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『フラワーデモを記録する』発売されました。

牧野雅子2020.05.01

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フラワーデモが始まって1年がたった4月11日、『フラワーデモを記録する』(フラワーデモ編・エトセトラブックス) https://note.com/etcbooks/n/nebf6cd256ee7 が出版された。寄稿しているからというわけではないけれど、わたしにとってもとても大事な1冊だ。

いくつかの会場でスピーチをし、フラワーデモの主催側としても関わって思うのは、フラワーデモという「場」の力のこと。プラカードを掲げて立つことで可視化される性暴力への抗議。「場」が語りを受け止め、次の語りを促し、引き継いでいく。通りすがりを装ってスピーチに耳を傾けることも可能なら、遠くから見ているだけでもいいし、暗闇にまぎれて離れていくこともできる、今月は行けなくても来月がある、そんな「場」。

この本には、ジャーナリストの河野理子さんも寄稿されている。そこには、河野さんが1996年に担当された新聞連載「性暴力を考える」についてのことが書かれてあった。わたしはその連載を、心がきしむような思いで読んでいた。
1996年といえば、犯罪被害者支援の気運と、性暴力に対する問題意識が高まりつつあった頃だ。当時の強姦罪(現在は強制性交等罪)の法定刑は「2年以上の有期懲役」だった(後に「3年以上の有期懲役」になり、現在は「5年以上の有期懲役」)。この頃の男性誌には、13歳未満の女子とうっかりやっちゃったら、いくら同意があったと主張しても、強姦罪で懲役2年以上という厳しい刑に処せられるから注意せよ、なんてことが、フツーに書かれてあって驚く。懲役2年で厳しい? っていうか、13歳だってまだ子どもだろうよ! 同意も何もないわ!! と読みながら怒りで震えるが、当時はそういう時代だったのだ(今はどうなんだ、という疑問はさておき…)。
「性暴力を考える」は、時代が変わりつつあることの象徴のように思えた。新聞記事を切り抜いて、何度も読み返していた「当事者」が、ここにいる。なんだか、かつての自分に再会したような気持ちになった。

被害者や被害者をめぐる状況は明らかに変わっている。当事者が声をあげ始め、社会もその声に耳を傾けるようになった。
『フラワーデモを記録する』の中にも書いたことだけれど、被害経験のある女性たちが、性暴力に甘い社会を放置してきた責任を自ら背負おうとしている。これくらいたいしたことじゃないと自分に言い聞かせて、加害者の責任を問うことをしなかった。セクハラだと問題にしていれば、社内で何らかの対策がとられて、後輩たちは同じ思いをしなくてすんだかもしれない。こんな時代は終わらせなければ――ああ、こうやって、女性運動が社会を変えてきたのだと、いまさらながらに思うのだ。

一方で、男性は変わっただろうか? 「男性」とひとくくりにすることの問題を承知で、それでも問いたい。男性は、性暴力について、自分のこととして考えているだろうか。
基地と性暴力を問題にする集会の後で、参加されていた男性から、日本では性犯罪は厳しく扱われているのに基地の中はうんぬん、という話を聞かされたときのことを思い出す。基地と性暴力の問題に関心のある人ですら、日本の刑法や法システムが、性暴力に甘く、被害者にとって負担が大きいということには考えが及ばない。それどころか、性犯罪者は厳しく罰せられているという認識だとは。
一見、性暴力に抗議しているふうでいて、普段は女性に対してあからさまにマウントをとっている男性たちがいる。性暴力加害者を非難しながら、性犯罪者にレッテルを貼って区別をし、自分は彼らとは違うというアピールをしているだけの人たちもいる。性暴力被害を語る場ですら、議論は男性主導で進むのが当然だと思っている人たちがいる。性暴力被害者支援に関わっていることを、人が集まる場でここぞとばかりに誇示して、自分の評判を上げるために被害者を利用しているのではないかといぶかりたくなる人たちもいる。
性暴力で振るわれる力は、こうした場面の力の振るい方ととても似ている。

社会が被害者の声に耳を傾けることを言われる昨今だからこそ、言いたい。加害行為がなければ、被害者は生まれない。被害者が声をあげやすくなって、被害者の保護が実現すればそれでよしなんてことはない。

最近もこんなことがあったばかりだ。10代の女性たちを支援している団体に「視察」に来た議員が、配慮に欠けた態度の上にセクハラ行為に及ぶ。ある芸人が、ラジオ番組で、コロナ問題で困窮した女性たちがいずれ風俗勤めをするようになるから、それを期待して今の状況を耐えようとリスナーに呼びかける――自分の知名度や力を、女性たちの苦境につけ込んで搾取し利用することに使っている。彼らにとって女性は、自分の都合のいいように扱っていいモノか何かなのだろうか。尊重すべき生身の人間として見えていないのだろうか。


*『フラワーデモを記録する』の利益はすべて、今後のフラワーデモおよび、性犯罪刑法の改正を求める被害者当事者団体Springの活動に充てられます。
※ラブピースクラブでも販売しています。コチラから

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牧野雅子(まきの・まさこ)

龍谷大学犯罪学研究センター
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。 

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