com/showroom

またOHNUTはこちらのページからご覧いただけます。
https://www.lovepiececlub.com/shop/products/detail.php?product_id=4499

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