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中絶再考 その39 こんな動画の作成費を値段に転嫁しないでほしい!

塚原久美2023.12.05

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今年の5月16日に中絶薬が国内で発売されて半年以上が過ぎた。だけど実際どのように使われているのか、ほとんど何も聞こえてこない。すると先日、ある国立大学で助産学を教えている人から、県内で最も大きな産婦人科病院が中絶薬を使い始めたが、その事実をホームページにも病院内の掲示でさえも全く明らかにしていないと嘆いていた。「どうしてだと思う?」と彼女。「薬を使っていると知られると、問い合わせの電話で仕事にならなくなるから」と、その病院の産婦人科医は言ったそうだ。

ハッとして、とある産婦人科クリニックのサイトにアクセスしてみた。中絶薬発売早々、中絶薬を使っている医療施設として、某大手ニュースサイトの特集記事に、女性院長の顔写真入りのコメントが大々的に掲載されていたクリニックだ。

以前、ここのサイトには、中絶薬がどのような薬であり、服用するとどうなるのか、どのような心構えで対応しているか、そのクリニックでは具体的にどのような手順で服用するのか……など、まさに患者が知りたいような詳しい説明が載せられていたし、料金も明記されていた。

ところが、今回アクセスしてみたら、懸念していたとおり、中絶薬に関する情報がすべて消えていた。診療メニューからも、料金表からも、いっさいなくなっていた。製薬メーカーのサイトにある「中絶薬について相談できる病院・クリニック」のリストからも名前が消えていた。このクリニックも、中絶薬を使える医療施設だと知られたことで、仕事にならなくなるほどの問い合わせが殺到したのだろうか。もしや、中絶薬を用いた中絶の提供をすっかり手放してしまったのだろうか……?

しかし、なぜ問い合わせが殺到するのだろう。中絶薬に関する「真実」は比較的シンプルなものだ。安全で、確実で、禁忌事項はあるけれども、それ以外、ほとんどリスクはない。海外でも、この薬で中絶を受けた女性たちのほとんどは「満足」していると言われている。ところが、そのシンプルな事実が日本語ではなかなか見当たらない。知りたいことを知ることができないという現実がある。

試みに、検索サイトで「中絶薬」と入れてみた……まっさきに現れたのは厚生労働省の「いわゆる経口中絶薬「メフィーゴパック」の適正使用等について」というページだった。堅苦しい行政用語だけでも読みにくいのに、当事者にとって気になる「有効性」と「安全性」については、「国内第Ⅲ相試験」の結果として、専門家に向けた報告書の記述がそのまま載っているだけ……。

たとえば安全性については、「有害事象の発現割合は57.5%(69/120例)であり、主な有害事象は下腹部痛(30.0%)や嘔吐(20.8%)であった」とある。でも、そもそも「国内第Ⅲ相試験って何?」という人がほとんどだろうに、こんなパーセンテージを挙げられても、結局、安全なのかどうか、素人には判断がつかない。ましてや「自分が受けるかどうか」の判断材料にはなりそうにない。

この文書を下の方にスクロールしていくと、「なお、ラインファーマ株式会社のホームページにおいても、医療関係者向け及び一般の方向けに情報提供がされていますのでご参照ください」とある。ああ、薬の会社の説明があるんだと思い、「一般の方向け」の方をクリックしてみると、「メフィーゴ®パックについてご案内します。」の一文と、柔らかい線と色で描かれた女性のイラストがあるのに、ちょっと心が救われる。

ところが画面をスクロールしていくと、すぐ下に、赤線で四角に括られた枠の中に赤い文字で注意書きが出てくる。

メフィーゴ®パック(中絶薬)を用いた中絶は、市販後に十分な調査研究を実施した結果に基づき、このお薬の適切な使用体制のあり方が確立されるまでの当分の間、2剤目(ミソプロストール)投与後から、入院又は外来であっても胎嚢が排出されるまで院内待機が必須となります。

ちょっと待って! 突然、2剤目と言われても、メフィーゴ®パックという製品に2種類の薬が入っていることを知らない人もいるのでは? 「胎嚢(たいのう)※」なんて専門用語だって分からない人がいるだろう。(※受精卵が育って「胎芽(たいが)」と呼ばれる段階になったものを包んでいる袋のこと。この段階では、まだ「胎児」と呼ばれるほど育っていない。)

それに、「このお薬の適切な使用体制のあり方が確立されるまでの当分の間」って書いてあるけど、海外ではとっくに「標準的な使い方」が定められていて、2022年にはガイドラインも出ているんだよ!

