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TALK ABOUT THIS WORLD ドイツ編 ウイルスとともに生きていく生活--ロックダウン第二段階に入るドイツ

中沢あき2020.04.21

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前回のコラム執筆は3月22日。その翌日からドイツでは外出制限令及び接触制限令が出されて早1カ月。この1カ月は、けっこうあっという間だった。そんなときは普通、何かしらやることがあって忙しくしているものだけど、今回は何をしていたのか、大きな出来事の記憶がない。毎朝子どもをベビーカーに乗せて公園や近くの森へ散歩に行き、スーパーなどへ買い物に行くのは1週間に1回くらい、夫と交代で買い出しに出かける。散歩と買い物以外はどこにも出かけてないし、夫と娘以外に人と会うこともほぼない。隣の家に住む友人一家におすそ分けを届けるときですら、マスクをしたまま立ち話もせずにささっと帰り、残りは電話で話をする。近所の知り合いに出会っても距離を保ったまま、またはベランダ越しに立ち話。保育ママが休業になってしまったので、私は再び育休状態に戻り、家事や子どもの相手で日中は時間が過ぎる。そんな単調な日々でも数週間はわりとあっという間で内心驚いている。

買い物はなるべく店に行かないですむようにと、それまではこまめに買っていた食料品などもまとめ買い。となると冷凍庫は肉やパンなどで、冷蔵庫も牛乳が2本入っていたりとパンパンで、いったいどこの大家族かと思う。どの店でも入店者の人数制限を行っていたり、レジなどに並ぶ際は前後の人と1.5から2メートルの間隔をあけなければならないので、当然のごとく行列ができ、それに毎回並んで待つのも大変だから、必然的に買い物から足が遠のいていった。

トイレットペーパーは相変わらず手に入りにくい。少しずつ入荷しているのか、入荷してもすぐにまた売り切れてしまうのか。ときどき買ったばかりであろうトイレットペーパーの袋を手にしている人は見かけるものの、我が家はタイミングが悪いのか、店内に並べられた品物をまだ見たことがない。スーパーの棚も同じくで、パスタや小麦粉や豆類などの棚は相変わらず空っぽのまま。こちらも入荷次第すぐに売れてしまうらしい。気がついたが、まとめ買いをしたいのは皆同じらしく、様々な食料品ががっぽりなくなっていくのだ。もともとドイツ人は週末に1週間分の買い物をまとめるのは知っていたが、それでもこんな商品の売れ方は見たことがない。そうそう、いまだに入手できないものといえば、ドライイーストがどの店でも見つからない。自宅におこもり中に手作りのパンを焼いているのか、考えることは皆一緒なんだなあと苦笑する。天気が良くなってきたからピザを生地から作りたかったのだけど、ある店の冷蔵棚のほうには生イーストがたくさんあったからそれで作ってみようか。

ドイツにとっての「連帯」

とまあ、人に会えないことと仕事がないこと以外は、そもそも我が家は在宅勤務が多いフリーランスなので、それほど生活は激変したという実感はあまりなかった。いや、変わったし、それはなんとも奇妙な生活なのだけど、やってみればそれなりに慣れるもんだ、という感じ。つらいとか怖いとかいう気持ちには今のところはなっていないのは、同居家族がいるせいもあるかもしれない。外出制限が始まる前ははどんなものかとドキドキしたけど、いざその生活を続けてみれば、買い物の際の面倒くささや友人たちに直接会えないこと、いつもだったら出かけているカフェに行けないとか、旅行に行けないとか、そういう不自由さはあるものの、思っていたより大変ではなかったのだ。その受けとめ方も、各個人の生活形態や性格によっても違うかもしれないけど、私のまわりは大方、しかたがないからね、と腹をくくってこの生活を皆受け入れていて、そこに大きな声で文句を言う人はいない。少なくとも、集団感染が起きていないドイツの大半の町では、暗く悲観的なムードはあまりないように思う。これがイタリアやNYのような状況だったらもっと違うのだろうが、思いのほかドイツでは人々がこの制限下の生活を受け入れて過ごしていると思う。

普段は個人主義の社会において、こんなにもいっせいにまわりと足並みをそろえる、というのはもしかしたら戦後以降なかったんじゃないだろうか。でもそもそも社会というのは個人の集まりで成り立っていて、ゆえに個々を尊重し合わなければそれは不可能になる、ということをこの民主主義の国では皆、学んできているので、そのための「連帯」というのは個人と相反せずに実現できるものなんだなと考えさせられる。


