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初夏のソウルを映像でみながら、あの街の風に追いつきたい。

北原みのり2020.05.05

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鈴木はなさんの「よく話してくれる韓国のお姉さん」に一日に120万件のアクセスがありました。ラブピサイトの監視をして下さっている会社から「異常なアクセスがきている、攻撃と考えていい」と報告を受け、カッ!ときて、「韓国のこと書くといつもこれだよ! だまらねーぞ!」といった攻撃的なツイートをついしてしまったのですが、もしかしたらこれはいつもの攻撃ではなく(韓国に対して好意的なことを書いたときにアクセスを集中させられサーバーが落ちたことがあります)、日本に暮らす女性たちのパニックを正確に表している数字だったのではないか。数日経ち、そう考えるようになりました。

日本の韓流人口は100万は下らないでしょうし、緊急事態宣言が出てからずっと「愛の不時着」がNetflixで10位以内、昨日は確か1位になっていたし・・・。なにしろ、はなさんの原稿には、ソウル市内での新感染者がもうゼロであることや、街が通常通りになっていることに加え、政府が今後二年間の生活のガイドラインを発表したことが記されていました。そこには、今後二年は海外からの渡航が厳しく制限されるという、絶望的な事実が記されていて・・・私は、これを読んだ時に、文字通り、息をのみ、気がついたら過呼吸気味になってしまったんですよね。

ちょっと待って、私、これから二年、韓国に行けないの? この国に閉じ込められるの? 収束の気配はゼロだし、しかも政府から「いただいた」ものは、安全・安心・希望という未来ではなく、どんな会社が輸入したのかもよくわからないミニマスク二枚(しかもまだ届いてない)・・・という絶望の中で(あ、10万円もありましたけど、、、いつ入るかわからない)、韓国への切符も手に入らなくなるのだとしたら、どう生きればいい? ねぇ、どうしたらいい? 愛の不時着、させてください。あああああああっ! とパラグライダーを背負いかけた女性が、120万いたのではないか。

というわけで、私は翌日はなさんにLINEして、韓国の今のこともっと聞きたい、街の雰囲気の写真や動画をみせて、と頼みました。で、実現したのが今日のオンラインでの「よく話してくれる韓国のお姉さん」(「愛の不時着」のソン・イエジン主人公のフェミドラマ『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』からいただいたタイトル)です。参加されなかった方のために、今日、はなさんがレポートしてくれたことを記しておきます。

韓国の街の風景は、完全に通常営業。
マスクをしている人がほとんどではあるけれど、百貨店のフードコートも賑わいを見せている。そもそも百貨店もレストランも、テーブルの間隔あけるなど営業に気を配っていたが日本のように完全閉店はしていなかった。
ソウルは今日初夏の陽気、弘大、新村には夏の装いの若者たちで溢れていた。地下鉄では、マスクとアルコールが無料で配られており、マスクが買えないという状況そのものが想像できない。もちろん今の時点でマスクを国外に輸出することは禁止されており、誕生日の奇数・偶数でマスクを購入できる日を分けたりなど工夫はしているが、手に入らないという状況ではない。アルコールはどこでも売っている(え? 日本ってアルコールないんですか? と、はなさん、目が点になる)。
韓国ではもうすぐ全ての学校が再開される。もちろん、閉校の間も通常通りオンラインで授業が行われていたので、授業の遅れはない。
国際空港は閑散としており、海外からの渡航者、帰国者はPCR検査を受け14日間の隔離が求められる。その間は、行政から一日に二日電話で様子を確認され、隔離後は「ごくろうさまでした」と政府から果物や食べ物が段ボール一箱分届けられる。この隔離期間が韓国の選挙とあたった人は、隔離者専用の投票所に行政の人のつきそいで行けたという。
韓国は徹底的にPCR検査をしてきた。少しでも不安があれば検査を受けられ、というか、むしろ受けることを推奨されてきた。例えば不法滞在者に向けても、「摘発しないので検査を受けてくれ」、と政府自らアナウンスし、不法滞在者を雇用している雇用主にも、検査に協力することで罰金を免除するなどの処置をとった。
韓国で医療崩壊のニュースは聞いたことがない。PCR検査が受けられず、死後に感染が確認されたという事例は信じがたい。医療現場がどれだけ大変だったかということは今、ドキュメンタリーとして流されているが、「過去」の話としての報道だ。
毎朝、政府から新情報が発表される。その発表をみるのが日課になった。政府の情報に対して信頼がおけるし、発表の内容にちゃんと「意味」があるので、必ず見る。先日(日本が緊急事態宣言を延長した日)、文在寅大統領は、コロナを収束させたことを発表する一方、冬季の再発に備え、呼吸器系の病院を全国に1000件設置することを宣言した。
今は、人が普通に溢れすぎていて、少し心配だ。でも、何があっても、韓国政府の対策に人々が信頼をよせているのが分かる。
先の選挙は66%の投票率で文在寅政権が圧勝した。人の命を救う政権を「民主革命」で生み出し、そして持続させる、韓国の民主主主義の力を感じる。

