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スクールフェミ 死を悼む同情票が、戦争への道を選んだ

深井恵2022.07.13

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7月8日金曜日の安倍襲撃事件。言論弾圧は断じて許されない。他に方法はなかったのか。
事件直後の午後の授業で、事件と報道のあり方について触れた。

・言論の弾圧は決して許されないこと。
・暴力に訴えることは民主主義をないがしろにすること。
・今日はこの事件の報道ばかりで、テレビ局を変えても同じ内容ばかりになることが予想されるが、大きな事件が起きて、どのテレビ局も同じニュースばかりを流すとき、「もしその事件が起きなかったら、代わりにどんなニュースが流されていったか」を考えてみることが大事であること。
・亡くなったことには心が痛むが、亡くなったからといって森友・加計学園問題や桜を見る会などの問題の幕引きは許されないことなどなど。

その夜、案の定、テレビ番組もネットもジャックされた状態となった。選挙戦最終盤の重要な局面で、安倍(自民党)のことしか報じられない状態が続いた。亡くなった方を悪く言うのははばかられる。安倍の功績を称える報道がほとんどだった。「憲政史上最長の安定政権」、経済政策「アベノミクス」などなど。退陣した際の会見映像では「拉致問題の解決、憲法改正が、志半ばにして実現できなかったことは断腸の思い」と述べる安倍が何度も報道された。

各界からの死を悼む声、功績を称えるコメントが次々と流された。世界各国からの弔意を伝える報道も「偉大な指導者」「残した功績の大きさ」などなど、安倍を称える言葉が並んだ。

教育基本法を改悪し、安保関連法案や特定秘密保護法を成立させたこと、「アベノマスク」や森友・加計学園問題、桜を見る会の問題については、ほとんど報道されなかった。「女性活用」と銘打ってバッシングされ、あわてて「女性活躍」に表現を変えたことなど全く触れられていなかった。安倍政権下で消費税が5%から8%、8%から10%へと二度上げられたことも不問に付された。みんな忘れ去られたのだろうか。

二度の消費税増税がなければ、いまの物価高の痛みも少しは軽減されていただろう。「アベノミクス」を検証して異例の金融緩和策を早々に止めておけば、これほどの円安に苦しむこともなかったのではないか。金持ち優遇政策を進め、格差を拡大させた罪も問われることはなかった。

亡くなったことについては、お悔やみを申し上げる。しかし、森友・加計学園問題や桜を見る会の問題が、これで幕引きとなるのは許されない。それとこれとは話が別だ。

事件の後の選挙戦、雪崩を打って「弔い合戦」「安倍氏の意思を継いで………」云々の最終盤になると憂慮していた。そして、誰に投票するか決めかねている人が、「亡くなった安倍さんを思って」投票先を決める……。そんな事態を想像して身の毛がよだつ思いだった。奈良の襲撃現場近くに設けられた献花台に並ぶ行列が報道されたとき、「自民圧勝」を確信した。野党共闘も実現できていなかった。

かくして、自民圧勝の2022年参議院選挙は幕を下ろした。改憲可能な3分の2の議席を改憲派が占めた。しかし、比例では自民党は票を伸ばせていなかった。「支持政党」としての自民派は、占めた議席の数とは別物のような結果となった。やはり無党派層の同情票による議席獲得数だろう。個人的には、立憲民主党の辻元清美さんと社民党の福島瑞穂さんが当選し、女性議員が増えたのがせめてもの救いだった。

ロシアのウクライナ侵攻から防衛費増を求める声が上がっている。安倍も防衛費のGDP2%以上の増額を訴えていた。そうするにはさらなる増税か、社会保障費を削るしかないだろう。円安と物価上昇にあえぐいまの国民に、さらに負担を強いるのだろうか。武器・武力に頼らない外交努力による安全保障、憲法を変えずに戦争を放棄し続けることが、最良の安全保障なのではないか。

死を悼む同情から1票投じた人が、「それはそれ、これはこれ」と憲法「改正」とは切り離して判断してくれることを期待する。

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