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 2021年3月19日と22日に参議院の内閣委員会と厚生労働委員会で2人の女性議員が「中絶薬」について質問をした。もちろん、こんなことは日本では初めで、いよいよ中絶薬の認可に向かっていくという実感が湧いてきた。

 政府の答弁によれば、現在、国内外1社ずつ、治験が第3相(最終段階)まで終わっており、この後、「追加検査」をする予定になっているという。それが終われば、各社が承認に向けて厚生労働省に「申請」するわけだが、女性議員たちはすみやかに承認するよう求め、とりあえず前向きの回答を得ることができた。

 私の関わっている国際セーフ・アボーション・デーJapanプロジェクトでは、薬の価格や取り扱い方法が決まってしまう前に声を上げようということになり、声明文を出した。

 「中絶薬」と一般に言われているが、実際には流産を引き起こす薬なので、自然流産が完全に終わらない場合に(不全流産、稽留流産とも呼ばれる)の後処理にも使われる。実際、現在承認に向けて手続きが動いている韓国では「流産誘発剤」と呼ばれているそうだが、同じ「ミフェ+ミソ(ミフェプリストンとミソプロストールのコンビ薬)」のことである。

 私の調べでは、現在、この「ミフェ+ミソ」は世界77ヵ国で使われているようだ。OECD加盟国37ヵ国を先進国とみなすことがよくあるが、単純にOECD加盟国を除いても40ヵ国となり、全世界で中絶薬を承認している国々の過半数は非OECD国=開発途上にある国だと分かる。非OECD諸国で中絶薬が承認されていないのは、サハラ以南と呼ばれるアフリカでも最も開発が進んでいない貧しい国々や、ムスリムの中東諸国、ブラジルなど南米のいくつかの国々で、いずれも女性差別がすさまじい国ばかりだ。

 一方、いわゆる「先進国」とされるOECD諸国37カ国のうち中絶薬を認可していないのは、スロバキア、トルコ、ポーランド、韓国、日本の5ヵ国だけ。これら5カ国のジェンダーギャップ指数を比べると、ポーランド40位、スロバキア63位、韓国108位、トルコ130位で、トルコ以外は日本の121位より上位にランキングしている(2020年のランキングで)。

 このうち、韓国は堕胎罪撤廃運動が功を奏して、今年1月1日から中絶を規制する法がなくなった。現在、中絶薬導入への手続きが進行中である。

 ポーランドは、宗教右派政権のために、世界で最も中絶に対する規制が厳しい国としてここ数年にわたり世界中から注目されてきたが、2021年1月に中絶に関する法律が変わり、国内で唯一残っていた合意要件が撤廃されたことで、基本的に中絶が全面禁止されてしまった。そのため、コロナ流行の最中であるにも関わらず大規模なデモが繰り広げられ、暴力的な制圧が行われている。

 トルコ政府は、法的には中絶が許されているのに、2012年に医師の中絶拒否権法案が打ち出され、法律は成立しなかったにも関わらず、「医師の拒否権」の考え方が国中に広がり、独自にルールを作って中絶を受け入れない医療施設が増えてしまった。さらに大統領が女性に対する暴力の防止と対策を定めた欧州評議会の「イスタンブール条約」から離脱すると発表して、この3月大型の反対デモが行われている。ちなみにトルコは、日本同様、中絶を受けるのに「配偶者同意」が必要な数少ない国の一つである。

 スロバキアでは、2020年に中絶規制を強める法案が出されたが、激しい反対運動の末に、59票対58票の僅差で否決された。また、法的には妊娠12週まで女性の自由意志で中絶を受けられることになっているのに、中絶薬を認可していないがためにコロナ禍で中絶が受けられない女性たちが続出し、人権問題になっている。

 OECD諸国のうち中絶薬が未承認の他の4ヵ国の状況は厳しいが、それぞれの国に女性の権利を保障するための運動があり、女性の権利を締め付けようとする政府に対して国民が反発しているという対立構図が見られる。日本では中絶を合法化せよ、中絶薬を承認せよ、という声がまだまだ小さい。

 日本は低用量避妊ピルの承認に何十年もかかったという嘆かわしい前例のある国だ。中絶薬の治験が終わったというだけでは、全く安心できない。厚生労働省によれば、治験は無事に終わったけれども「追加検査」を行うことになっているという。いずれ日本だけが取り残されるのではないかという、一抹の不安がよぎるのは、私だけではないだろう。声を上げていこう。上げ続けていこう!

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塚原久美

塚原久美(つかはら・くみ)

中絶問題研究者、中絶ケアカウンセラー、臨床心理士、公認心理師

20代で中絶、流産を経験してメンタル・ブレークダウン。何年も心療内科やカウンセリングを渡り歩いた末に、CRに出合ってようやく回復。女性学やフェミニズムを学んで問題の根幹を知り、当事者の視点から日本の中絶問題を研究・発信している。著書『中絶問題とリプロダクティヴ・ライツ フェミニスト倫理の視点から』(勁草書房)

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