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棚卸日記 vol.1 「 身体売って生きてきた」

爪半月2022.03.18

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あなたは「風俗嬢」にどんなイメージを持ってますか?
借金がある? 金遣いが荒い? ホストにはまってる?だらしない? 拝金主義?

 

◆自己紹介ができません◆

初めまして。
連載を始めるにあたり、まずは私について自己紹介をさせてください。

・・・と、ここでいきなり躓いてしまうのですが、私は自分がどこの誰だか特定され得ることを書けません。というのも、私はかつて「風俗嬢」だったのですが、当時の客やボーイ(男子従業員)がストーカー化し、個人情報を握られ、脅され、いつ殺されるかもわからない状況で警察/行政/弁護士/セキュリティ会社を総動員させるという被害経験があるからです。

当時の客や業者が私をいつまで記憶し得るのか、いつの時点で加害者の執着が終わるのか、確かめる術もありません。

もしかしたら、加害者の中で私に関する記憶は永遠に忘却されない可能性もある、そんな風に永続する恐怖を感じながら生きています。

且つ、私は現在、狭い田舎社会で子育てをしています。
噂が瞬く間に拡散され、尾びれがつき、面白おかしく消費されるなんてことは日常茶飯事です。

私は子どもには自分が風俗嬢だったことは話していません。
この先話すかどうかも不明です。

私から一方的な形で展開されることになるであろう、「罪悪感から自由になりたいだけの自己満足の懺悔」をすることで、子どもに不必要な葛藤を強いることが適切かどうかわからないからです。(そして長年に渡り私が抱えてきた罪悪感は、実は不当に押し付けられたものなので、まずはこれを押し付けてきた男性社会に押し返すことが必要だなと感じています)

なので、この連載で書く内容は、ところどころ身バレ防止の観点から脚色を加える可能性があります。どこまで具体的なことを書いて安全なのか、そのラインを探りながら書くことになります。その点をご了承ください。また、過去の記憶を掘り起こしながら、逡巡しつつ書くことになります。記憶が曖昧だったり、時系列に整合性が取れない箇所もあるかもしれません。初めての連載なので大目に見てください。

◆略歴◆

高校生で摂食障害になり、不登校に。

見栄っ張りな母親は私の精神疾患を頑なに認めようとせず、医療に繋がることができないまま五里霧中で生きてきました。

どうにか高校は卒業できたけど摂食障害は悪化。

バイトを転々とした後、漸く採用された昼の仕事も心身の不調で脱落。

その後はいわゆる援助交際からスタートし、ソープ、デリヘル、DC (※デートクラブ。いわゆる本番可能なデリバリーヘルス)、交際クラブ (※いわゆる「愛人バンク」の後継版)、様々な形態で性売買をしてきました。

「してきました」というより、「せざるを得なかった」という表現の方が妥当かもしれません。当時の私がアクセス可能な情報の中で、他に選択肢がなかったのです。

学歴もなく、精神障害を抱え就業が困難。医療にも福祉にも繋がれず、親の援助も受けられなかった私は、社会の中で完全に孤立して生きてきました。

当時の私には、大学生が眩しく、会社員が羨ましい、人に堂々と名乗れる身分のある人たちが自分とは遠い世界の人間に見えたし、家族に恵まれた人を見るたびに疎外感に苛まれてました。闇社会の中でアリバイ会社に頼るしかなかった自分は、身分を偽る必要がない恵まれた人たちとは到底分かり合える気がしないと思ってました。さらに性産業には、同業者同士の連帯を阻む構造があるので、多くの風俗嬢がそうであるように、私は完全に孤立してました。

その後紆余曲折経て、数年前に業界を引退しました。

引退後の私は、しばらく鬱で寝込み、自分が風俗嬢だった過去を誰かに暴露されることに怯えながら病院に通い、目立たないように静かに暮らしてました。

精神不安定が状態化してしまい、何をどうすればマシになるのか検討もつかないまま無我夢中で生きてきたので、漸く医療に繋がれたのも引退した後でした。「無我夢中で生きてきた」と言うより、現役時代は「生きて稼ぐノルマから逃げ切れないまま、死なずに繰り越し続けるしかなかった」という表現が近かったかもしれません。

