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東京で自分らしく生きること そして韓流 第12回「60万回のトライ」そして

オガワフミ2019.11.02

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父がラグビー新日鐵釜石の選手・監督だったと言うと、スゴいねと言われる。スゴいはスゴくても(どの偉業でもそうだと思うが)舞台裏の家族は大変だった。創部メンバーだった父の現役時代は筆者が生まれる前で、兄は釜石生まれだ。初の国体優勝と父の転勤、そして筆者が生まれたのがひと月間隔程で起きたお蔭で、筆者は世田谷杉並エリア育ちだ。釜石を去る際に父は市から表彰状をもらっていた。
 
昨年終わりに父が急死したのでお彼岸を兼ねて、母が見合い結婚後3年半新婚生活を(そして筆者を妊娠10ヶ月目まで)過ごした街を訪れた。鳥取市より小さく別海町より栄えている釜石市は、日本の全ての地方都市の縮図だった。漁業は乱獲と気候変動の結果減産、明治期の産業革命以来基幹産業だった製鉄は高炉の火を消して終了し、ラグビー部も廃部となった。(ちなみに内外にリスクを抱えた会社は、韓国での徴用工裁判ではいち早く賠償金を払っての和解を望んだが、官邸の強い指導に遭い一転争うことになったそうだ)。その後市民クラブチームが結成されたがトップリーグ所属ではない。
 
東日本大震災の津波では全国で20,000人近くの尊い命が奪われたが、その痕跡は今なお深刻で復興はおろか復旧も不可能と思われる程だった。来年完成の移設住宅を待って、昔は誰も住まなかった山の上の(リアス式海岸なので山が海に突き出ているのです)仮設住宅にまだ住んでいる方々もいらした。
 
創部時代、父は徹底して東北全県と北海道を巡り、地域に根ざした高校選手を発掘した。当時の日本には東北・北海道差別は確かにあって、大卒のスター選手は採れなかったのだ。鉄屋兼ラガーマンとして、皆でよく練習し、よく働き、よく食べ、よく飲んだ。体格の小さい父はアルコール使用障害が進行した。
 
父が採用した秋田工業高出身選手がその後スター選手に成長し、日本選手権V1、V2くらいまで副主将として部を牽引し、人望もあり見染められて地元の網元の家に婿養子入りした。
会社は鉱山側にあるが、網元は海岸沿いにある。震災では会社で一旦避難後、妻と義母を助けに家に行き、2度目の津波で3人共に死亡した。発見まで長いことかかった。父は、半世紀前に採らなかったらこういう最期を迎えなかったにと気に病んでいたが、死ぬ前に墓参りも果たし、遺族から幸せな人生だったと聴き多少安堵していた。
 
今日のドキュメンタリー「60万回のトライ」(2013)は、大阪朝高ラグビー部と家族の青春物語だ。今も自主上映が行われる機会があるので是非お勧めしたい。それにしても時代も背景も違うのに、ラグビーの苦労話はすごく似ているのに驚く。血と汗と涙があるのに、皆爽やかなのだ。
 
半世紀以上前、東京女子大英文科卒業後1年で蒸気汽車で釜石に着いたその日から、「子どもたち」(選手たち)の母親替わり兼食事の世話を毎日し続けたクリスチャンの母の姿が、映画内校庭で七輪の焼肉を仕切る若いオモニたちに重なる。
 
 
筆者は埼玉弁護士会主催の上映会で、浦和パルコ10階で観た。というのは、ラグビーの青春であると共に人権問題も教える映画だからだ。
 
日本は難民条約と子どもの権利条約を批准している。批准国は国内法以上の上位法として約束を守らねばならない。その一つが、民族言語による教育の保障だ。現在、中華学校や韓国学校他の民族学校が受けている地方自治体補助金を、映画中(当時の)橋下徹知事が出て来て、大阪朝高に対してのみ停止してしまった。
 
