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このコラムを読まれてる方の中には、私がたまたま運が悪く、駄目な事務所に入っただけだと思っている方もいるかも知れません。しかし結論から言うとそれは真逆で、むしろ搾取されていない女性アイドルを探す方が難しいとも言えるでしょう。すぐ目に見える韓国の有名なアイドルでさえ、ハードなスケージュールを消化しながら極檀に痩せた体質を維持しなければなりません。なので事務所が専門家たちをつけしっかりとマネージしてくれるにも関わらず、体が保つ訳ではなくコンサートの途中で倒れたりするのです。

その反面、男性アイドルはそこまでの外見を求められないし、*ぽっちゃりした体系でもデビューを果たせ、ほぼ20年間活動を続けている人さえいるわけですから、アイドル業界が女性だけにやたら厳しいのは間違いありません。メジャーの世界ですらそうだとしたら、地下アイドルの業界はどうでしょう。(*スーパージュニアのシンドン)

私と一緒に活動していた同期の中では、他の事務所から移籍して来た子もいました。Aと呼びます。Aは私とほぼ同じ年で、この事務所に入ってきた時期も近かったので、スケージュールが被る日はいつも一緒に帰宅していました。だから彼女の色んな話が聞けたのです。Aは私が所属していた事務所よりもより有名で大きな事務所で活動をしていたらしいです。その事務所は「地下アイドル」を売りにしていたのですが、彼女たちを積極的に番組に出演させたり、渋谷に広告が掛けられたりと表に出してもらえるチャンスがとても多く、いわば「地下アイドル世界でのメジャーアイドル」的な存在でした。だから私も知っていたのです。

Aがその事務所のオーディションに行ったとき、スーツ姿の男性たちがとても丁寧な対応で迎えてくれたと言いました。だからうっかりと信じてしまい契約書にサインをしてしまったらしいです。しかしサインをした瞬間、彼らの態度は急に変わり、速攻ため口でシステムを説明してきたと言います。その時少し不安を感じましたが、一度サインをしてしまったため、どんなに命令口調で話をされても何も言い返すことが出来なかったと言います。後から聞くと、その事務所の社長は元ホストだったそうです。

彼女に最初に任された任務は「さくら」。「売れる」先輩たちがコンサートをしている間、両手にペンライトを持ち激しく全身を動かしながら応援をする。そうやってファンたちの応援を誘導したり、たとえ観に来ているファンが少ないとしてもその場の雰囲気を盛り上げ、さも常に売れている人気アイドルかのように見せる事がさくらたちの仕事だと言いました。しかし公演のスケージュールが決まっている先輩たちと違って、さくらたちはその事務所に所属している全てのアイドルのコンサートに付き添うのが役目。毎日毎日働きながらも、休む間もなく、水も飲ませてもらえなかったそうです。それで逃げて来たんだと。そういうさくらの子が沢山いたと言いました。まるでいつも入れ替えられる捨て駒のように。

類友ってこういう時にも言えるのでしょうか。その事務所の運営側と私が所属していた事務所の社長は仲の良い知り合いで、Aが移籍する時もそっちの事務所の社長の許可がなかったら簡単ではなかったかもしれないと言っていました。だから今の社長はとても優しいのだと、社長の本性を知らなかった時期のAは確かにそう言いました。今振り返ると、若い女性たちの夢を利用するだけの悪党に過ぎませんね。その仕組みを聞いて人身売買を連想してしまうのは私だけなのでしょうか? 正確に言えば、奴隷貿易ですね。

その後、その事務所は「貧困アイドル」というタイトルでアイドル活動を続けながら生計が立てられず困っている女性を特集として取り上げました。そう、 貧困ポルノです。社長はアイドルたちのお陰で贅沢な生活をしているのに、所属しているアイドルはちゃんとした給料も貰えず食にすら困っている。問題の原因 (加害者) がすぐそこにいるのに、「若い女性は夢のためにこんだけ大変な思いをしながらも頑張っていますよ」と宣伝するのはどう考えてもおかしいです。地下アイドルを応援する主なファン層は彼女たちの父の年に近いと言っても可笑しくないくらいの年配の男性です。いい年をした男たちは、社会的な地位も経済力も得られていない少女たちを見ながら何を思っているのでしょうか? もしかして男たちは「女性が社会的弱者であること」を娯楽にしているのではないでしょうか?

今思うと私とAはまだ運がいい方でした。数年後、その事務所では自ら命を絶ったアイドルが出てきました。原因は持病であるうつ病だったと言いますが、私はそれだけが理由だったとは思いません。さらに数年後、メンバーの間で社長から性的暴行をされたと言う告発が出て来たからです。それでもその事務所は健在している。そして、それをまた世間は「アイドルメンバーが枕営業をしていた」とネタにしています。

ただ必死に頑張るだけじゃ仕事が貰えない環境で、辞めようとしたら莫大な違約金を強いられる。アイドル活動を続けるためには、他にバイトをしなければならない。しかし事務所のスケジュールを優先するためにまともな職に就く事すらできない。だから選べる仕事は夜中に出勤できるガールズバーやキャバクラ。イレギュラーでも働ける「お散歩」のバイト等。それすら運が良いケースで、そういう仕事にすら就けない子たちは本当に行き先が見つからない。明日所か今日、今すぐ生きていくお金がない。

いって20代前半の少女たちが数十歳も離れている上司に気に入られるためにした行為って、本当に彼女たちの選択でしょうか? それって営業と言ってよいのでしょうか? 若い女性たちへの性暴力を軽視するための女性嫌悪的な言葉なのではないでしょうか?

私は日本でアイドルを卒業した後、風俗業に付いたり、援助交際に走ったりする女性を多く見てきました。しかし、私はその女性たちの気持ちが分かります。それは、夜の世界は今まで彼女たちが置かれた状況とあまり変わらないからです。どっちも「男に気にいられる」というだけの仕事。せめて夜の世界ではちゃんとしたお金でも貰える。食べていく心配はしなくても良い。

女性が生きるアイドル業界とはそういう世界なんです。

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JayooByul

JayooByul(じゃゆびょる)

JayooByul (ジャヨビョル)日本のお嫁さんとオーストラリアで仲良くコアラ暮らしをしています。堂々なるDV・性犯罪生存者。気づいたらフェミニストと呼ばれていました。毒娘で幸せです。

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