 

・・・政治が違うとここまで違う、ということを思い知らされるレポートでした。途中、視聴者から日本への絶望や、「日本にいると布団の上で死ねればいい、、、という気持ちになる」という笑えない感想など・・・次々に送られてきました。

それにしても驚くのは韓国政府が、不法滞在者に対しても「摘発しないからとにかく検査受けて!」とする姿勢です。とにかく命優先、事実優先、解決優先で、どんどん検査させていく。ゴム付の布二枚しかもらえず、給付金もいつもらえるのか分からず、事実が全くみえないような社会を生きている者からすると、自分の状況が可哀想過ぎて聞いているうちに笑ったり(←意味わからなくなるとこういう反応になるのだと思う)、泣いたり(←我に返って、悲しくなる)、大変な気持ちになってしまいました。

日本で最初の感染が確認されたのは1月16日、韓国よりも4日も早かった。それなのに、ここまで違いが出たのは・・・多分、なにもかもが間違っていたから。という可能性を考えずにはいられません。「間違っていた」というのが強ければ、何もかもが「韓国とは違っていた」と言い換えましょう。

韓国はPCR検査をできるだけ行い、陽性の人を手厚く隔離してきた。
日本はPCR検査をできるだけ行わず、クラスター潰しにやっきになってきた。

オンラインが終わった後にふと気がついてはなさんに「クラスター」について聞いたのですが、この言葉を韓国語で聞くことはあまりない、意識したことない、ということでした。また感染症を専門に学んできた友人によれば、クラスター潰しにやっきになっているのは日本くらいなのではないか、と言います。クラスター探し・潰しなど本当は意味なく、とにかく感染者を見つけて隔離、それしか疫病対策はないのだというのが合理的な判断だとか。あと三密とかもね。あ、三密いいね、壇蜜っぽいしね、とかそういう冗談交じりの会議で決まったのではないかと首をかしげたくなるような、ただのかけ声で、何が守られるというんでしょう。

「三密」を唱える一方で満員電車は規制もせずに、「第三次世界大戦だ」と勇ましいことは言うが第一次世界大戦以前の牧歌的スピード感で、大阪の知事や市長の「維新アピール」「男オレ様偉大感(そこはかとない性差別意識剥き出し)」が特定の職業をいじめ抜く様や、陽性判明した後に犬の世話のために移動した女性に対し公共の電波が批判の矛先を向ける暴挙。これは、私たちが、平気で嘘をつき、経済優先で原発を再稼働させ、沖縄の声を封じ、アメリカから武器を買いまくるような政治を放置してきてしまった結果なのでしょう。病気だけでなく、政治によって、命の重さが変わる、生きられる命も生きられないことがある。そういうことを、こういうギリギリの状況で突きつけられた。

初夏のソウルの街並みを映像でみながら、何度も何度も訪れたあの街の匂いや風を記憶のなかで再現してみる。しばらくはこんな風に記憶を調整しながら、隣の国が、人の力で政治を変え、民主主義を育てている力に追いつくための時間だと思いたい。それこそが、私たち自身の命を救う行為そのものに違いないのだから。あの街の風に、あの国の風に、追いつきたい。

以下の動画はオンラインイベントの中で紹介したものです。日本から韓国に帰国した韓国人男性の「隔離」生活のレポートです。

 

 

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北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めて、女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)など。佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・最新刊は香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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