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中絶再考 その36 患者にやさしいパンフレットを!~豪・加・日 経口中絶薬の患者用資料比較から見えたこと(中編)

塚原久美2023.09.11

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感染症に関する情報はカナダのみ
 非常によく似た構成でありながら、一か所大きく違うのは、カナダのミフェジマイソの方だけ、半ページ以上も使って深刻な副作用について頻度まで挙げて説明しているところだ。次の箇所である。

深刻な症状や副作用がある場合は、ただちに医療の助けを求めてください。あなたの医療専門家やクリニックに連絡するか、最も近い医療救急センターに行ってください。
他にも以下に注意してください:

  • 治療をひととおり終えても、およそ7%から5.1%は完全に有効ではなく、中絶を完了するためには外科的処置が必要になることがあります。もし妊娠が続いてしまい、あなたがその妊娠を継続することを選んだ場合には、ミフェプリストンまたはミソプロストールを使ったことで胎児に形成異常が生じることがあります。
  • 約6%から2.5%の確率で、止まらない出血や重い出血を管理するために、外科処置が必要になる可能性があります。
  • 約1%の確率で、大出血(重い出血)のために輸血が必要になるリスクがあります。
  • 内科的中絶で深刻な感染症が起こることは非常に稀ですが、生命に危険が及びうる潜在性は秘めています。治療後に発熱していてもしていなくても、腹痛が続いたり、具合が悪かったり、からだが弱ったりする状態が執拗に続く場合には、迷わずあなたの医療専門家に報告してください。
  • 異所妊娠(子宮外妊娠)は妊娠の合併症であり、内科的中絶の合併症ではありません。

 この違いがなぜ生じたのかは定かではないが、カナダの場合は国境を接しているアメリカの食品医薬品局(FDA)が2004年に中絶薬使用後に死者が出たことについて警告を発したことがあり(翌年に原因は薬そのものにはなかったと判明して警告は解除されたが)[1]、その後も厳しく監視していることが影響しているのかもしれない。確率が小さいことを数値で示しているのは、無為に心配させることがないようにするためなのだろう。一方、オーストラリアのMS-2ステップの方には、こうした詳細の記述はなく「問題があったら、あるいは心配事があったら医師かMSヘルスの看護師のアフターケア電話サービスに連絡してください」とくりかえし呼び掛けるだけにとどめている。

日本の中絶薬の使用者向け?資材
 日本のラインファーマ社は、ブックレットこそ作っていないようだが、「メフィーゴパックの投与を受ける方へ」と題した本文10ページのパンフレットを作成している。ある病院ではこれを患者に配っていると聞いたが、看護師をしている友人によれば、これは内容が難しすぎるので各クリニックで同意書を取るためにもっと簡単な説明書を作っているはずだと言っていた。
看護師の友人が言うとおり、このパンフレットはオーストラリアやカナダのブックレットとはかなり様相が異なり、全般的に文字情報が多くて一文も長く、正直言ってわかりにくい。
改めて表紙から見ていくと、下の方に四角い枠で囲まれた注意書きがある。

この薬の適切な使用体制のあり方が確立されたと判断されるまでの当分の間、2剤目(ミソプロストール)投与後から、入院又は外来であっても胎嚢が排出されるまで院内待機が必須となります。

 さらにその下には「最初にお読みください。」の一文の下に、「この薬は、母体保護法指定医師のみが使用できる薬であり、登録された医療機関でのみ使用できます。」とある。これが、少なくとも日本でこの薬を服用するための最低限知っておくべき情報というわけだ。
ページを開いた最初の見開き目(1-2ページ)でも、まず出てくるのは次の説明だ。

メフィーゴパックについて
メフィーゴパックは、人工妊娠中絶の薬です。
2種類の薬(1剤目:ミフェプリストン、2剤目:ミソプロストール)を処方した母体保護法指定医師(以下:指定医師)の指示に従って、処方医療機関で投与を受けます。

 ここで2剤の名前が初めて登場するのだが、それがどういう役目を果たす薬なのかは全く説明されていない。「中絶の薬だ」ということは分かり切っているが、人工的に流産が起こるということを示していないので、「子宮出血」が異常なことのように誤解される恐れがある。この資材の最後の方までずっと確認したが、「どんな副作用があるのか」は詳しく説明されているのに、それぞれの薬の「作用」については説明が皆無だった。
 分からないことだらけでは不安が募るものだ。薬を飲む当人にとっては、「これを飲むとどうなるのか」を知り、心構えをしておくことが情報を与える際には一番大切なのではないのだろうか。そのための情報提供ではないのだろうか。
 その下に続く「この薬の投与を受ける前にご確認いただきたいこと」の冒頭には、次の文章がある。

