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子連れにやさしい国へようこそ

中沢あき2020.01.20

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12月、バタバタしていたら昨年最後のコラムを飛ばしてしまい、あっという間に年が明けてしまいました。
皆様、あけましておめでとうございます。今年はどんなネタをお届けできるか。どうぞまたおつきあいくださいませ!

さて、その12月は日本に帰っていたのだが、二年振りの今回の帰省は子連れというこれまでにない状況。仕事も兼ねて行ったので日本に着いてからあれこれ調べる時間はないと、オムツやミルクやベビーフードなどはドイツからどっさり持ち込み、あとは出先や旅先でどんなことになるやらといろいろと想定してみたものの、日本に居る子持ちの友人知人からは、子連れにやさしくない国へようこそ、とまで言われる始末……。そりゃビビりますがな。飛行機や電車の中でギャン泣きしたらどうしよう、まわりからの冷たい視線に耐えられるだろうか……。

なんといっても我が子、車に乗せると10分しないうちに引きつけでも起こしたかのように泣きわめくので、それまで近郊の町へ連れ出すのにも躊躇していたのをいきなり11時間半のフライトに乗せてみれば、往きのフライトでは乗務員さんたちからまわりのお客さんたちまで、皆さんとってもやさしかったし、それにつられたのか子どももおおよそ機嫌良く、ニコニコとまわりに愛想を振りまいていたので、まず第一関門クリア。ほっ。

そして到着二日目に夕方の中央線に乗ったときは、さすがにベビーカーを畳んでおんぶ紐を出す状況だったが、それ以外はたいがいベビーカーのまま車内に乗り込むことができたし、椅子を取っ払い、ベビーカーや車椅子専用のスペースを備える車両が二年前に比べてぐっと増えたような。ベビーカーを開いて乗り込む親子連れも何組もみかけたし、駅や各所の建物にはエレベーターが付いているから、遠回りをする必要があっても、ベビーカーでたいがいの所には行ける。いや、ドイツの駅にもエレベーターは付いてますよ。でも壊れていることが多い、というオチ付きなので、あまり意味をなしていない……。

オムツ替え台も、デパートやショッピングモール、ホテルなど各所にあるし、台には子どもを固定できる安全ベルト付き。都内の駅も空港にも新しくてきれいなユニバーサルトイレを備えたところが多くて、おお、これはオリ・パランピック効果かも。驚いたのは、各デパートやショッピングモールなどにはベビー休憩室なるものがあり、下敷きのシートまで無料で備えたオムツ台がずらりと並び(ドイツではドラッグストアなどで自分で購入して持ち歩く)、お母さんたちが人目を気にせず授乳できるカーテン付きのスペースや、ミルクの調合ができるように給湯器や電子レンジまで備えたスペースまである。すごーい! こんなもの、ドイツのデパートにはないぞ! 一緒にいた小学生のママである友人も「私の頃はこんなのなかったよ~」と感心していた。夫だけで娘を連れ出すときにはどこでオムツ替えができるのだろうとやや心配していたら、いまどきは男子トイレの入り口にもオムツ替え台有りのマークが付いているのを何回も見て、日本の育児もだいぶ変わりつつあるのかなと感じたり。

と、こうして体験を書き並べていくと、日本(少なくとも大都市では)の子連れのお出かけ環境は総じて、すごいじゃん!
子連れの友人と会った新しいカフェも、2階までベビーカーでも車椅子でも上がれるようにエレベーターが付いていた。なんだ、このユニバーサル化の進みっぷり! いや、どこも新しいからよけいにピカピカ素敵に見えて、感動すらした。これはやっぱりオリンピック・パラリンピック効果だよな~。東京オリンピック開催反対派だった私だが、この部分に関しては、なるほど恩恵もあるもんだと素直に受入れる。そういえば思い出したが、数年前にドイツのパラリンピック出場選手に取材で話を聞いたとき、日本の(少なくとも東京の)ユニバーサル化は、例えばどこにでもエレベーターがあるとか、ドイツよりも進んでいるよと彼が言っていた。なるほど、こういうことなのか、と実感する。