 

◆可視化されない「風俗嬢」の自殺◆

※センシティブな内容を含みます。

そんな風に、どうにか人生を立て直すため病院に通い始め、治療に専念しながら、自分の過去が暴露されるリスクに脅えて隠れて生きてきた私は、引退後の数年間、病院以外の場所で過去を誰かに話すということをほとんどしませんでした。

ところが、2020年コロナ禍で、同業者だった知人が自殺したことで、私は大きく動揺しました。

彼女はソープランドの中でも、いわゆる熟女店と呼ばれる店に在籍していました。「若さ」に絶大な付加価値がつけられる性産業の世界で、熟女店の単価は低く、その上ハードなサービスが要求されます。コロナ禍の自粛で客足が途絶え、稼ぎが更に不安定になり、待機時間に自分の需要のなさを突き付けられて病んでいきました。

もっとも、ここで言う「需要」とは、性的価値の有無でしか人間を評価することができない性産業の世界だけで成立する「需要」です。

ところが、待機時間が長引くと、仕事が入らない=自分に需要がない=自分自身の価値がない…自分のせいだ…と自責思考のサイクルに陥ってしまう、いわゆる「待機病み」に苛まれる女性がとても多いです。店長からのダメ出し、客のアンケート(※接客後に容姿や体型、接客内容を細かく採点される)、あるいはネットの匿名掲示板の書き込みなどで常日頃から容姿を中傷されたり、接客内容を否定される経験が蓄積して、「稼げないのは自分のせい」という思考に追い込まれてしまうのです。

私もそうでしたが、性産業にいる女性たちは、容姿や美醜といった「スペック」を常に評価され、一方的に査定される苦痛に苛まれ続けています。

知人は出勤が嫌で嫌で仕方なく、「もうシラフでは接客できない、出勤前にアルコールを摂取しないと接客できない」と言ってました。

アルコール依存症に陥りながらも適切な医療に繋がることができず、しかも家のローンがあって稼ぐノルマからは解放されないジレンマ…そこに加えてコロナショック、追い詰められた彼女がどんな地獄を見て、どれだけ苦しんでたか知ってたので、訃報を受けて最初に浮かんだ感想は(ちゃんと死ねたならよかった…)でした。

突然すぎて状況が理解できず、言葉が出てこなかったし、私にはこの喪失感や混乱を共有できる人もいなかったのです。

知人の自殺の事実を消化できないまま、その後もほとんど毎日のように繰り返し反芻し続けるうちに、彼女のような女性が死なずに済むための福祉インフラが今の日本社会に用意されてないことに気付き、腹が立ち始めました。

(彼女が援助希求 (※自分がつらいときにSOSを出すこと)を出すのを阻んだものは何か。
彼女が福祉や医療と接続することを妨害したものの正体はなんだったのか…
今の福祉制度に足らないもの、そして彼女に自己責任論を刷り込んだ要素をすべて洗い出さないといけない)

社会に対する漠然とした憤りを抱きつつ、しかし自分の考えに自信が持てず、誰にも打ち明けられないまま歳月は過ぎました。そしてその年の暮れ、2020年12月に、コロナ禍による女性の自殺率増加が報じられました。

ですが、そのとき私は感じました。

(風俗嬢の自殺は風俗嬢の自殺としてカウントされない。なぜなら自分が風俗嬢だと名乗って生きてる風俗嬢はほとんどいないからだ。知人も風俗で働いてることを家族にも誰にも言ってなかった。隠すために、駅のロッカーに仕事道具を置いてた。仮に家族が警察経由で知ったとしても、家族も隠すしニュースにはならないし、統計に上がることはない。
つまり、風俗嬢の自殺は社会には可視化されない…可視化されなければ、対策も一向になされないのではないか…)

◆安全圏から向けられる蔑視の眼差し◆


答えが出ないままさらに時間が過ぎ、2021年3月にアメリカのアトランタでマッサージ店(※性サービスを提供する店)で働くアジア人女性が銃殺される事件が起きました。

その事件は、「アジア系移民+女性+性産業」という、社会の中で複合的な差別に晒されてきた者に対する白人男性客の蔑視が露呈した凄惨なものでしたが、それ以上に私の心を抉ったのは、SNSで散見された"安全圏の女性たち"の事件に対する受け止めでした。