✓この薬の投与を受ける前に、この薬の危険性や有効性、投与を受けるにあたり必要な対応について十分に理解できるまで説明を受けて下さい。説明にご同意頂けた場合にこの薬の投与が開始されます。

 「十分に理解できない」のは私が悪いのか? 仮に「この薬の安全性や効果」についてなにか疑問を抱いていても、はたしてここで質問できる人はどれくらいいるのだろう?
 さらに畳みかけるように、「指定医師の指示に従って」「必ず指定医師から説明を受けて」「必ず指定医師に伝えて」「事前に指定医師に相談して」と、いちいち「指定医師」が登場して「~して下さい」と書いてある。患者が自分で判断することは、全く求められていないようである。

脅し文言? 強迫的?
 しかもその合間合間に、患者を脅かすような文言や内容がちりばめられている。たとえば、次のような具合である。

✓この薬の投与を受けた後は全例で子宮出血があらわれ、一定期間継続します。また、まれに失神等の症状を伴う重度の子宮出血が起こることが報告されています。子宮出血により貧血が悪化するおそれがあるため、重度の貧血のある方は、必ず指定医師に伝えて下さい。

✓子宮内膜炎などの感染症があらわれることがあります(頻度不明)。

 前に書いた通り、「子宮出血」がこの薬の効果であらわれるということを説明しておく必要がある。また、「失神」というのは、英語では気絶や卒倒のような重度のものならsyncope、めまい程度であればfaintingに該当する。オーストラリアとカナダのブックレットで出てくるのは「その他の副作用」として「頭痛、乳房の張り、疲れ、ほてりや寒気」と並んでfaintingが示されており、軽微な副作用の位置づけである。日本の資材にあるような「貧血(英語はanemia)」に関する注意書きも、「子宮内膜症(英語はendometriosis)」も2カ国のブックレットでは全く言及されていない。そもそも子宮内膜症に感染するのは膣に外部から何かを入れて細菌が入り込んだ場合しかありえないので、経口薬を服用することで「あらわれる」はずはない。頻度は限りなくゼロに等しいはずである(だから頻度不明なのか?)。なのに、どうして日本の資材にはこんなことが載っているのだろう?
 さらに、「この薬の投与後は、緊急時に医療機関に速やかに来院できるように、指定医師の指示に従って遠方への外出は控えて下さい。」という確認事項の下に、再び「なお、この薬の適切な使用体制のあり方が確立されたと判断されるまでの当分の間、2剤目(ミソプロストール)投与後から、入院又は外来であっても胎嚢が排出されるまで院内待機が必須となります。」という説明がくり返されている。もうわかったってば……。

 2見開き目(3-4頁)の「薬の投与方法とスケジュール」で、1剤目、2剤目の投与の説明についても、いちいち「投与を処方医療機関で受ける」「指定医師の確認のもと、投与を受けて下さい」と同じ言葉が繰り返されている。さらに「この薬の適切な使用体制のあり方が確立されたと判断されるまでの当分の間、2剤目(ミソプロストール)投与後から、入院又は外来であっても胎嚢が排出されるまで院内待機が必須となります。」という説明書きが三度も繰り返されているのだから、もういい加減にしてよ、と腹が立ってきそうだ。

[1] 日本の厚生労働省は、FDAの警告が解除された後も長らく「死に至ることがある敗血症の恐れ」への警告文をオンラインで流していた。

(後編につづく)

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塚原久美

塚原久美(つかはら・くみ)

中絶問題研究者、中絶ケアカウンセラー、臨床心理士、公認心理師

20代で中絶、流産を経験してメンタル・ブレークダウン。何年も心療内科やカウンセリングを渡り歩いた末に、CRに出合ってようやく回復。女性学やフェミニズムを学んで問題の根幹を知り、当事者の視点から日本の中絶問題を研究・発信している。著書に『日本の中絶』(筑摩書房)、『中絶のスティグマをへらす本』(Amazon Kindle)、『中絶問題とリプロダクティヴ・ライツ フェミニスト倫理の視点から』(勁草書房)、翻訳書に『中絶がわかる本』(R・ステーブンソン著/アジュマブックス)などがある。

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