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TALK ABOUT THIS WORLD ドイツ編 検査センターか接種センターか 社会を分断しかねないワクチンの話

中沢あき2021.05.20

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先週のこと、近所の交差点を通りかかったらある看板が目についた。
「ドライブイン-コロナ簡易検査へはこちら」
ほお、こんなところに。ドライブイン式の検査所がドイツの登場したのはちょうど1年前くらいだったろうか。まだ検査にも時間がかかってややこしかった当時、とにかく手軽に安全にできるようにと南ドイツのほうで設置されて話題になっていたっけ。なのでなんだか今さら感があるが「予約不要」と書かれたその看板通りに道を入ると、ガソリンスタンドの隣に位置する、半年くらい前に更地になったところにポツンと立ったテントの中で、防護服を着た担当者が待っているのが見えた。

3月半ば頃からドイツでは、スピードテストと言われる簡易検査が週1回、無料で受けられる政策が始まった。その他にも、小中学校では登校時に校内で簡易検査が週2回、教師にも生徒にも義務付けられ、各企業にも出社する従業員に簡易検査を受けさせることが義務付けられた。自分でできる検査キットもスーパーやドラッグストアなどで3〜4ユーロで購入できるほか、これまで市内各所にあった検査所だけでなく、家庭医や薬局などでもこの簡易検査ができるようになった。

専門の検査所や医院などで行われるPCR検査では鼻や喉の奥深くをぬぐられ(結構痛い)、費用も自己負担で7000円ほど、検査結果が出るのも1日かかったりするのだが、この簡易検査は抗原検査と言われるもので、鼻の中を浅くぬぐい、その拭った棒をを小さな専用の筒に入った検査液の中に浸し、その液を付属のスティックの採取口に垂らすと、15分後までにはそのスティックに、陰性であれば線が1本、陽性であれば2本浮き出てくる、という仕組みで妊娠検査薬に似ている。自分でできる簡易検査キットもこれと同じものなのだが、検査所に行き、健康保険証を提示してやってもらうと、週1回までは無料、検査後30分くらいでスマホに陰性証明と共に結果通知が届く。

現在のドイツの措置では、この陰性証明の提示で生活必需品以外の店舗への入店や美容院への入店が許可される。ただし5月の10日からは、ワクチン接種が完了した人や過去6カ月以内に感染して回復した人はそれらの証明書を代わりに提示すればよいことになった。って、自分で書いていて気がついたが、結局は何らかの証明書がいるんだな……。毎回検査を受ける手間はなくなったということだが、まだ公の場でのマスク着用義務はあるし、実のところはそれほど大きく変わったことはないのかも。

とはいえ、この「ワクチン接種完了者と既感染者についての制限免除」という言葉はドイツの人たちには大きく響いたらしい。ワクチンを接種すれば、また他の人と集えるようになる(実際にはまだ接触制限は完全には解除されていないのだが)、旅行にも行けるようになる、という以前の自由への帰り道が開けてきたとマスコミも大きく報道するし、最近のニュースは、ワクチン・キャンペーン、イケイケドンドンの様子である。

一方で、そのワクチンそのものをめぐる情報はいまだに二転三転、錯綜中だ。制限免除は結構だが、ワクチンや実際の感染で獲得した抗体がどれくらい持つのか、まだ確定した情報は出てきていないし、仮に6カ月としたとして、では6カ月後はまたワクチンを接種するのか? その時は以前と同じ種類のワクチンでなければならないのか、今後の情報が出てこない。うーん、こんな状況でさらにEU内でワクチンパスポート発行とか、本当に運営管理できるのだろうか?

ワクチン接種に際しての副反応についての情報も何度も変わる。欧州内ではアストラゼネカのワクチンでの血栓発生のリスクが大きく報道され、ドイツではその後、アストラゼネカを避けたい人が続出してワクチンが余ってしまう、という状況がでた。一方で、日本ではすでに40人近くにのぼる接種後の死亡例が報告されているファイザーのワクチンの副反応についてはドイツでは報道が出てこないのだが、実際には他社と同じくらい副反応や死亡例の報告はあるという。これはEU脱退した英国に対する当てつけのネガキャンだ(アストラゼネカは英・オックスフォード大が共同開発)と数カ月前に在英のジャーナリストが指摘していたが、ドイツ政府の二転三転の対応を見ると、なきにしもあらずかなと思ってしまう。なのにEUはアストラゼネカが契約通りにワクチンを供給しなかったとして提訴しているし(余ってたんじゃないの??)、今度はアストラゼネカのワクチンが足りなくなってしまい、2回目の接種を予定通りに行えなくなると問題が発生しているそうで。

さらに昨日のニュースでは、一時は60歳以上のみに限定されていたアストラゼネカやJ & Jのワクチンを、医師の判断のもと、以下の世代にも接種可能と政府が発表したそうだ。あれ? 当初は高齢者にはダメと言われていたこのワクチンが、60歳以下への限定へと数カ月に真逆のルールとなってビックリしたのに、今度は何? しかも数日前のニュースでは、英国では高齢世代のみにしたと読んだのに、なんだろう、この違い??