「接触制限令」部分的に緩和に

その数週間の接触制限/外出制限が功を奏したのか、ドイツ国内での新規感染のペースはやや緩やかになってきて、イースターが明けた後、それを踏まえて新たな対策方針が政府から発表された。

当初はイースター休暇明けの4月19日までとなっていたこの「接触制限令」、基本的に同居家族以外が集まることは禁止、不要不急の外出は避ける、2人以上が集まることは禁止、という内容は5月3日まで延長となったのは予想通り。しかし新たな方針として部分的に制限令が緩和されることになり、例えば、面積が800平方メートル以下の規模の店舗は4月20日から再開許可が下りる。中でも家具店やDIYショップが名指しされたのは、これから天候が良くなるこの季節、家のリノベやガーデニングに勤しむ人が多いからだろう。同じような理由で植物園や動物園も再開。図書館などのアーカイブ施設や美術館も再開だとか。人の心の健康も考慮する判断がドイツらしいなと思う一方、普段だって人が集まるような場所での接触制限をどう守るんだろう。理髪店も再開許可が出たのだが、こちらも1.5メートルの間隔をあけよ、という接触制限を守りながらとか、うーん、どうやって髪切るんだろ?

カフェやレストランなどの飲食店は人の集まりや接触を管理できないとの理由でまだ許可が出ず、サッカー・ブンデスリーガを始めとしたスポーツその他各種の大型イベントは現段階でも既に8月末まで開催禁止で決定になった。文化関係の仕事に絡む我が家にとってはなかなか厳しい状況だ。

休校措置についても、基本は5月4日以降に各学年ごとに段階的に解除を検討することになったが、連邦国であるドイツでは州ごとにその対応内容が違ってくる。例えばバイエルン州では5月11日以降となったが、我が州では夏休みが6月後半から始まってしまうため(ドイツは学校の夏季休暇期間も州ごとに違う)、前倒しで始めるらしい。さらにこの時期、ドイツでは毎年アビテュアという大学進学資格を得るための試験が行なわれるタイミングで、これはその後の人生を左右するくらい大切な試験であるため、これをどう行なうかがずっと各州で議論されてきていた。今回の緩和措置を受けて、我が州では4月24日からまずはその該当学年から授業を再開するそうだが、低学年の登校や保育所の再開は5月4日以降も、小さい子どもたちの衛生管理の難しさを考えると厳しいだろうとみられている。となると、我が娘が保育ママのところにいつから行けるようになるのかもわからなく、ため息が出る。

これらの緩和措置は接触制限が守られることや衛生管理がきちんと保持されることを前提に許可が出るため、実際には以前と同じ状態で業務ができるわけではないのだ。家具店のIKEAもウェブサイトで、再開許可は出たが店内の衛生管理体制をしっかり整えるまでは、店内営業をいつ再開できるかわからないと発表している。

 

マスク着用はドイツ人にとっては本当に大きく新しい出来事

こうした衛生管理の方法の一つとして、いよいよドイツでもマスク着用が本格的に検討され始めた。すでにイースター前の段階で、店舗での買い物や公共交通機関の利用にはマスク及びスカーフなどで口と鼻を覆うことをテューリンゲン州イエナ市が義務づけていたが、4月17日にはザクセン州が州全体でこれを義務づけた。先の緩和措置発表の際、メルケル首相の説明でも、義務ではないが推奨するとされたマスク着用。義務にできないのは、それでマスクの買い占めが起きて医療機関での不足が引き起こされないようにという懸念と、もう一つは、顔を隠すという行為がアイデンティティを阻害すると考えている文化の中で、本来は個人的な判断とすべきことを義務とするのは人権侵害に触れる可能性があるので慎重に、というドイツらしい側面もあるんじゃないかと思う。

とはいえ、マスクをつける人はこの数週間で本当に増えた。マスクしている人なんて、ドイツでは今まで見たことがなかったのだ。以前ドイツに遊びに来た私の父が、乾燥している空気で喉を痛めたくないとマスクをして散歩に出かけたのを見て、「言いにくいんだけど、あれつけて出ると不審者と疑われて危険だからやめたほうがいいよ」と夫が苦笑していたくらいだ(結局、私と母で説得してやめてもらった)。

ドイツでも医療用はもちろん、その他のマスクも売り切れ続出らしく、最近はいろんな柄の手作りマスクをしてる人も結構多い。リスクが高いと言われている高齢者はもちろん、いまどきの格好の若い子たちもいろんなマスクを、さらにはゴム手袋もしている人も結構いる。手作りマスクの作り方がネットで公開されたり、同じく布マスクをカラフルなデザインで作って提供するオンライン販売も盛んだ。かくいう私は何年も前に東京で買い込んできたマスクが手元に残っていたので、これ幸い、やっと花粉を防ぐ目的でもおおっぴらにマスクができるわ、と毎日の散歩にまでかけていっている。