とはいえ、エレベーターが壊れているせいで階段の前で立ち往生しているベビーカーの親子へ周りの人たちがさっと駆け寄る風景は、ドイツでは当たり前のこと。地下鉄のホームから地上へ上がる階段の前で困惑している数組の親子連れに、筋肉ムキムキ強面のお兄さんが、順番に助けるからねといって、次々とベビーカーを持ち上げていったシーンに感心したことがあったが、そもそもベビーカーに限らず、大きなスーツケースと格闘している人などでも、老若男女に関わらず、手を差し伸べるのが日常茶飯事なのだ、この国は。

日本からの帰路、ドイツの空港から最寄りの駅までICE(ドイツの新幹線)に乗った我が家。子どもを抱っこ紐で抱えた夫と私がリレーで、4~5個のスーツケースやバッグを電車から降ろそうとしてたとき、僕は荷物がないから、とか、私が持ってあげるわよ、とまわりの乗客たちが次々と我が家の荷物を一緒に降ろしてくれた。そのすばやくさりげない連係プレーの手助けを見ながら、ああ、ドイツに帰ってきたんだなあと思った。
今回日本とドイツを行き来するにあたって、子連れの場合はどれだけ荷物を持っていくことが可能かを事前にインターネットで調べたところ、とある日本の掲示板の書き込みでは、子連れで大荷物は無理、他人の助けに頼るな、と厳しい意見が多かったのだ。外国では手を差し伸べてくれるのに、日本人は冷たい、と書き込んだ在外邦人の意見は、日本は日本、自己責任、などと批判の集中砲火を浴びていた。私もいまや在外邦人だが、日本に居たときでもそれくらいは手伝ったこともあったので、こんなところにまで自己責任の言葉を持ち出すとは、なんとまあ世知辛い社会になったなあと思った。

実際は日本でも手を差し伸べてくれる人たちはいるし、皆が冷たいわけではないのはわかっている。でもそうした衝突を避けるため、そして自助性を高めるためという狙いも、前述の親子サポートの施設やユニバーサルトイレなどの設置の増加の裏に実は潜んでいそうだ。自助はけっこうなことなのだけど、どうしたって他人の助けが必要なときはある。そんなときに自己責任、なんて言葉が使われないような、心の余裕をもてる社会であるかどうか。そこが問題の本質だよなあ、と、社会の発展を手放しで喜ばずに、ちゃんと見ておかなきゃね、と思うのは斜めに見過ぎですかね。オリ・パラリンピックを機会に、子連れだけじゃなくて、皆にやさしい社会をどんどん目指してほしいな!

そもそも無料の公衆トイレというものが断然少ないドイツ。とうぜんオムツ替えだって、専用の場所なんてなかなかありません。じゃあ皆どうしてるのかというと、必要に迫られれば、カフェの隅っこの椅子の上でやってたり、それを店側や周りのお客も当然容認します、というかせざるを得ない。またはそれがない店は子ども向けではないと認識するか、でしょうか。しばらく前に、近所の保育園の子どもたちが公園で遊ぶ中、保育士が一人の子どもをベンチの上に寝かせてそこでオムツ替えしてるのを見て、大胆だわ~、でもお尻寒そう、と思いましたっけ。そんな環境で育つ子どもたちも逞しくなりそうですが。写真は近所の地域センターの女子トイレに置いてあるオムツ替え台。このトイレは昨年改装されたのでキレイなのですが、この大きな枕みたいなオムツ替え台には既に染みが……。男子トイレには置いてなかったそうです。

新年最初の写真がこんなでは運気が落ちそうなので、こちらの写真も。ドイツになくて日本にあるものの一つ、クリームパン。そもそもこの日本のふわっと甘いパン生地がドイツにはないので(あるとしたらトルコ系など外国系のパン屋さん)、日本のパンってたまに食べたくなる懐かしの味なのです。つねづね、子どものぷっくりした手を見ていて、クリームパンに似ているなあと思っていたので、今回の帰省ではこの写真を撮ってみたかったのでした。くだらないオチでしめた新年最初の記事ですが、今年もどうぞよろしくお願いいたします!

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中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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