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TALK ABOUT THE WORLD フランス編 ふたたびノーブラについて

中島さおり2022.01.11

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新型コロナと共に迎える新年も2回目となり、ワクチンにすがるフランスでは、ワクチン接種しなくてもまめなPCR検査でクリアできた衛生パスを、いよいよワクチンパスポートに変えようという法案が国会で議論され、反対デモも盛り上がっているが、新年なのでもう少し楽しい話題にしよう。

若い女性の間で、ノーブラが確実に進んでいる。私の周囲では、10代の娘を持つ母親たちが「うちの娘もノーブラ」と言い合っている。あるアンケートによれば、現在25歳以下のフランス人では、「一度もブラをしたことがない」女性が18%にのぼるという。「一度もしたことがない」が2割ということは、実際にブラをつけていない人口は当然もっと多い。
私は2年前にこのラブピースクラブのコラムで「ノーブラ!パリジェンヌ」という記事を書いたけれど、あの頃はまだ、萌芽だった。この2年の間にここまでノーブラが伸ばしたのは、誰でも思い当たるだろう、コロナ禍だ。

ステイホームやリモートワークで、家でリラックスした格好を続けた女たちが、もう体を締め付けるブラをつける生活に戻りたくなくなったのだ。いずれはそうなることを約束されたトレンドではあったかもしれないが、コロナ禍がそれを加速したのは否めないだろう。
下着屋のウィンドーを見ていてもわかる。ウィンドーに立つマネキンが着けているのは、縫い目も見当たらないなめらかな布一枚がほとんど。かつて見慣れていたような固く胸の形を整えてアップさせる立体的なつくりのブラジャーにはとんとお目にかからない。着け心地の良いブラでなければ、もう売れなくなったことが手に取るように伝わってくる。ワイヤー入りのブラとワイヤーなしのブラのシェアは、かつては6対4だったそうだが、「この2、3年で完全に逆転した」と大手下着メーカーetamの重役は言う。(4割というのは多く感じるが、田舎町の下着屋のウィンドーでは、まだワイヤー入りが健在なので、4割程度のシェアはあるのだろう)。

楽な格好をしたいというだけが、ノーブラを選択する理由ではない。「ありのままの自分を受け入れる」というのもトレンドだ。胸の小さい女性が、そのことをコンプレックスに思って「押して上げる」ブラ、パッド入りのブラなどで胸を大きく見せていたのを、スッキリやめる。白髪を染めるのをやめる「グレイヘア」と似た、「ステレオタイプ化した理想の女性像」に自分を合わせることの放棄だ。今はそのほうがカッコイイと思われる時代になったようだ。
そこには男の目を評価基準にしない、という潔さと強さがあって、草の根フェミニズムの確実な現れなのだと思う。「フリー・ザ・ニップル」は、男は上半身裸で良いのに、なぜ女は乳房を隠さなくてはならないのか、という抗議がベースにあるフェミニズムの運動だけれど、そこまで意識的でなくとも「男の目より自分の楽さ」を優先する多くの女性がそれを後押ししている。

とはいえ、「あんたのスケベ心を刺激しようと思ってやってるんじゃないんだから、欲情したりしないでほしい」という女性の論理が、男性に共有してもらえるかどうかは、わからないところがある。理屈はそうでも、そう都合よく男性が受け入れられるだろうか。
ただ、10代の頃から、ノーブラの少女たちと共に育つ今の若い男子たちなら、ノーブラも当然のこととして自然に受け入れられるかもしれない。少し時間はかかるかもしれないけれど、ブラジャーがすっかり過去の物になる時代が、来るのではないかと予想させる。

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中島さおり

中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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