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「表現の自由をマモルくん」たち

牧野雅子2015.11.24

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少し前の話になるのだけれど、田房永子さんのコラム「女印良品」の「女子中高生に固執する成人男性たち」に出て来た、美少女ゲーム風イラストの「周辺」について。

田房さんのコラムで取り上げられているイラスト――詳細な制服の描写に加えて性的なコメントがついている――やツイートは、コラムを読んだ後、わたしも目にする機会があった。視ることの暴力性や性的な眼差しといった点から問題にする必要もあるだろうし、モデルになった女性に及ぶ影響ということも考えなきゃいけないとも思う。
一方で、イラストを取り上げた田房さんのコラムに「反応」している人たちのコメントも興味深いものだった。ツイッターで、ブログで、掲示板で、いくつも目にすることが出来た。
痴漢被害経験についてのコメントもあれば、美少女イラストのような二次元表象をめぐっては、「表現の自由」とか、実在の児童と二次元の表現は違うとか、二次元ファンタジーがあるから「性犯罪」は少ない、規制したら俺たち何するか分からんぞ的な発言まで。あのコラムが自分たちの「表現の自由」を脅かしている、自分たちが手にしているものを守らねばとでもいうようなものもあった。
それにしても、「表現の自由」という言葉に引っかかる。だって、「表現の自由をマモルくん」たちは、二次元表象の欲求を満たすためには実在少女の搾取と消費がなされることを、自分たちで示して見せているようでもあったから。

二次元表象を禁止などしたら、出所を失った欲望がリアル世界に向けられて、実際に被害者が出るかもしれないぞと言われたって、彼らは被害者を出さないために言っているのではないわけで。第一、「表現の自由」議論って、そのためのものじゃないでしょう。自分が加害者になるかもしれない、被害者を出すかもしれないと本気で心配しているのであれば、二次元だとか言ってないで、まずは加害者カウンセリングに行くべきだし。
被害者が出るぞと脅して、自分たちの権利(それにしても、一体何の「権利」だろう?)を守ろうとしているだけ、と言っては言いすぎだろうか? 子どもが被害者になるぞ、と言って脅す、それは被害者の利用ではないだろうか?

また、二次元表象を擁護する発言を通して、性暴力が行使されていることも忘れてはいけない。痴漢被害に遭わないことは女性として魅力がないことを意味する、減るもんじゃないし痴漢ぐらい我慢しろ、むしろ女として見られて性的な魅力を認められて良かったと思え……。これら、痴漢加害を矮小化し、被害者を揶揄する言葉の数々は、当事者にとっては二次被害という性暴力だ。
その上、こうした見方は、性犯罪加害者処遇で言うところの認知の歪みそのもの。それを公言するなんて、あんたら、自分で、ボクたち加害者メンタリティ保有者でーす、って言ってるようなもんやで、と思ってしまう。こんな状態で、「表現の自由」って言われても、ねえ。

性暴力のエンタメ化とでも言うのだろうか、性暴力は暴力バリエーションの一つなのだから特別視すべきでない、殺人事件を扱った小説や映画やゲームがあるんだから、性「暴力」だけが許されない理由はない、画の中のことなんだし、ゲームの中の話なんだし、だって、性「暴力」なんでしょ、他の暴力表象と同じに扱うべきでしょ、という主張もあった。
残念ながら、性暴力は他の暴力とは、違う。被害を受けた方なのに責任を問われ、スティグマを付与され、被害者は性的な文脈で語ってもいいと思われ…と、「性」にまつわるあれやこれやで当事者はがんじがらめになっている。
実際の殺人事件ではたとえ被害者に何らかの非があったと言われても、加害行為の暴力性は疑われないし、誰もが犯罪だと認めるが、性暴力事件では、被害者の落ち度や加害者との関係等が問われ、その暴力性が疑われることが少なくない。被害申告がしにくいのもそのため。実際の被害数は、統計に表れる性犯罪の10倍とも言われ、暗数が非常に多いこともよく知られている。「性」暴力であるゆえんだ。

作品を発表する人たちや二次元表象を擁護している人たちと、被害者を揶揄しようとしている人たち、二次加害を含めて性暴力に加担している人たちは、完全に一致しているわけではないのだとは思う。皆が発言しているわけでもなく、違う考えの人たちも多いのかもしれない。しかし、美少女イラスト一つとっても、「性」暴力的なコメントがどっと湧く以上、「表現の自由」擁護に諸手を挙げて賛成することは難しいと思ってしまう。

「性」暴力被害者が、スティグマを付与されず、被害申告を躊躇することもなく、性的に揶揄されることもなく、まわりから暖かい支援を得られ…ということなら、話は別かもしれない。リアルな世界で、性暴力が他の暴力と同じように扱われるのならば、性的な二次元表象、性暴力のエンタメ化もアリなのかもしれない。
その時には、表現の自由をマモルくんたちも、二次元表象を誰からもとがめられずに楽しめるだろうか。それとも、「性」暴力だからこそ、の、二次元表象だろうか。

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牧野雅子(まきの・まさこ)

龍谷大学犯罪学研究センター
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。 

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