「子どもの権利は、政治に左右されてはならないもの」と国連で定められているのに、日本ではそれがなされていない。人権委勧告通りの違反だ。真の共生社会を築くため映画内駅でチラシを巻く部員たちの行動が、2012417日から今週も続いている火曜集会になっている。「60万回のトライ」とフラワーデモは地続きだ。東京でも毎週金曜16時(生徒の放課後の時間)、文科省前で生徒たちと支援者による金曜集会が、欠かさず地道に続けられて来た。グレタさん(16)ではないが、これ以上生徒たちに任せていては大人が責任失格だ。
 
浦和の上映会には共同監督の二人もいらして、特に韓国出身女性のパク・サユ監督が特大級に面白くて、タブレットとデジカメ片手に記念撮影に大活躍だった。この人に再会したい気持ちだけでも、製作のコマプレスに直接問い合わせて自主上映会を開いてみたいくらいだ。どこか会場をお借りして、皆んなでまた観てみたい。
 
ところで、筆者は森喜朗という人物を唾棄している。地方の有力者の親が早稲田に大変な寄附をして当時の二部商学部(夜学)に入学したものの、ラグビーは1年生の前期ももたずに退部し「早大雄弁部」に移った人間だ。在学中に当時の売春等取締条例違反で検挙されたと報道した噂の真相社と、法廷の外で和解した。それが現在ワールドカップと五輪利権で大きな顔をしている。まさにスポーツの政治利用だ。
新人議員時代、呼びもしないのに当時V7を続けていたラグビー新日鐵釜石の優勝後の祝勝会に毎回来ていた。子ども心に親に「あの人誰?」と訊くと「勝ってくると、ああいうわけのわからない寄生虫みたいのが寄ってくるから気をつけた方が良い、スポーツマンの風上にも置けない」と顔をしかめていたのを覚えている。
 
案の定政権と電通の金儲け利権に成り下がったワールドカップだが、ラグビーというスポーツ自体は中々どうして捨てたものではない。例えば各国代表は国籍主義を取っていない。今回の日本代表チームでも、韓国生まれ韓国籍、父は元ラグビー韓国代表のグ・ジウォン選手は、韓国代表ではなく日本代表の道を選んだ(一度代表国を選択すると変更出来ない)。ちなみに筆者のオールタイム・イチ推しは(今回は代表入りしてないのですが)2017年以降代表7回のキン・ショウケイ選手だ(ステキでしょ♡)。
 
 
筆者は現在通勤や1泊旅行用に、元日本軍慰安婦の金福童さんに思いを馳せる白マグノリア刺繍の韓国マリーモンド社製バッグパックを使用している。それにBTSのLINE用キャラ、BT21のアルパカ顔のデカもふパスケースをぶら下げて、主に井の頭線・東横線内でBTS好きな人々に筆者の支持をアピールしつつ日々を過ごしている。
 
韓国マリーモンド社が取り組んでいるもう一つのプロジェクト、児童虐待サバイバー支援「平和のたね」基金シンボルの、子どもの顔がついた(たぶんアーモンドの樹の)タネのピンバッジは、ラグビーボール型で茶色だ。ジウォン選手の先日の対アイルランド代表試合時のスターティングメンバー背番号3番の応援ピンバッジとタテに並べてつけてみたら、このバッグパックの背のデザインの並びがすごく良くなった。他の誰のでもない自分のバッグがデコれた気分だ。
 
実は母は老齢による心臓の持病が悪化しているのだが、父の名が刻まれた席のあるスタジアムに遺影を持ち込みたい、と言うので今回思い切って東北新幹線で釜石に連れて行った。筆者は(密かに自慢の)バックパックを携えて。存命中はアルコール使用障害で家族を傷つけてばかりいた父だったが、ラグビーへの姿勢は真っすぐだった。自分のルーツを思い出せた慰霊の旅になった。
 
本日の連帯: 無償化連絡会・大阪 〜 子どもたちの笑顔と希望のために 〜
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オガワフミ

オガワフミ(おがわ・ふみ)

福祉職員。ゲイ。中年。杉並在住シングル。心身の健康とKPOPの相関について考える日々。ラブピースクラブがその辺で発掘。A型。天秤座。好きな言葉はアイスクリーム。推しカラーはパープル。好きな香りはグレープフルーツ。TOEICスコア990だが日本語少々不自由。夢は夜間中学保健教諭。ハイビスカスティーを常飲。最近パン作りにハマっている。

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