私自身や少なくとも私の周囲では、ワクチン接種についてはまだ様子を見たい、という慎重な人が多い。そもそも通常は治験に数年以上かけるものを、緊急事態ということで治験中でも高齢者やリスクグループへ接種をするというのは理解できるが、じゃああなたも、と言われても、はいそうですね、という勇気は私にはない。副反応も怖いが、長期的なリスクの有無については誰も明言することができないし、接種は自己責任でと接種の承諾書にも記載されているのだし、いくら未知のものだからとはいえ、毎週のように情報が二転三転し、各国でも理解や対応が違うものを信用しろと言われても、ちょっと、ねえ……、というのが正直なところである。

とはいえ、早いところ集団免疫を獲得し、経済を動かしたい国はもちろんワクチン政策を進めたいわけで、それがこのところの鼓舞の報道につながっているのかなとも感じるのだが、一方で、現行ワクチンが効かない変異株が出てきたらどうなるのか、本当に集団免疫が獲得できるのか、専門家の間でも意見は分かれている。

件の「ワクチン接種完了者についての制限免除」は接種していない人への差別とならないか、ずーっと議論は続いているが、現状としては、ワクチンを接種しない代わりに検査を受けて陰性証明や隔離をすれば同じことは基本的にできるわけで、その点は私はたいして気にならない。あと数年、多少の不自由さが続いたとしても、様子を見ながら何が自分に必要か、納得した上で決断していけばいいと思っている。

さてその制限免除が始まる前日のこと、買い物から帰ってきた夫がちょっと興奮気味にスマホで撮った写真を見せてきた。「見てよ、この長い行列!」マスクをした人たちが、少し距離を取り合いながら、道路脇に列を作っている。偶然、階下に住む学生さんが折り畳み椅子に腰掛けて本を読みながら列に加わっているのを見つけた夫は何事かと訊いたそうだ。「そしたらさ、ワクチン接種に並んでいるんだって!」

6月頃には優先グループだけではなくて一般の成人も接種が受けられるようになるとは聞いていたが、あれ? 若い人たちももう、しかも通知書もなしに急に加われるの?

なんでも数日前からこの大規模接種の特設会場を市が発表、希望者を募っていたそうで、我が地区の希望者はJ & J、隣の地区はアストラゼネカと決まっているそうな。ちなみに上記のワクチンの年齢制限はこの接種日の後に発表になったのだが、この時はすでにそれでもよかったんだろうか? 列を見ると、ベビーカーを押した家族連れや若い人たちも結構並んでいるけども……。

製造者も国も言う通り、ワクチンの接種もその後についても自己責任である。だから打つか打たないかは個人の判断だと言うのは基本的に正しい。でも最近の情報の錯綜状況やキャンペーン推進の報道の雰囲気を見ていると、そこに政治の思惑が見え隠れしているようだ、というのはワクチンを接種した知人や友人たちにも共通した見方だ。ニュースを追うのが億劫になってくるほど、なんだか気味が悪い状況だ。ロベルト・コッホ感染研究所所長の「元通りになる集団免疫の獲得には国民全体の8割の接種が必要」という発言や、ドイツ医師会の「幼稚園児以上の年齢にも接種義務を」なんていう提言は、圧力として響いて本当に気持ちが悪い。もちろんそれに反対する医療者や研究者、政治家たちもいるのだけど、なんだか社会が分断されかねない感じだ。

情報に振り回されて鬱っぽくなりそうだけど、私の足は当面、その大規模接種が行われた会場とは反対方面にある検査センターの方に向かうだろう。


 

 


写真:
©️ Aki Nakazawa
ドライブイン検査所のそっけない看板と、更地にポツンと立つテント。私が行った検査所も簡易設置のコンテナでした。実はこの看板の向かいに件の接種会場があり、町中がなんだかコロナ対策様式になっていっているような…。自分でできる簡易検査キットも一応家に常備しています。というのも、簡易検査所は実際に風邪のような症状がある時には受け付けてくれず、医者へ行かなければならないので、まずは自宅で検査できるようにと備えています。しかし、人々の感情が緩んでいくのはいいことですが、気の緩みにも繋がっているような……。大丈夫かなあ。

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中沢あき

中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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