その他、教会の礼拝なども禁止、旅行はおろか、日帰りで親類を訪ねることすら禁止である。つまり国内移動は先の不要不急でなければダメ。ましてや国外なんて、まだ入国制限や厳戒な国境管理下ではほぼ無理である。となると在外の外国人である私たちは、このタイミングで故郷の家族、特に高齢の親に何かあってもすぐに帰れないという状況で、なんとか無事でいてほしい、と願うばかりだ。

オンライン配信、再度のブームに

カフェもレストランもクラブも閉鎖というこの状況においては、すでに日本でもウケつつあるという、オンライン飲み会やパーティーにハマる人が多いらしい。近所の友人家族の娘はバレエのレッスンをオンラインで継続、音楽教師の友人もオンラインレッスンで授業を続けている。その他、料理のワークショップだとか、瞑想コースだとか、様々なものがオンラインで配信されていて、動画配信は再度のブーム。かくいう私も、3月末に予定されていた隣の市でのグループ展覧会へ参加する予定が、直前に外出制限令が出たために現地まで行くことが難しくなったのだが、リーダー格の人が、こうなったら動画配信で展覧会をやりましょ、と指揮をとり、市内在住で現地へ向える人は設置して作品を事前に撮影、行けない人は自宅のガレージなどに設置したものを撮影して動画を準備、私も以前撮影していた素材をもとに新たに作品紹介の動画を作成して、と数日の間に皆がそれぞれのパートを準備し、オープニングの日には技術チームを担う人たちがすべてをまとめて「ライブ放送」っぽく配信する、と、なんとか展覧会を成立させた。各種の文化イベントが中止せざるを得なかった中で、観客が来られなくてもなんとかできることを、と引っ張ってくれた中心チームの決断力と行動力、そして一緒に動いた皆の連帯にも「ドイツらしさ」を垣間見た。

そしてその展覧会の配信が終わった後は、ZOOMを使って打ち上げミーティング。皆それぞれ自宅でワインやビールのグラス、またはお茶のマグカップを手に、成功おめでとう?! と笑いあったのはちょっと奇妙で楽しいひとときで、本当にどこかの居酒屋で打ち上げしてるみたいだった。

来る5月には、私が毎年関わっている国際短編映画祭が予定されていた。が、この状況では当然、いつもの形では開催できないと3月半ばの時点で早くも決断。とはいえ中止ではなくて、今回はオンラインでなんとか開催するんだと、現在数百本の短編作品がオンライン配信用に準備され、またいつものように上映後に行われる監督の質疑応答も配信すべく準備中だ。

と、ここまでがドイツのロックダウンの第一段階。いつまでもこのままじっとしているだけではいられないので、段階的に制限を緩和し、新しい衛生管理の方法など(マスク着用はドイツ人にとっては本当に大きく新しい出来事なのだ)を取り入れ、新しい段階を始めていくのだろう。もちろんそれは試験的にという側面もあって、感染率がまた上がれば、再び厳しいロックダウンに入るだろう。いまだワクチンも決定的な治療薬もいつ出てくるかわからない中で、ウイルスとともに生きていく生活が始まる。そしてその生活は数カ月、数週間毎に変化していくことだろう。その変化が明るく良いものであることを心から願う一方、もしかしたらこれは、今までとまったく同じ生活に戻る、つまり元通りになるという未来はないんじゃないかと思っている。でもそれが明るい未来であることを願いつつ、私たちはこの一歩を慎重に踏み出さなければならないのだった。


©Aki Nakazawa
道路脇に立つ電光掲示板。普段はコンサートや展覧会の情報だったり、各種の広告が掲示されている所も、今では新型コロナウイルスの情報ばかりになりました。上からそれぞれ、市当局からの「新型コロナウィルスの最新情報はこちらのURLで」、ドイツテレコムの「家に居ましょう。常に情報を聞きましょう」、メルセデスベンツの「すべての救いの天使たちに感謝を(医療やインフラ分野、スーパーなど、この時期に社会のために外で働かなければならない人たちを指す)。皆さんもご自愛ください」など、行政も民間企業も揃って呼びかけています。

 

©Aki Nakazawa
祝日の朝とはいえ、赤信号が意味をなさないほど、ここまで車も人もまったく通らない風景は見たことがありません。「なんだかまるでSF映画のようだね」と夫がつぶやいていました。

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中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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