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LPC官能小説最終回「……雪のせいだよ」、私の耳を甘噛みしながら、彼が言った

鍬津ころ2019.01.30

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 今にも雪がちらつきそうな曇り空。
 私は今日、友達に誘われて雪国のかまくらイベントを見物に来ていた。

 といっても、合コンの人数合わせみたいなもの。男女四人ずつの団体だから動きは鈍いし、寒いし、想像以上の人混みだしで、私のテンションは下がりっぱなしだった。

 雪道の両側には、かなり大きなかまくらがぽつぽつと並び、豚汁とか甘酒と染め抜かれた幟が立てられている。
 かまくらの合間にも似たような屋台が並び、まさにお祭り。初対面の男のコと、何とか盛り上がる話題を探すより、適当にブラブラしている方が楽しいくらい。
 なんて、あれこれ目移りしているうちに、私、グループとはぐれてしまっていた。

 さすがに心細くなって、辺りをキョロキョロする私の鼻先に、ひらり、と粉雪が舞い降りてくる。
 思わずストールの前をかき合わせた私。
 そのとき、
「あー、降ってきちゃったね、よかったら入らない?」
 後ろか声をかけられた。

 ゆっくり振り向くと、ひときわ大きなかまくらの中から身を乗り出して、私に微笑む
ーーー四条丸駆クン!

 フリースの上に、会場になっているスキー場の名前を染めた半纏を着ているだけなのに、全然寒そうじゃない。分厚い筋肉に覆われた身体から、眩しいほどの熱量が発散しているからだ。
 ネックウォーマーをターバン風に頭に巻いて、ツンツンしたヘアスタイルを半分隠しているのがお洒落。
 灰色の冬景色を背後に、彼がいるだけで、そこだけ春たけなわみたいな温かさを感じた。
 灼けた肌が、お陽様みたいに、触れるそばから雪片を融かしていく。

ーーーか、か、かあっこいいい!

 私の全身も、カッと熱くなった。
 胸が詰まってろくな返事もできないまま、私は手招かれるまま、かまくらの中に入る。

 薄暗い丸い空間は、想像よりずっと温かかった。
 入り口から左右の壁に、向かい合うように雪が椅子形に固められて、敷物が何枚か重ねられている。
 その間には、小さな火鉢。
 天井まで二メートルくらいありそうなのに、彼の存在が、その空間をいっぱいに満たしているみたい。

「ほら、横に座ったら?」
 彼はそう言うけど、どこもかしこも彼の存在感が詰まっていて、弾かれてしまいそう。
 ためらう私は、次の瞬間、
「きゃっ!?」
 腰を掴まれ、彼の膝に乗せられていた。
「しょうがないなぁ、じゃあ特等席においで」
 なんて、いっそう蕩けるような笑顔で言われたら、手足がグニャグニャになっちゃっても、しょうがないじゃない。

 彼は、膝の上に私を横抱きにすると、顔を近づけてくる。
 何度も触れ合う、粉雪のように軽い、甘いキス。
 だけど、その熱さはまるで、冬の花火。
 チュッチュッ、とついばみ合う音が、火花のように目の奥で躍る。
 ウソみたい。
 ディープキスより気持ちイイなんて。

「……ふぁぁ……」
 思わず、うっとりした鼻声が出ちゃう。
 彼は、そんな私のダウンジャケットの前を開いて、温かな手を差し込む。
 さっきのキスみたいに、胸の先をクルクルとついばまれる。
「あぁぁ……!」
 たいした刺激じゃないはずなのに、腰がビクビク跳ねるほど感じてしまう。
 私、ここまで敏感だったっけ!?

「……雪のせいだよ」
 今度は私の耳を甘噛みしながら、彼が言った。
 そうなの?
 雪の日って、淫らな気分になるの?
 雪国の人達って、皆そうなの?
 そうなのかもしれない。
 さっきから、お尻に当たる彼のモノは、レギンスとデニムを重ねていてもはっきりわかるほど、堅く大きくなっている。
「……雪のせい、なんだ……」
 私、熱に浮かされたような気分で、鸚鵡返しにそう言った。
 それから、ストールを彼の肩に巻いて二人の姿を隠すと、彼の股間を解放した。

「……ッ、熱いぃ、融けそう……っ!」
 私、彼の首にかじりついて、欲情の赴くまま、腰を振る。
 腿まで剥き出しにした私のワレメを、同じように露出した彼のモノが直にこすっているの。
 ヌチュヌチュ、恥ずかしい音が止まらない。
 クリの根元と、入り口をゴリュゴリュと攻められるごとに、強烈な快感が全身を貫く。
 まるで、子宮の底まで突き通されているみたい。
 灼熱の棒が、私の中の雪の城を、みるみるうちに融かしていくの。

「もっと! もっとキスして……入り口とクリに、チュッチュしてぇ!」
「いいの? 入っちゃうよ? 君の一番奥に、亀頭でキスしちゃうよ?」
 涎と一緒に、はしたない言葉を垂れ流す私を、いっそういやらしいセリフで煽る彼。
 そんなの、もう、たまらない。
「イイッ、入れたい……奥に、子宮にチュゥして、早く早くゥッ!」

 勢いを増す雪の気配も、外の喧噪も、自分がどうしてココにいるのかも。
 何もかも忘れて、私は彼を求める。
 そして。
 ズプッーーー

ーーー入った!
 背を反らせて、私はエクスタシーの叫びをなんとか呑み込む。
 目の前が真っ暗で、身動きもできない。
 コレが、四条丸クンの……、と、いうには冷たいというか、カタすぎるというか。
 思わず、瞬き。
 滅茶苦茶に腕を振り回すと、ズボッ、という感じで身体の自由が戻った。

 目の前には、マンガみたいな人型の窪みがついた、雪の山。
 何かの理由で崩れてしまったかまくらの名残なのか、これから作られるかまくらなのか。
 過去と未来、私はどっちの空間で、彼に出会ったんだろう。
 どうせ妄想、そうわかっていても、考えずにはいられない。

「あ、いたいた。こんなとこで雪塗れになって、何してるの?」
 雪の山を前に、佇む私の肩を叩いたのは、合コン参加者の一人。ヒョロッとした眼鏡の社労士クンだ。
 かっこよくも、セクシーでも、お陽様みたいでもないけど、モコモコダウンと毛糸の帽子にスノーシューを装備した姿には、どこかホッとするような現実味があった。

「あはは、ボーッとしてたら雪山に突っ込んじゃった! はっずかしー!」
 大袈裟に笑い、雪を払い落とす。
「朝早かったから、疲れたんじゃない? ロッジで飯にしようってなったから、早く行こうよ」
 社労士クンは笑い飛ばしもせず、雪を払うのを手伝ってくれる。案外ジェントルマンなんだ、と見直す私。

 私の現実、今年はもう少し、いい感じになるような気がした。

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鍬津ころ

鍬津ころ(くわつ・ころ)

札幌出身、東京在住。山羊座のO型。アダルト系出版社、編集プロダクション勤務後、フリーの編集者&ライター。2011年『イケない女将修行~板前彼氏の指技vs官能小説家の温泉蜜筆』でネット配信小説デビュー。近著『ラブ・ループ』(徳間文庫)。馬、鹿、ジビエ大好き飲んだくれ系アラフォー女子。タバコの値上がりには500円までつきあう覚悟。 

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