……気を取り直してさらにスクロールしていくと、

「メフィーゴ®パックとは」

「薬の作用機序」

「薬の投与を受ける前にご確認頂きたいこと」

の3つの四角、その下に、

「薬の投与方法とスケジュール」

「薬の投与を受けることができない方」

「薬の投与を受けるにあたって別の薬の休薬が必要な方」

の3つの四角、さらにその下に、

「薬の投与を受けるにあたっての注意事項」

「薬の投与を受けるとあらわれる症状」

の2つの四角が出てくる。この8つのメニューから、知りたいことを選べというわけだ。

ちなみに、ここに至るまでに、「メフィーゴ®パック」がラインファーマ社という製薬会社の経口中絶薬の製品名だという説明は一度も出てこない。先ほどの赤い四角枠で囲まれた赤字の注意書きの中に「メフィーゴ®パック(中絶薬)」と書いてあっただけだ。よほど注意深い人でなければ「何だったっけ?」となるかもしれない。

それでも、たぶんこれでいいんだよなと「メフィーゴ®パックとは」をクリックすると、ビンゴ! ここでやっと「メフィーゴ®パックは、人工妊娠中絶の薬です。」という説明がある。しかし、続いて……

「 2種類の薬(1剤目:ミフェプリストン、2剤目:ミソプロストール)を 処方した母体保護法指定医師(以下:指定医師)の指示に従って、処方医療機関で投与を受けます。」

 「メフィーゴ®パックには、ミフェプリストン錠が1錠(1剤目)とミソプロストールバッカル錠が4錠(2剤目)の2つの薬剤が入っています。」

二度も2つの薬剤名をくり返すのでなく、もうちょっと整理してわかりやすく提示できないものだろうか。また「母体保護法指定医師」って誰? 「処方医療機関」ってどこ? と思う人も出てきそうだ。自分が「服用」するのではなく、医療機関で「投与される」というのも、誰目線なのかと思わずにいられない。

あのぉ……中絶するのは、私なんですが、なにか?

続いて、おもむろに投与方法が詳細に説明される。ちょっと待って……それは、先にこの薬のことをもっと知って、「投与される」のを決めた人に知らせればいいことだよ。この時点で、まだこの薬を使うのかどうか(投与されるのかどうか)を決めていない人もいるはずだ。

続いて、WHOで推奨されていることだとか、指定医師の指示に従って投与を受けること、登録された医療機関でのみ使用が可能であること、薬局やインターネットなどで個人購入はできないことなどが、脈絡もなく立て続けに情報提供される……ちょっとうんざりしそう……。

それでも、とりあえず下まで読み終わったとしても、「次」に進むボタンがない。自分で気づいて「戻る」のボタンを押さない限り、前の8つの選択肢の画面には戻れない。気づかなければ、ここでアウトだ。

気づいて「戻る」を押した人の場合、目の前に現れるのは……が~ん! 例の赤枠と赤文字の「メフィーゴ®パック(中絶薬)を用いた中絶は……胎嚢が排出されるまで院内待機が必須となります。」の注意書きである。なんか、やる気を失わせるためにこんなことを書いてあるのだろうか……?

そこでもめげずに、8つの選択肢のうち2番目の「薬の作用機序」を選んでみたとする。すると、またしても、

「メフィーゴ®パックの投与を受ける方は病院・クリニックへ来院が必要です」

の注意書きの一文が出てくる。少し下には、

「メフィーゴ®パックには下記の2種類の薬剤が入っています。」

の見出しがあり、その下には、

「1剤目:ミフェプリストン錠」

「ミフェプリストンは、妊娠の継続に必要な黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きを抑えます。a), b)」

という説明があり(「黄体ホルモンって何?」と思う人もいるだろう)、ピンク色の子宮のイラストが覗いている。イラストには、「子宮内膜の肥厚・分化の抑制」「脱落膜形成の抑制」など難しそうなことばが続き、「???」で頭がいっぱいになった人に救いの手を差し伸べようとしているのか、右上の方に、

「メフィーゴ®パック作用機序の動画はこちら」

と▷マークが見える!

