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【見て見ぬフリをされてきた無数のこと】 第4回 論点ずらしが好きな男達、そして“セックスワーク”擁護者達

柊佐和2025.12.24

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性売買構造の恩恵に浴する者達、その周辺利益に与っている者達、そして女性を買って射精のために使役したい男達というのは、論点ずらしが好きだ。

性売買構造を批判していると、
「やりたくてやっている女の権利を奪うな」
「売りたくて売っている女を差別するな」
というようなことを言われる。

彼らは、わたし自身が元性売買従事者で生活保護受給者であると知ると、
「元売春婦(笑)」
「マ●コ二毛作」
「まともに働け」
というようなことを、大喜びでコメントしにくる。

正直に「このクソアマ、男が女を買う自由を侵害するな」と言えばいいのに、決してそうは言わない。
なぜ正直に言わないかといえば、現代社会においてさすがにそれはまずいことだ、という認識があるからだろう。
彼らには「どんな状況であれ、女が自分の意思と選択にもとづき、女自身の身体を男に売っている」という建前が必要なのだ。

その建前を信じているからこそ、男達はなんの気兼ねもなしに女性を買って射精のために使役できる。
もしくは、それが建前であると理解したうえで、女性を使役できる自らの優位性に耽溺し、女性の身体を買う自由を謳歌することができる。

「性売買は女性の自由意思と選択によるものだ」という思想を旗印にしてセックスワークイズワークを標榜する者達は、我こそは女性の自由を守護する者であると胸を張って、女性虐待構造の温存に加担する。

そして、女性が自分の身体を売って自活することができていることにすれば、女性と男の社会的格差を是正する必要などないのだ。
女性は、不特定多数の男のための性的資源となって性売買をするか、結婚してひとりの男の所有物となって生きるかを、“選ぶことができる”。

――選択肢は示されている。
――だから、性売買に従事したのはお前ら女の自己責任。
――だから、性売買や買う男を批判するのはお門違い。
――だから、性売買構造を糾弾するのは、“セックスワーカー”女性への差別である。

それが、性売買構造を温存しようとする者達の言い分だ。

性売買構造を擁護する者達は、“セックスワーク”を合法化して普通の仕事と同じに扱えば、“セックスワーカー”女性達は男からの暴力をまぬがれ、スティグマを払拭し得ると考えている。
性売買を犯罪化して、買う男を逮捕し罰する運用にすれば、性売買は日の当たらない場所に潜って地下化し、従事女性は酷い目に遭う。さらに、性売買にアクセスできずに欲求不満になった男が、一般女性を襲うようになるだろう。
そう主張して、女性を脅迫する。

「地下化」
この言葉を見聞きするたび、わたしは失笑してしまう。
まるで、現代日本の性売買が、日の当たる地上にあって、安全で、清潔で、それに従事する女性達が守られているかのような言い草だ。
この世のどこにも、日の当たる場所で安全に営まれている“セックスワーク”など、ありはしない。
たとえそのような例外が実在するとしても、性売買が男のための閉ざされた暴力の現場であるという事実は、これっぽっちも変わらないのだ。

性売買が存在することで、男達のあり余る性欲が発散されて、一般女性への性暴力被害が抑えられているという主張も、性暴力の現実を覆い隠す卑劣な欺瞞だ。
男達は、自分達は生きた女性を買って射精の世話をしてもらわないと、見境なく女性を襲いかねない存在なのだ、と主張している。
しかし、日本中の歓楽街に性売買が溢れているというのに、男から女性に対する痴漢も盗撮も強姦も殺人も、起こり続けているじゃないか。
なにより、性売買に従事する女性こそが、密室の中で絶え間なく性暴力に遭い続けている。

少なくとも、日本社会において性売買が性暴力を抑止してきたという実証的根拠は存在しない。

性売買を性暴力犯罪に対する抑止力だと公言する者達は「一部の女を生贄にすればその他の女は見逃してやるぞ」という脅迫まがいの論理を、堂々とひけらかしているにすぎない。

女性を金で買うことを許容する社会には、“女とは金で買えるポルノ的な物体”であるという認識が蔓延り、女性のあらゆる姿態や行動をポルノの文脈に置き換える規範が根を張る。
職場でも、学校でも、路上でも、あらゆる場所で女性は性的に値踏みされ、消費されるということだ。

だからこそ、“彼ら”は論点をずらす。
「女性の選択」や「自由意思」や「暴力の抑止」などという言葉を盾にして、男が女性を買うという根源的な暴力構造を覆い隠そうとする。
男が女性を買って射精のために使役する行為そのものの是非を問われないために、問題は別にあるのだと議論をまぜ返す。

しかし、問われるべき論点は変わらない。
なぜ、男が女性を金で買い、射精のために使役し支配することが許されているのか?

それは、この社会が、男の欲望と支配を前提に組み立てられてきたからだ。
女性の身体を資源とみなし、男に差し出させることで、社会の秩序が保たれている(ように見える)構造を、長い間当然のこととしてきたからだ。

だが、答えは出ている。
そんな構造は、許されてはならないのだ。

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