ざっくり書くと、高学歴の日本人女性がアメリカでグリーンカードを申請する際に「prostitute(※売春婦)だったことはあるか?」と質問されたことが心外だった、というものでした。つまり、「博士号まで持ってる高学歴のこの私が、売春婦かどうかを疑われるなんて失礼!夫も憤慨してた」みたいな内容です。そのポストにはかなりの数の「いいね」がついてました。白人社会のアメリカで、アジア人というだけでprostituteか疑われる、そういったステレオタイプな決め付けをされること自体は人種差別ですが、この女性の「私を売春婦なんかと同一視しないで」という怒りもまた、強烈な階級差別なのです。

…身体を売る必要に迫られることもなく、潤沢な社会資源に恵まれて順調な人生を歩むことができたエリート女性と言うのはこうも無神経で、階級差別に無頓着なものなのかと愕然としました。

(風俗嬢がなぜ風俗嬢になるのか…ならなければならなかったのか…世の中にあまりにも理解されてない。どうにかしなくては…)
と焦る中、2021年4月に再び緊急事態宣言が発令されることになり、
(また自殺者が出るかもしれない…)
と恐れた私は、SNSで自分がかつて風俗嬢だったことについて書き始めました。

「小学生の頃から風俗嬢に憧れたり、風俗嬢になりたくてなる人はいない。社会から否定される経験を繰り返した結果、いつの間にか他の選択肢がなくなって風俗にしか居場所がなくなってしまう、そんな女性がとても多い」という話を書きました。

風俗嬢が普段どんな偏見に晒されていて、その偏見が福祉や医療に繋がることをどれだけ妨害してるか知ってほしかったのです。

 

◆連載の話をいただいて◆

北原さんに最初に連載の話を打診されたのは2021年11月でした。そのときは、自分の言葉に責任が持てないと感じたので辞退しました。

私自身が性産業の世界の中で随分長い間過剰適応して生きてきたので、そこで刷り込まれた価値観や自分に内面化されたバイアスを十分に自覚しきれてないし、万が一炎上でもしたら現役の当事者に被害が及んでしまうリスクがある、と危惧したからです。

ですが、その後も連絡をくださり、「やっぱり書いてみませんか?あなたはおかしいことにおかしいと気付ける人だから」と言ってもらえたのですが、「実は私もおかしさに気付けたのは本当に最近なんです」という話をしました。

そこで改めて、自分が現役時代に信じ込まされてきた価値観と、転換点を迎えた後との変化も含めて書いてみようと思いました。

いま私が感じてる自信のなさや迷い、逡巡、不安もそのまま書いていこうと思います。

確信を持って断言できることができなくても、ほのかな違和感を吐き出し、言語化していく工程に意義があると感じてます。

ときに優柔不断に感じたり、ダブルスタンダードだと思われることもあるかもしれませんが、価値観に大きな過渡期を迎えた人間が心境の変化を書くとき、それはある程度避けられないことなので、葛藤も含めて共有できたらと思います。

冒頭で投げた問い、

あなたは「風俗嬢」にどんなイメージを持ってますか?

借金がある?金遣いが荒い?ホストにはまってる?だらしない?拝金主義?

これに対して、あなたは最初どんなことを思い浮かべたでしょうか。

今まで、風俗街や風俗の求人看板を「景色の一部」として見て見ぬふりをしてきた方たちと、この連載を通じて、様々な課題を共有できたら幸いです。

※「風俗嬢」「売春婦」は蔑称です。
私は敢えて遣っていますが、非当事者が当事者を名指すには適しません。
男性社会のバイアスなしに性産業にいる女性を呼ぶ言葉があまりにもないのが現状ですが、「性売買被害女性」「性売買当事者女性」と呼ぶのがいいような気がします。
「性産業従事者」という表現もありますが、厳密には「従事」しているわけではないので私は遣わないようにしています。

※あなたは「風俗嬢」にどんなイメージを持ってますか?
 @lunuladiary の質問箱に言葉を寄せて下さい。

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