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上野千鶴子講演会中止と「身の下」相談再考

打越さく良2014.04.02

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【上野さん講演中止・撤回】
鳴り物入りで始まった(自称)本連載、早くも第2回にして「書くネタがない…」と弱気になっていたところ、次から次へといろいろなことが起こること。
ダントツで取り上げたいのは、山梨市の上野千鶴子さん講演会中止&中止撤回事件。ラブ・ピースにも、3月16日に「はっちゃん」が取り上げてくれたので、16日までの経緯はそちらをどうぞ(http://www.lovepiececlub.com/news/2014/03/16/entry_004996.html)。私も、「いったいどういうこと!?」といてもたってもいられず、山梨市に速攻、中止の撤回を!とファックスを送った。私以外にも、開催中止への抗議の声が多数市に届いたようだ。
そんな声が功を奏したのか、3月18日に無事講演会が開催された。望月市長は、講演の冒頭の挨拶で、「上野先生に無礼を働いた」と陳謝した。事前申し込みをした164人を大幅に上回る約450人が来場し満員だったとか。
講演時、上野さんは「約束なので、性教育の話はしません」と語り、笑いを誘ったという。もともと、講演は、「ひとりでも最期まで在宅で」という在宅介護をテーマにしたもので、性教育はテーマでない。でも、中止を決めた市が、一転開催するにあたり、わざわざ釘をさしたのか。もともとテーマじゃないんだから当たり前じゃないか、なんだわざわざ!と思うが、喧嘩の勝ち方を知る上野さんはそんなことにカチンとするより「はいはい」と余裕で引き受けたのだろう。
望月市長は「いろいろうるさいのでコメントしない」と朝日新聞の取材に答えた(3月17日ネット配信ニュース)。えーと、うるさいって、私たちのこと?ま、いいか。それならそれで、今後も何かあったら「うるさく」しますとも。
【言論規制はやっぱり問題】
望月市長は、「ジェンダー思想を相対化する、家族の絆を守る運動を推進する」等の方針を掲げ、「地方議会から誇りある国づくりを提唱」する、日本会議地方議員連盟の正会員。日本会議地方議員連盟のHPを開いてみたら、「夫婦別姓、ジェンダーフリーに反対の声を内閣府に!」なんて書いてある(ちなみに夫婦別姓訴訟弁護団の私の写真も発見(笑))。そういえば、最近「ジェンダーフリー」って用語、バッシング派からしか聞かないなあ…。フェミニストも慎重になって最近ではこのワキの甘い用語を使っていないのに、バッシング派はしぶとく使い続けている。おっと脱線。
事前申し込みをした人が164人でクレームを言ってきたのが約10人、数だけでもどうして後者を優先するの? と思うが、なるほど、そういうことか。市長が自分の意向と気が合う少数の「クレーム」でこれ幸いと講演会を中止してしまった? 権力者が「こんなのキライ」という言論は見聞きできなくなり、「こうあるべし」という言論だけに浸されたら…それって独裁。民主主義もなにもあったもんじゃない。ん? 望月市長は、抗議署名を手渡した小野鈴枝市議に、「ここだけの話だが、職員が勝手に上野先生に断りのメールを入れた」と釈明したとな(東京新聞3月19日朝刊)。え? それが本当でも怖い。職員が市長の意向を先回りして、言論を封殺するなら、効果は同じ。
上野さんだからここまで話題になるし、喧嘩のしかたもお見事。でも、小心者の私なんぞ、「こういうこと書くといずれ権力に嫌われてしまうかな。おとなしくしよう」と思いかねない。だから、放っておいてはいられない。
【まともな回答なのに…】
問題にされた中学生男子(15歳)の「性欲が強すぎて困ります」への上野さんの回答を確認するために、『身の下相談』(朝日文庫)をゲット。上野さんの回答につき、「東大名誉教授が男子中学生に淫行を推奨!?いかがなものか」といった反応は私の周囲にもいて、驚いたものだ。回答なのだから、セットとなっている相談を確認してほしい。
中学生男子の質問は、「学校の女子や通りがかりの女性を襲ってしまいそうなほど、性欲を抑えきれないのです」「このままいくと、欲望に負けてしまい、夜道などで衝動的に女性を襲ってしまわないかと怖いです」「どうしたら、この欲望を抑えることができるのでしょうか?」というもの。
身勝手妄想男子に「このたわけがっ!」と一喝したくなるが、そんな叱責は効果がない。一昔前の相談なら「スポーツに汗をかいて性欲を発散させましょう」ってところだろうが、無益もいいところ。まず、襲って性欲発散なんて、相手のことを考えないのは、ダメ。相手のことを考えるなんて面倒、セックスできればいいんだって?上野さんの助言は的確だ。「異性とつきあうのは、めんどくさい。それにセックスって子どもをつくる行為であることは覚えておいてください」そんなめんどくさいことを避けたいなら、「経験豊富な熟女に、土下座してでもよいから、やらせてください、とお願いしてみてください」。そしてダメ押しに「ただし相手のいやがることは決してしないこと」。
押し倒すんじゃなく、お願いする。相手を尊重すること、相手のいやなことはしないこと、コンドームの準備は忘れないこと。おお。「過激」どころか、性教育の教科書に載せるべき、真っ当なことばかり。質問をすっ飛ばし、さらに、配慮された回答の隅々をもすっ飛ばしての批判は、ズレてる。でもまあ、「まったく読み飛ばすんじゃないっ!」と腹を立てても、また効果なし。「なるほど!」と腑に落ちる・目からうろこのひとだっている。諦めずに発信!
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打越さく良(うちこし・さくら)

弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委

得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたい!と熱い。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。

著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法~婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

さかきばら法律事務所 http://sakakibara-law.com/index.html 
GALGender and Law(GAL) http://genderlaw.jp/index.html 
WAN(http://wan.or.jp/)で「離婚ガイド」連載中。

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