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第21回「今年の夏、私にとっての最強のホラー」

野沿田よしこ2016.08.05

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 私の名前はよしこ。でも“よしこおばさん”となってこそ“私”であると人は言います。なぜ“おばさん”なのか?誰かの“おばさん”というわけではな く、 “おばさん”=加齢具合を表現しているわけでもありません。私の行動が“おばさん”以外では成しえないものであるからです。私の趣味は人の恋愛話、セック スの話を聞くことです。と、いってもガールズTALK的に盛り上がり話し、その場で共に聞くようなスタイルでは楽しめないのです。あくまでのぞき聞き、の ぞき見すること、百歩譲って1対1で根掘り葉掘り的なTALKが好きなのです。
 “人の話を聞く”“心の中や状況を探る”という力はどうやら“おじさん”“お兄さん”“おじいさん”には装備されていないようです。“お姉さん”と呼ば れ る人達には盗み聞きする根性がないようです。そして“おばあさん”には興味と能力はあっても、盗み聞きできるほどの聴力がなかったり、長時間粘れる脚力が なかったり。でも、体力的にまだその余地がある。それが“おばさん”なのです。
 と、いうことで、21回目の「よしこおばさんは見た!」よろしくお願いいたします。
 夏でございます。開放的になる夏の夜、私はのぞき見、のぞき聞きの定位置である某所のフレッシュネスバーガーを飛び出し、繁華街に行って参りました。渋谷でも新宿でもない都内の繁華街、上野でございます。新宿や渋谷に比べ街が小さく、その割りに風俗店が多く、そこにいるだけでちょっと悪いことをしているような気持ちにさせる上野は、非常に男性の比率が高い場所のように思えます。仲通りという400mくらいのメイン通りを1本入った所には、イヤホンとマイクを付けた男の客引きが連なり、行き交う男性に声を掛けていました。
 「お兄さん、これからどうですか?!」  「いいサービスしますよ。」  「お一人ですか?終電に乗るよりこっちに乗りませんか?」
 そんな会話が聞こえてきました。ちょっと進むと今度は、30代後半から40代の男性が混在する5人のグループを20代前半の男性が客引きしています。客引きも仲間の一人のように、盛り上がって話しをしていました。カラオケか何かの人かと思えば、こちらも風俗店の客引きでした。
 「団体さんは安くしますよ。」  「ろくなのいないんじゃねーの?この前もこの辺の店でひどい目あったからなぁ」  「大抵写真と違うからな、18歳だっていうから入ったら、どうみても30代だったんだろう?」・・・・・・・・・・・
 聴いたことがないような会話が、和やかに、楽しそうに繰り広げられていました。  私はどんな所なのかのぞき見したくなり、どうにか店の中を覗こうとするのですが、店内の様子はまったくわかりませんでした。うろうろとしている私を客引きは煙たがり、睨みをきかせます。面接しない?なんていう客引きはなぜか一人もいませんでした。看板に書かれたサービス内容、料金などを見て、そうこうしているうちに時間は深夜1時。私はのぞき聞きに切り替えることにしました。先ほどのグループがある店から出てきたのです。団体客様になったようです。  私は男たちに続き、安い居酒屋に入っていきました。私の経験上、始発を待つまでの居酒屋で本音は飛び交います。男達が座ったテーブルの後ろがちょうどカウンター席になっており、いいポジションをキープすることができました。
 A「俺久々の行ったよ。どうだった?」  B「思ったよりましだった。」  C「俺のけっこうよかったよ。」  D「俺はこういうの厳しいから40点かな。」  B「Aはいつぶり?」  A「結婚する前だから5、6年かな?でもさ、最近質上がってんの?上野なんてろくなのいなかったじゃん?」  D「最近はこんなもんだよ。コスパ上がってる」  E「俺、すごいラッキー“おいた”しちゃいましたよ」  A「なに、フェラ?」  E「パンツは脱げなかったけど、69できたよ」  D「挑戦するなぁおまえ」  一同「わはははっは」  D「Eさぁ、そんなこと店でやんないで、嫁にしてやれよ」  E「それ無理。義務でただやるのでさぁ辛いのに、しないですよ。」  A「でもさぁ、うちもやんないと怒るからたまにするけど、義務になってすげー気を使うし、やってやんなきゃって思うと精神的に疲れるっしょ、だからやっぱ店はいいなぁって久しぶりに思いましたよ。義務からの解放って感じで」  D「最近世知辛い世の中じゃん、社内でもちょっと言えばセクハラとか言われるし、昔はそういうのが正常なコミュニケーションだったけどさ。なんも女に言えなくなってるけど、店はやるだけじゃなくて、本来の女との会話ができるっていうか、何言っても問題ないから楽なんだよな。ようやくふつうに女と話せるこういう場所が必要なんだよ。」  B「Dさんやっぱ深いですね〜たしかにセクハラって煩く言わなきゃ、店行かなくなるやつ多いかもしれないです。」  E「まぁ俺の場合、彼女と店は別もんで、共存してますけどね。女は“愛がなきゃできない”人種で楽ですよね。男はそうはいかないですよ。」  C「俺は結婚とか言われないからこっちの方がいいかな」
 私は凄い会話を目にしてしまいました。“セクハラが禁止されているから風俗に行く”、“義務のセックスからの解放”“男の習性”“風俗=本来あるべき女と男のコミュニケーションの場”この団体客はどこにでもいそうな、普通のサラリーマンです。そんな男達が、こんな風に風俗を、女を、そして女との共存を考えているのなら、この世には未来はございません。私はこのコラムに、多くの男性読者からクレームが来ることを望みます。「男をバカにするな」「こんな男達は俺たちの周りには絶対いない!聞いたこともない!」「こいつらは異常だ!」そんな声が届かない社会にもし私がいるのなら、それは異常事態です。しかし確実に、A〜Eの男たちのいずれかのタイプがあなたの街、社会にはいるようです。
 今年の夏、あの光景が私にとっての最強のホラーになってしまいそうです。
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野沿田よしこ(のそえだ・よしこ)

年齢敢えて不詳。私の名前はよしこ。でも“よしこおばさん”となってこそ“私”であると人は言います。なぜ“おばさん”なのか?誰かの“おばさん”というわけではなく、“おばさん”=加齢具合を表現しているわけでもありません。私の行動が“おばさん”以外では成しえないものであるからです。
私の趣味は人の恋愛話し、セックスの話しを聞くことです。と、いってもガールズTALK的に盛り上がり話し、その場で共に聞くようなスタイルでは楽しめないのです。あくまでのぞき聞き、のぞき見すること、百歩譲って1対1で根掘り葉掘り的なTALKが好きなのです。
“人の話しを聞く”“心の中や状況を探る”という力はどうやら“おじさん”“お兄さん”“おじいさん”には装備されていないようです。“お姉さん”と呼ばれる人達には盗み聞きする根性がないようです。そして“おばあさん”には興味と能力はあっても、盗み聞きできるほどの聴力がなかったり、長時間粘れる脚力がなかったり。でも、体力的にまだその余地がある。それが“おばさん”なのです。 

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