「動画の方が分かるかも!?」と期待する人は少なくないだろう。そこで動画を開いてみると……

何やら未来っぽいポップな音楽と共にまず現れるのは、なんとマネキンのように無表情なヌードの女性! あぜんとしている間もなく、カメラ目線は女性の体内の「子宮」にズームインしていき、「排卵」「黄体」「プロゲステロンの分泌」の文字と共に画像で妊娠の仕組みが科学的に(?)描かれていく……のだけど、植物の蔓のように張り巡らされていく血管や、その後、登場する子宮内膜の妙にリアルに描かれたグロい画像に、私はどん引きしてしまった。個人的な感想をひとことで言えば、「気持ち悪い」と思った。

しかし、「これは取材だ」と思って我慢して観ていたら、今度は模型のようなプロゲステロンとその受容体、細胞核、DNAが登場し、銀色の粒々がいっぱい詰まった球(受精卵)がグロい子宮内膜の上を転がって行き、その中にのみこまれる「着床」シーンが描かれる……その後、「中絶薬」の登場によって、銀色の球が赤い粒々の群団(となりのトトロの「まっくろくろすけ」を小粒にして赤くした感じ)によって埋め込まれていた子宮内膜から救出され、やがて子宮内から排出されていく。これら「科学的」な経過が、いっさいの音声説明もなく描かれているのだ……この動画を観て、「見事に描かれている」と感動できる人は、よほどのつわものだろう。そもそもの妊娠の仕組みやこの薬の作用を知らない人が、「この動画で中絶薬のしくみがわかった!」となるとは思えない。

観終わって疑問がわいた。これは、いったい誰に向けて作られたものなのか? 一般人が対象だとされているが、こんなものを観ても、「中絶薬を使うかどうか」の判断の参考には全くならない。いや、むしろ「引いて」しまう人の方が多くはないか? 女性のからだがまさに「モノ化」されていることにもうんざりする。自分のからだの中にある組織(子宮内膜)だけが、妙に生々しく不気味なものとして描かれているのも衝撃的だ。

海外で中絶薬を使った女性たちは、「流産のときと全く同じ経験をした」とか、「ひどい月経痛みたいな痛みだった」「点々とした出血がしばらく続いた」などと証言している。この薬を使ってみるかどうかを考えている女性たちが必要としているのは、そういった情報だろう。この動画で描かれている「科学的」な知識は全く不要である。

そして、こんな動画の制作費用が、そうでなくてもバカ高い中絶薬の価格に含まれていることをしっかり考えて、私たちはもっと怒っていいのではないか。

追記:この原稿を読んだある編集者が言った。「『中絶薬、都内』と検索すれば、中絶薬情報は山ほど出てきます。わざわざ厚労省やラインファーマ社の情報を読む人なんていません。」

山ほど情報が出てくることは、もちろん知っている。しかし、正しい情報が出てこないこと、偽情報によって自院の中絶手術に誘導しようとするところがあること、正しい情報を載せていたところが情報提供を控えるようになっていることが問題なのだ。

現在、日本で中絶薬を使えるのは入院施設のあるところだけなので、資格のないクリニックの中には、中絶薬についてあえて危険情報を載せているところが少なくない。たとえば、「アメリカのFDAが24人の死亡を報告」と書いていた産婦人科医院があった。死亡例については、前にこの連載でも取り上げたと思うが、米FDAの統計は中絶薬を服用した後に亡くなった人数を(理由も明確にしつつ)カウントしている。この死亡数の中には、薬との直接的な因果関係が確定できているものがほとんどない一方、殺人で亡くなった人も含まれている。また、通算500万回も使われた中で、その程度の件数しかないので、統計的にはほぼゼロに等しいと見られていることも、引用者は知らん顔だ。

さらに、同じ産婦人科は、有名な医学雑誌ランセットの名を挙げて、中絶薬を1回服用しただけでは17%も失敗するとしているが、元の論文を調べてみたら、この研究の対象者は妊娠14週までであり、9週までしか使えない日本の中絶薬とは話が全く別だった。いかにも科学的なふりをして、そんな中絶薬「情報」を挙げながら、「自院では薬よりも安全な中絶手術を行っています」と宣伝しているのだから、たちが悪い。

一方で、実際に薬を使っていると聞いている病院やクリニックのホームページには、「中絶薬」どころか「中絶」の文字も見られなかった。以前は比較的良心的な料金を載せていた別のクリニックも、料金表から中絶薬は消えていた。安全性をきちんと理解して使っているところほど、情報提供を控えている現状にはため息をつくしかない。

 

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塚原久美

塚原久美(つかはら・くみ)

中絶問題研究者、中絶ケアカウンセラー、臨床心理士、公認心理師

20代で中絶、流産を経験してメンタル・ブレークダウン。何年も心療内科やカウンセリングを渡り歩いた末に、CRに出合ってようやく回復。女性学やフェミニズムを学んで問題の根幹を知り、当事者の視点から日本の中絶問題を研究・発信している。著書に『日本の中絶』(筑摩書房)、『中絶のスティグマをへらす本』(Amazon Kindle)、『中絶問題とリプロダクティヴ・ライツ フェミニスト倫理の視点から』(勁草書房)、翻訳書に『中絶がわかる本』(R・ステーブンソン著/アジュマブックス)などがある。

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