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北原みのり「フェムケア相談会」のご案内。たかが尿漏れ、されど尿漏れ、「下の話」は生きること。

北原みのり2023.12.12

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   先日、街ですれ違った若い男性二人組みの一人が「彼女がほしい」とハッキリと言っているのが耳に入ってきた。ストレートに言うものだなーと微笑ましく思っていたら、翌日も、別の街ですれ違った若い男性二人組の一人が「彼女という存在がほしい」ハッキリと言うのが聞こえた。すれ違うたった数秒間の出来事であるが、妙にクッキリと聞こえたことがおかしかった。そして、一人歩きながら考える。「彼女がほしい」というのと「彼女という存在がほしい」というのは、同じようで違うのかな、違うようで同じなのかな、とか。

 そんなことを考えながらカフェに入って、フルーツパフェを食べた。斜め向かいに座る私と同世代くらいの二人組の女性が言う、「私、ZARAなんて着ないわよ〜!」という声が妙に耳についた。え〜、ZARA、いいじゃ〜ん、着たらいいじゃ〜ん、かわいいよ〜! と、心の中で応答したりする。他人の断片的な会話を勝手に拾って心のなかで会話し、甘いもの食べて、読みかけの小説とかをだらだら読む時間って、なんだかめちゃくちゃ幸せですよね。

 と思っていたら、突然、隣に座る70代くらいの女性二人の会話が耳に入ってきた。
「○○さんが、今度、尿漏れで手術するんですって」
   相当な小声である。特に「尿漏れ」という箇所は、意識して囁くように話しているのだが、その囁く感じが余計に「尿漏れ」というワードを際立たせ、バンッと耳に入ってきたのである。えっ!!! 今度はとたんに、私は聞き耳を真剣にたててしまう。「尿漏れ」を語る70代の女性の話は、私のど真ん中の関心時である! いったい70代の女性は尿漏れについてどのように語るのか!

 と、隣でパフェを食べる女が聞き耳を立てているとも知らず、上品なセータを上手に着こなす70代くらいの女性たちはこんな会話を続けるのだった。

「○○さん、とても困っていらしたのよ」
「わかるわ。頻尿は生活に支障をきたすのよ」
「そうなのよ。○○さんは、○○病院の○○先生に診てもらって、今度手術するって決めたのよ。ご存知でしょ、あの病院、とてもいい先生、、、でもね、、、」
「わかるわ、あなたの気持ち。手術するのは仕方ないけれど、でも、心配ね。本当は手術よりも、骨盤底筋を鍛えるのが大切だって言うわよ」
「そうよね。トレーニングするしかないのよ。でもね、頻尿がすごくて生きることの意欲もなくなるのよ。そうすると、トレーニングする意欲もなくなるのよ」
「そうよね、だんだん外にも出かけたくなくなるのよね」
「そうなのよ、たかが頻尿、たかが尿漏れよね。でも、これって生きることよね」

 聴きながら私は本を閉じて、うんうんと深く頷いていた。そうなのだ、頻尿とは生活の質をぐんと下げることでもあるのだ。オシッコが漏れる状態とは、生きることの意欲も下手したら奪われるようなことなのだ。たかが尿漏れ、たかが頻尿、でも排泄行為は私たちの生活の尊厳という面を、大きく占める重大事なのだ! 

  そんなことを思うのも、私自身が今年はじめ、コロナに感染した後に尿漏れに苦しんだからである。強い咳が一月ほど止まらなかったせいか、骨盤底筋がゆるゆるになってしまったのだろう。ちょっとした動きで漏れるようになってしまった。
 笑ったのはスキーに行った時である。同世代の友人が目の前で転んだ。若い頃のように自分の筋力だけでスッと立ち上がることができずに、ごろごろと雪の上を転がっている。本人は必死に起き上がろうとしているのだけれど、客観的には猫のようにごろごろと背中を地にこすりつけている状態である。しかも身体をくねくねさせているうちに、ブッ! と大きなオナラをしたのであった。その姿があまりにおかしくて思わずブッ!!と吹き出したら、その瞬間に私はドバッと尿を漏らしてしまったのであった。おならに尿漏れかよ! ああ、50代!! である。このまま骨盤底筋緩めたら、便漏れして、しまいにはオムツというのも遠い未来じゃないのかも・・・と真剣にやばいと思った。

