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TALK ABOUT THE WORLD フランス編 とうとうワクチンパスポート

中島さおり2022.01.31

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年末年始から、これまでの衛生パスをワクチンパスポートに切り替えるということで国会が紛糾したり反対デモが盛り上がったりしていたが、1月24日、とうとうワクチンパスポートが実際に導入された。

具体的に言うと、今まではワクチン接種しなくても、こまめにPCRおよび抗原検査をして陰性証明をしていれば、レストラン、バー、映画館、劇場、スタジアム、長距離鉄道(TGV)などを利用できていたのが、ワクチン接種が完了していなければ、利用できなくなったのだ。16歳以上に適用される。12歳から15歳、また病院や介護施設、その他社会医療施設へのアクセスには、陰性証明書でも大丈夫とのことだ。
また、ワクチン摂取完了と看做されるには、3回目のブースター接種を終えなければならないことになったのだが、このブースター接種は2回目から7カ月以内に接種すれば良いとされていたのが、2月15日以降は4カ月以内に短縮される。とにかく一人でも多くの国民に3回目のワクチンを打たせようというのである。

オミクロン株が流行し出してから、感染は爆発している。このところ、新規感染者数は頭打ちになったと言うけれど、1日33万人を数えるというのだから、とんでもない数字まで上がって止まっている状態だ。

12歳未満の子どもはワクチンも打たないから、学校は感染の温床だ。1月27日現在、閉鎖した学級数が2万1049。去年や一昨年だったら全国的な休校にでもなったかという数字だけれど、ワクチンに頼ってウイルスが下火になるまで乗り切ろうというフランスでは、ロックダウンもしないし、学校も休校にしない。
逆に、クラスに3人感染者が出たら学級閉鎖するという基準のほうを緩和して、感染者が出たらそのクラス全員に検査を受けさせるが、陰性であればそのまま登校してよしとして学級閉鎖を避けようとしている。それでも閉鎖学級が出てしまうのは、感染者の数が相当に上るからだろう。

学校を閉めたくないのは、長期に学校を閉めた結果、ドロップアウトが増えてしまったことを反省してのことだ。そうでなくてもカリキュラムがこなせなくて生徒の学力は下がってしまうし、学校閉鎖の弊害は大きい。しかし、学校の先生自体も感染して人員が足りなくなるうえに、ころころ変わる基準に対応しきれず、幼稚園・小学校レベルの教師は悲鳴をあげている。

私は高校教師なので、生徒にはワクチン接種者も多いし、そこまで大変ではないけれど、それでもコロナと「ともに生きる」生活だ。クラスに感染者が出たので相当数の生徒が「濃厚接触者」となり、一気に家へ帰ってしまったりする。授業中にスマホに連絡が入るらしく「濃厚接触者になりました。検査に行ってもいいですか」と言って出て行ったりもする。入れ替わり立ち替わり生徒が感染したり濃厚接触者として自宅隔離になるので、常に3、4名が欠席している。1週間や10日単位で欠席する生徒が落ちこぼれないように配慮しなければならない。

ワクチンパスポートが実施される一方で、反ワクチン派も黙っていない。ワクチンは打っていても感染する例が後を立たず、今では「ワクチンを打っても感染はする、ただし重症化しない」ということになって来ている。でも、それではワクチンのありがたみが少ない。というか、説得力に欠けるらしく、反ワクチン・デモもまた勢いを盛り返している。週末はどこの街に行っても反ワクチン派のデモに行き会う。
私はワクチン自体に反対ではないけれど、ワクチンパスポート導入に伴って、飲食店に入るのに身分証明書を求められる可能性が出てきたことは、なんとも肯定し難い。ワクチンを進めたい政府としては、他人のパスでごまかそうとする不逞な輩は取り締まれということなのだろうけれど、ちょっと行き過ぎではないだろうか。
実際には、飲食店で身分証明書を求められたことはない。よほど疑わしい場合にしかやらないと、政府も飲食店も言っている。しかし「よほど疑わしい」とは、一体どういう状況なのだろうか。

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中島さおり

中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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