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バルコニエンでバカンスを――今年のドイツ人の夏休み――

中沢あき2020.08.11

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よく知られた話だが、ドイツをはじめ、欧州各国の夏休みは長い。そしてその長い休みを存分に楽しむために、ドイツ人たちは休みが始まると旅行に出かけていく。この夏休みの旅行はドイツ人にとってはとても大切な習慣で、このために一年間頑張って働いているといっても過言はでない。夏の旅行はどこへ行くか、どこに行ってきたか、というのはこの時期の話題のトップであり、山へも海へも、国内へも国外へも、皆たっぷりと時間をとって出かける。

とはいえ、今年はこのコロナ禍である。3月から5月まで外出制限策が敷かれていたドイツ、そして周辺国でも、6月から始まる夏休みの間は制限をどうするのかが大きな議題だった。しかし制限策で大打撃を受けて息も絶え絶えの旅行・観光業界を救わねばならないし、数カ月の間家に閉じ込められていた(といっても散歩や買い物目的での外出はできたけど)国民の心の鬱憤を発散させないと、これもまた大問題になる。というわけで、各国ともにバカンスシーズンに合わせて制限緩和を進め、欧州内であれば旅行にもいけることになった。その解禁直後、スペインのマヨルカ島(日本人にとってのハワイみたいな人気リゾート地)への飛行機が満席状態になった写真が新聞に載り、本当に行きたくてたまらなかったのねえ、驚きあきれた知人がつぶやいていたが……。

ということで今年も飛行機や車で旅行に出かける人が半数、もう半数は、やはり感染の可能性を危惧して旅行はしない、というのが私の周囲の現状だ。7月の終わり頃にミラノの友人から来たメールによると、彼女たちは気をつけながら旅行をすると決めたものの、イタリアでは多くの人が今年は旅行をしないそうだ。なぜならウイルスについての不安だけではなく、失業したり収入が減ったりして旅行をする経済的余裕もないからで、しないというよりできない、ということか。

では残って旅行にいかないドイツ人たちは何をしているのかというと、慎重に家や近場でおとなしくしているのが一番と、地元にとどまりながら楽しむ工夫をしているようだ。自宅の庭やレンタルガーデンの手入れをする人、近場の森や湖に出かけるとか、まあそれなりに楽しみはあるもの。

そんなコロナ禍の事情で登場したトレンドワード「バルコニエン(Balkonien)」。バルコンとはバルコニーのことで、ニエン、というのは、意訳すると国、となるだろうか。調べると、バルコニエンは空想上の休暇のための国、すなわちバルコニー国ということだそう。そのバルコニー国での休暇のアドバイズ! という記事もたくさん出回っている。

いわく、旅行に出かけなくても、自宅のバルコニーでこんなに素敵に過ごせるよ、という話なのだが「旅の持ち物の準備とか予防接種とか考えなくていいし、お金は節約できるし、環境にもよいし、それに自分の好きなものを簡単に揃えられるのは自宅ならでは!」なるほど。

バルコニー国での休暇の準備はまず、自宅のバルコニーやテラスの手入れをすること。緑あふれる空間にするべく、植物や花を植え、素敵なガーデンチェアやテーブルを揃えるのもいい。ランプやランタンを下げたり、ハンモックをつり下げたりするのもオツなもの。暑さ対策でパラソルもお忘れなく。ちなみに我が家も今年は小さなパラソルを買い、ゴザを敷いた上でおやつの時間を楽しんでいるが、近所の友人たちも「今年はパラソルやサンシェードを買わなくちゃ」と言っていた。もともとガーデニングが一般的な趣味であるドイツのDIYセンターでは春夏の時期にこうしたものが揃うのだが、今年は外出制限のせいでガーデニングにいそしむ人が増え、DIYセンターは再開許可がすぐに下りて大盛況、売り切れている品もあるほどだ。パラソルなどのほか、子どものいる家庭向けにビニールプールもよく売れているらしい。

自宅にいても「休暇」を楽しむコツはそのほか、洗濯掃除などをなるべくしないですむように休暇前に部屋の整頓をしておく、届いた郵便物をチェックしないですむように郵便物の保存管理サービスを頼む、仕事はタブーなのでメールも電話も禁止、用事の予定はできるだけ入れない、ときには贅沢に近所のレストランのコースメニューのテイクアウトを注文する、自宅のバスルームでスパタイム、とにかくダラダラする、好きなことだけをする、何か新しいことや学びたいことをしてみる、などなど。

いいね、これ! 我が家は子どもがいるのでそこまで自分のペースでは動けないが、休暇のタイミングをずらした保育ママが再来週から数週間の休暇を取るので、その間は私も仕事はできないとあきらめて、いっそダラダラしてみようか。ごはん作りもレトルトやデリバリーを活用してみようかな。

というわけで私がもくろんでいるバルコニエン休暇のプランはそのほか、仕事をしないぶん、久しぶりに読書や映画鑑賞ができるかな、子どもを自転車に乗せて森や湖へサイクリングに行こうかな、イタリアを始めとした異国の食材店でいろいろ買って食べて楽しもうかなとか、けっこう楽しみはあるもんだ。あとは暑すぎず寒すぎず、さわやかな天気に恵まれることと体調を崩さないこと。それでいい夏休みが過ごせるだろう。ちょっと気分が上がってきたぞ。

写真1と2
©Aki Nakazawa
湿気の少ない気候のドイツでは、パラソルやサンシェードで日陰を作れば暑い夏でのなかなか快適に過ごせます。

写真3
©Aki Nakazawa
バルコニーのインテリアもまた人それぞれ。これは以前訪れた知人のなかなか個性的なバルコニー。でも今年は残念ながらお邪魔することはむずかしそうです。

ちなみにこのドイツ語のバルコニエンでの休暇、英訳はstaycationと出てきました。最近、日本政府が言い出したステイケーションってこれなんですね。日本の8月は猛暑の盛りで大変だと思いますが、皆さまもどうぞよい夏休みを! 楽しくのんびり過ごして免疫力をあげましょう!

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中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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