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「こんなときに何言ってんだ、お前」と、たしなめる人が首相の傍にいないのかと、思っていたら、いたんだ、とSNSのニュースで知る。しかも今年に入ってから、「今回は延期して二年後に一緒にやりませんか」とフランスから打診があったことも知る。
そんな周囲の声を無視してまで強行するということは、やはり「国民の命」などどうでもいい、と考えているということ。「国民の命と暮らしを守る」という建前がかすんでしまうほど、本音がむき出しになっている。

と書き始めて、いやずっとそうだったんだな、と改めて思います。

少なくとも安倍政権になってからは、その本音があからさまに屈託もなく表面化してきたと思います。それを支持する人が少なからずいたということはどういうことなんだろう。あんなもん支持しても一文にもならないどころか金を搾り取られるだけなのに。と思っていたら、「選挙は勝つ見込みのある人に投票する」という意見をどこかで見て、そうか負けを味わいたくないからか、と妙に納得してしまいました。「勝ち組」でいたいわけだ。
もちろん、ちょっと俯瞰してみればそれは「負け組」なわけですが、そんな事実よりも権力者におもねることで「勝っている気がする」という気分を味わうことのほうが大事、ということ?
長い間虐げられてきた人間の心理は複雑です。

そんなことを考えてしまったのは、店のTwitterで紹介しようと、『踊る熊たち』という本をパラパラ読んだからかもしれません。
かつてのブルガリアに存在していた熊を使った大道芸。子熊のころから鞭を打って芸を仕込み、すきを見て歯を全部抜き、アルコール漬けにして、通りで奇妙な踊りをさせるというもの。
ソ連の崩壊で、価値観が変わりその芸は違法となり、熊たちは動物愛護団体に引き取られたそうですが、虐待に適応してきた彼らは、逆にそれがない状態に生きる気力を失った、という恐ろしい報告でした。
本の内容は、熊だけではなく旧共産主義国の人々の変遷がメインですが、その冒頭において印象的なエピソードとして取り上げられています。

先だっての米大統領選で、敗けたトランプに対して、「いや本当は勝ったんだ」という陰謀論が噴き出し、ついにはホワイトハウスが襲撃されるという事件が起こりました。
そのせいで、人生で何度目かの「陰謀論にハマる人たち」について思いを馳せていたら、なんだか私まで陰謀論めいた空想が浮かんできました。

コロナ感染者の拡大、医療現場の逼迫、それが原因で亡くなった人もたくさんいるにもかかわらず、その対策にお金をかけず、オリンピックを開催することにやっきになっている現政権。
福島第一原発事故の被災者への補償の打ち切り、ケアの放棄。
広島・長崎の原爆被害者への補償問題、ハンセン氏病や水俣病問題から、沖縄の米軍基地、アイヌの人権問題、在日韓国人への官製差別、保育・福祉従事者への低賃金など、挙げ始めたら枚挙にいとまがない、延々と続いてきた「命への軽視」。

ここまで舐められても暴動が起きない、投票率も上がらない、我慢してワクチンの供給を待つ人々。

敗戦後の日本は、巨大な実験装置だったのかもしれない。
学校教育では暗記だけでものを考えさせる勉強を放棄させて、政治に無関心な層をつくりだし、タピオカみたいなものでそのつど不満を吸収する。

政権与党の支持率が常に三割を占めていて、それ以上落ちることはなく、しかも小選挙区制ではそれだけあれば充分に政権を維持できる。
この三割はテレビの視聴率にも似ている。
新聞の購読者やテレビを見る人が減ってきたといわれていますが、この三割が底止まりのような気もします。

その新聞やテレビに接している層がちゃんと選挙に行っていると仮定すれば、これらのメディアを押さえておけば問題ない。
今回のオリンピックの公式スポンサーに新聞五大紙が名を連ねていることにも驚きました。
そして感染拡大を懸念するかのようなニュースを報道していた各テレビ局の、手のひらを返したような一斉のオリンピック報道を見て、ますます操られている感を強く感じます。

どれだけ痛めつけても文句も言わず、言わないどころか、進んで税金を納めてくれる奴隷たちを多く作り出すことに成功した、のは誰か。

1945年から、議会制民主主義の皮をかぶった植民地化計画が行われてきていて、今まさに完成の時を迎えようとしているのではないか。

戦争して金儲けをしたい、そして、それが政治だと考えている権力者が、まだまだ世界を支配している、そんな気がしてきます。
それを「勝ち組」と妄信して喜んで乗っかっていく日本の政治家と一部の(と思いたい)市民たち……。以上が私の陰謀論で、唯一の救いは「私は熊じゃないし、相手だって人間だし」というところでしょうか。自分以外の誰かが作ったシステムには取り込まれすぎないようにいたいし、人殺しに加担しないシステムをつくりたいしつくっていけるはず、と思っています。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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