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 韓国で、「n番部屋」と呼ばれるデジタル性暴力事件が大きな問題になっているという。「テレグラム」というアプリを用いて、チャットルームで若い女性の性暴力動画を公開した事件だ。残虐な映像も含まれているといい、70名を超える被害者の中には、未成年もいる。

 チャットルームの運営者の男性は、女性たちの弱みを握り、恐怖心や罪悪感、スティグマを刺激して、女性たちに自ら画像をさらすように仕向けていった。おぞましいことに、被害者は「奴隷」と呼ばれていたそうだ。チャットルームは、会員を運営に巻き込んで組織化されていたといい、運営者は直接手を下すことなく、チャットルームは運営されていた。有料閲覧者は累計26万人とも言われ、運営者だけでなく閲覧者も加害者として処罰すべきとの声があがっている。厳罰や身元情報の公開を求める署名がのべ500万にのぼっているという。そうした社会の声を受けて、大統領や警察庁長官等が、性暴力への強い非難と、被害者支援の態度を表明した。

 チャットルームで起きていたことを知り、その被害/加害のむごさに言葉を失った。同時に、韓国国内で性暴力への非難を表す声がすぐさま上がり、有名人や公的な立場にある人が、性暴力の根絶や被害者への支援声明を出すことに希望を感じもした。これが日本だったらどうだろう。

 女性を性的に搾取することによって、男性が男性から金を取るシステム。男社会の中で回る金。男同士のコミュニケーションのツールのように扱われる女性という存在。女性を搾取することもまた、男同士のコミュニケーションの一部だ。ここでは、女性は、はじめから男性と対等な立場にはいない。悲しいかな、今に始まったことじゃない。そして、別の国の話なんかじゃない。たとえば、昨年、京都で、女性に声をかけて祇園のバーで高額な飲食をさせて借金させ、代金を支払えなくなった女性たちを性風俗店に紹介していたとして、主犯格が逮捕された事件。その手口はもとより、260人という被害者の多さと、加害者が大学生グループだったということが衝撃だった。「n番部屋」事件の運営者も24歳と若い。

 20年近く前、出会い系エロサイトのようなところに、わたしの情報が掲載されていたことがあった。最初は、ヘンなメールがたびたび来るな、くらいの感じで、特に気にとめていなかった。メールの内容は、性的な関係のお誘いのようなものだった。迷惑メールのようなものかと放置してしばらくたったとき、そのサイトを経由した1通のメールに、震えあがった。メールの送り主はわたしの知っている人で、そこには、わたしにあてた性的な揶揄や脅迫じみたことが書かれていた。びっくりして、おそるおそる調べてみたら、誰かがわたしになりすまして、そのサイトに登録していたようなのだった。そこには、わたしとは違う人の写真、しかも、ごていねいに異なる2人の顔と体を合成した明らかにヘンな写真まで載っていた。急いで削除方法を探したけれど見つからず、とりあえず、登録されていた名前を本名から変えて、生年月日も適当に変えた(生年月日を後からいじれるって、いったいどんなサイトなんだろうか…)。その対処が正しかったのかは分からないが、すぐに、くだんのメールは来なくなり、ほどなくしてサイト自体が閉鎖されたようだった。

 あのときの恐怖を思い出す。ネット上に、自分の情報が性的な目的で公開されることの気持ち悪さと怖さといったら!
 調べるうち、わたしと同様に、個人情報をエロサイトに掲載されて、「迷惑」している女性がかなりいたことを知った。女性たちの個人情報や、エロサイト運営のノウハウが売られていることも知った。性的なコンテンツはお金になる。

 情報をサイトに載せた人が悪いのだし、そこにアクセスして脅迫じみたメールを送ってきた知人だって、そのことがバレたら彼こそがマズイことになるわけなのだが、それでも、あの時わたしは、恐怖と罪悪感のようなものでいっぱいになった。何とかしなければいけないと、慌てた。そのことを警察や公的機関に相談しようという考えすら浮かばなかった(むしろ、相談しちゃダメだと思った)。1週間くらいは、不安で夜もろくに眠れなかった。「n番部屋」事件の被害者の恐怖や絶望感は、想像するにあまりある。

「n番部屋」事件は、自分たちと無関係な話なんかではない。盗撮画像がネットでばらまかれる、AV出演の強要、エロサイトへの写真の無断転載(たとえばテレビニュースで流れた小学生の体操場面から、女子生徒の股の部分が引き延ばされてアダルトコンテンツとしてエロサイトに載せられる!)、そして残虐AVの存在……。それらは、今この国で、日常的に起きていることだ。
 どんな性暴力も許されない。直接加害をしているのではなくても、そうしたサイトを閲覧しているのなら、性暴力を娯楽として消費し、直接的な性暴力を支えた、一人の加害者である。閲覧したことがなかったとしても、こうした暴力に無関心でいることは、加害行為を支え、被害者に対する非難を助長し、性暴力を許していることと同義だ。

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牧野雅子(まきの・まさこ)

龍谷大学犯罪学研究センター
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。 

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