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猫の日だというのに、犬の話。

牧野雅子2018.02.22

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確定申告や年度末のなんやかんやで、このところ、郵便物が毎日のように届いている。家の前に見慣れない車やバイクが停まると、不審者っ! とばかりに、うちの犬が吠える吠える。ご近所さんには「うるさくてすみません」と謝ってはいるのだが、「立派な番犬やなあ」とやんわり厳しく返されて、「すみませんすみません」と更に深く頭を下げることになる。警戒してくれるのは大変ありがたいのだけど、飼い主としては気が気でない。

時折、何もないはずの天井に向かって唸っていることがあり、それはそれで、気が気でない。ネズミ、かなあ。でも、それっぽい音はしないよねえ。まさかまさか、ニンゲンには見えていないものが見えているとか?

我が家をマモルくん(ただしメス)は、推定8才の甲斐犬。うちに来て、4年になる。4年で推定8才ということからもわかるように、仔犬の頃から飼っていたのではなく、保護犬の里親募集サイトを介してやって来た。サイトにアップされていた写真に一目惚れしたのだ。つややかな黒の虎毛。前足を揃えぎみにして、細長いシルエットでお座りをし、大きめの耳をやや広げ、黒い丸々した目でこちらを見ている。四肢が長く、立ち姿もしゅっとして、太めの尻尾がなんともいえない。それが甲斐犬という犬種だとは、後で知った。

甲斐犬について、最初の飼い主にしか懐かないと言われる犬種だとか、実家で飼っていたのを父親の入院を機に息子が引き取ったら全然懐かないどころか暴れまくって大変だったのでどこかに引き取って貰ったとか、成犬からの甲斐犬のしつけは経験を積んだトレーナーさんでも難しいだの、そもそも仔犬であっても甲斐犬は気性が激しく飼うのが難しいだのと、あれこれアドバイスをくれる人がいたりして、わたしには無理かもしれん、と諦めてかけていた。

が、ものは試しと、一度「預かりさん」に犬と一緒に家に来て貰ったら、なんとまあ、人なつっこいこと、かわいいこと。すっかり、このコにやられてしまったのだった。家は狭いのに土間だけはやたら広い我が家も、中型犬が走り回るのにピッタリと見え、「預かりさん」からも犬飼環境OKとのお墨付きをいただいた。

犬と一緒に暮らしていると面白いし楽しい。運動量が必要な中型犬ゆえ、散歩はたしかに大変だ。文字通り、雨の日も風の日も、最低朝夕2回の散歩は欠かせない。それは、人間の世界を広げてくれる経験でもある。犬の散歩という名目がなければこんなところに来なかったという場所に、幾度も連れて行って貰った。自分にもこんな冒険心があったのだと、気付かせても貰った。犬繋がりで、お友達も沢山できた。このコが来てから、わたしの世界は広がった。

うちのコは、好き嫌いが激しいタイプらしい。嫌いな人はともかくとして、おばちゃん・おばあちゃんが大好きなのだ。わたしの家は、昔からの家が建ち並ぶ、若い人はそれ程多く住んでいない地域にあり――早い話が、ご近所におばちゃん・おばあちゃんが多い(っていっても、わたしも「おばちゃん」のひとりなのだが)。うちのコにとっては願ったり叶ったりで、散歩の時にはあちこちのおばちゃん・おばあちゃんにお尻ごと尻尾を振りまくる。一度、実家に連れて帰ったら、犬好きの父親のことはあっさりスルーして、動物が苦手な母に懐きまくっていた。時々、このコは以前、どんな風に飼われていたのかと考える。

下校中の小学生の集団には怖じけるのに、井戸端会議中のおばちゃんには、走るのももどかしい勢いで飛び込んでいく。そして、たっぷりなでて貰ってご満悦。ということは、わたしもおばちゃん・おばあちゃんのお知り合いが増えるわけで、おばちゃん仲間が増えるのは嬉しいし楽しい。わたしとしても、願ったり叶ったりなのだ。犬の8才も、いい感じにおばちゃん、だしね。

うちのコが来て何ヶ月か後、ヒートが来た。避妊手術済みと聞いていたので全く思いもよらず、血液検査とエコーで分かったのだった。
避妊手術について調べる中で、雄犬の迷惑にならないようにと避妊手術をした、とかいう飼い主の書き込みを見てしまい、なんともいたたまれなくなった。ヒート中の雌犬に興奮させられた雄犬の状態は、飼い主も見ていられないほどだという。
インターネットで検索すると、ヒート中の雌犬に迷惑する雄犬の「飼い主」コメントが目に入る。お預け食らってるウチの子が可愛そう、近所の雌犬のせいでウチの犬が吠え続けて寝られない、他の犬を狂わせていることに気づかないのは犯罪的……。その一方で、雄犬は雌のように迷惑をかけるわけではないから、去勢手術をするのは可哀想だとか書かれていると、モヤモヤどころではない気持ちになる。

犬と暮らし始めてから気になっていることがある。犬が使われる言い回しには、あまりいいものがないように思うのだ。とりわけ、現政権がらみで使われるものには。米国のポチ、政権の犬、官邸にしっぽを振る、犬HK……。もちろん、大元の政権が問題なのは言うまでもないのだけれど。「かいけん」という読みから、改憲派のシンボルマスコットに甲斐犬が使われているのを知ったときには、「ひいぃ、止めてくれー」と叫んでしまったよ。

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牧野雅子(まきの・まさこ)

龍谷大学犯罪学研究センター
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。 

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