 さらにその後、商談で行ったドラッグストアで、私は衝撃的な光景を目にした。赤ちゃん用オムツと大人用のオムツの売り場の広さがまったく同じだったのだ。赤ちゃん用オムツコーナーは、肌触りの良さとが謳われるかわいらしいデザインでキラキラして見えるが、大人用オムツコーナーは「大容量吸収!」「漏れない!」「安心!!」という言葉が、工事現場の標識かと思うほどの大きさでパッケージに記されている。私が無知で知らなかっただけのことではあるが、聞けば、老人ホームや介護施設で暮らす高齢者はほぼオムツがデフォルトなのだそうだ。トイレ介助が必要でない人も、万が一間に合わなくなることを理由に、または尿漏れの激しさを理由にオムツがあてがわれるのだそうだ。大人用オムツ業界は今、日本社会の下を支える巨大な市場になっているのだった・・・。

 私もこのままいけばきっとオムツになるのだろうな・・・と、初めて大人用オムツがリアリティをもって私に近づいてきた。そういえば、昔みたドラマ、市原悦子『家政婦は見た』で、日本を代表する企業のトップの男がいつもアタッシュケースを持ち歩いていて、きっとその中には企業の重大機密事項書類が入っているに違いないと思われていたところ、実はオムツが入っていた・・・という話があったことを思い出す。尿漏れに男女は関係ない。この国では年を取ると、当たり前のように、仕方なく、オムツという選択肢を受け入れざるをえない局面が訪れるのだ。それに抵抗感を感じるのは、私がまだ若いからなのか、それとも年を取ることにどこか恐怖を感じているのか・・・そのように大人のオムツ問題について悶々と考え続けていた2023年の私に、まるで神の啓示のように降りてきたのが、フルーツパフェを食べながらの隣の女性たちの会話なのだった。

 彼女たちは、はっきりとこう言っていたのだった。


「そうなのよ、たかが頻尿、たかが尿漏れよね。でも、これって生きることよね」


 涙が出そうになる。そう。たかが尿漏れだ。でもそこには、尊厳がある。そこには生活がある。排泄こそが、人生だ! と言いたくなるような、切実がある。
 気が付いたら、私はその女性たちに語りかけていた。

「すみません、お話を聞いてしまっていました。尿漏れの話、本当にその通りだと思います!」

 突然、隣の席から話しかけた女に動じないところが、年の功、女の連帯というやつである。女性たちは、もうぜんぜん驚くことなく、あらあなた聞いてらしたのね、な感じで微笑んでくれ、「そうなのよ、尿漏れね、私たちの世代は、本当に切実なのよ」とにこやかに返してくれるのであった。そして「あなたはまだ若いから大丈夫だけど」とも仰るので、「いえ、わかります。そして私は実は、尿漏れについてすごく考えていて、お店をやっていて、そこでは尿漏れグッズを扱っているんです。もしよかったら、来てください! オムツが当たり前、という選択肢には抵抗があるんです」と熱く語ってしまっていたのであった。「行くわ、わかった、ラフォーレ原宿0.5階にあるのね、ラブピースクラブ、ラブピースクラブ・・・」女性たちは念仏のように、ラブピースクラブを2回、口に出して繰り返してくれたのだった。
 尿漏れがつなぐ、カフェでのひとときの縁出会った・・・もちろん実話です。原宿のフルーツパーラーで出会った女性、、、読んでくださっているでしょうか。

 というわけで、、、というか、前置きが長くなりました、すみません、宣伝です。明日12月13日、恵比寿駅にあるJRアトレ6Fの「FemtechLab」という、骨盤底筋トレーニンググッズや、フェムケア用品を売っているお店でトークをします。できれば同世代の女性、または更年期、プレ更年期の女性に来ていただけたら嬉しいです。これから40代、50代に起きる身体の変化、なぜ下のこと、性のことが大切なのか。ホルモンの変調がどのようにこの世代の女性たちに変化をもたらすか。そのための準備とは。どんな生理用品がいいのか、どんなフェムケアをしたらいいのか、どんなバイブを選んだらいいのか・・・フェムケアにまつわる、身体にまつわる話をしていきたいと思います。 

 12月忙しいかと思いますが、新しくできたすごく素敵なお店で、ゆっくりと語り合えるスペースもあります。ぜひ皆さんのお越しをお待ちしています!
 そうそう、ちなみにですが。私は今年ゆっくりきっちり骨盤底筋を鍛えました。おかげで尿漏れはしなくなりました。筋肉は裏切らないです! 


<イベントご案内>

★開催日時 2023 12 13 日(水)18:30 所要時間は1 時間を予定しております。18:00 受付開始
★開催場所 アトレ恵比寿6F FEMTECH LAB 」店内
参加費 無料
★ご予約をいただけると嬉しいです! 以下のページからお願いいたします!
femtechlab-event01.peatix.com


 
 
 
 
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北原みのり

北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めてフェミニストが経営する女性向けのプレジャートイショップ「ラブピースクラブ」を始める。2021年シスターフッド出版社アジュマブックス設立。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)・佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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