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LPC官能小説第27回「太くゴツい指が私の首筋を撫でる。ひどく冷たい指先が…」

鍬津ころ2018.10.24

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ヒラヒラと舞うものを、蝶々かな?と目で追えば、枯葉だった。

長過ぎた猛暑の日々もようやく落ち着いて、街はハロウィンムード一色。
日が落ちれば、他の時期より毒々しい色のネオンがギラつき始める。
お化けカボチャや黒猫、コウモリが至る所でニヤニヤしている。
なんとなくバカにされてる気がするのは、私も流行りに乗せられて、わかりやすいコスプレをしているからかしら。

紫とオレンジ色のストライプと、黒いフリルに飾られた、膝上丈のビスチェドレス。スカートはパニエで思い切り膨らませ、ガーターをチラ見せ。
魔女の帽子と迷ったけど、頭には、二本の黒いツノつきのカチューシャ。
ちょいエロ小悪魔のイメージなんだ。
けど、血塗れの包帯を巻いただけのナースや、蜘蛛の巣みたいなシースルーのドレスで行きかう女の子の中では、あんまり目立たない。
しかも、防寒対策でマントを羽織っているから、大胆に露出したデコルテで他のコに対抗するのも無理。

ま、本領発揮するのはパーティー会場についてからでいいか。
私は招待メールにリンクされているマップ画面と、辺りの景色を見比べながら、初めて行くクラブの場所を探す。
やがて見つける、ゴシックな佇まいのドア。
看板の飾り文字が凝りすぎていて、店名を確認できないけど、住所は合っているみたい。
私は一瞬ためらった後、鉄の板を打ち付けた中世の牢獄みたいなドア開けて、一歩中に踏み入った。

暗い。
中は暗くて、何も見えないし、物音ひとつしない。
パーティーは20分前には始まっているはず。やっぱり、場所を間違えたんだろうか。
そう、思った瞬間。
ソレは、暗闇から湧き出したように、私の目と鼻の先にいた。

さっきは絶対、誰もいなかったのに。
照明だって、点いた瞬間がわからなかった。現れた人影自体が、ぼうっとした光を纏っているみたい。
見上げるような長身を覆う黒いマントは、靴を隠すほどの長さ。コスプレ用とは思えない、重厚な艶と質感を備えている。
「……っ!」
その人が、マントに埋めていた顔をあげたとき、私は思わず息を飲んだ。

四条丸駆クンーーー
だと思うんだけど。
センターをツンと尖らせたヘアスタイルも、マント越しでもわかるムキムキと鍛えあげられたボディも、彼そのものなんだけど。
奇妙な薄明りの中、彼の肌はゾッとするほど生気がない。
そして。
「ただのにんげんが、このとびらをひらくとは、めずらしい……」
そう言う声は無表情で、口調は妙にぎこちなくて。
口の両端を上げたとき、チラリと覗いたのはまさか、もしかしてーーー
牙!?

と、思いついたときには私、マントをはぎ取られ、彼に抱きすくめられていた。
太くゴツい指が、私の首筋を撫でる。
指先は、ひどく冷たい。
「うまそうな、においだな……」
彼が舌なめずりしながら言うと、左右の白く長い牙がはっきり見えた。
寒くも暑くもないのに、むき出しの肩と背中が、ゾクゾクと鳥肌立つ。
怖くてたまらないのに、抵抗はおろか、悲鳴ひとつあげられない。
私を見下ろす、駆クンらしくもない冷たく鋭い瞳。
そのまなざしに、縛りあげられてしまったみたい。

ーーーズブッ!
「ーーーッ!?」
唐突に、ソレは来た。
彼の牙が、首と肩の間に突き込んだ瞬間、ものすごいとしか言いようのないエクスタシーが、私を襲った。
痛みはない。
あったのかもしれないけど、痛み自体が快感に変換されたとしか思えない。
彼の牙を受け入れた部分は、アソコより何倍も敏感な性器に変わり、ゴリゴリと奥をエグられるたびに、連続絶頂を強いられる。
「ぃあアッ、なにこれェ、ッ、ああぁあんん!」

私、自分から彼の肩にすがりつき、涙とよだれを
まき散らしながら、善がり狂った。
触られてもいないアソコの奥が爆発して、ほんの数分の間に、何度も潮を吹いた。
だけど、その快楽さえも、本物の頂点ではなかったの。

彼、満足するまで私を牙で貫いた後、すこし顎を開いて、舌をあてた。
「くうぅッ!」
一番奥に埋まっている牙の切っ先が軽く動き、それだけで私はまた、軽く達する。
彼はそんな私を無慈悲に見つめ、舌の表面で私の肌を圧迫する。
力を加えていきながら、舌と前歯の先でしごくようにーーー

ジュウウッ、と強く吸われた。
目の前が、真っ赤になった。
絶叫したつもりが、ヒューヒューとか細い喘ぎにしかなってない。
全身がガクガク震えて、彼は牙が抜けないよう、私の頭を抑えなくちゃならなかった。

脳髄を直接蕩かされ、すすられているみたい。
彼に貪られ、消化されていく脳細胞の一つ一つが、死んでも惜しくないほどの悦楽に酔いしれている。
何万、何億のエクスタシーの火花が、彼と私の間を行き交う。
「……ひぁ……ぁはあ……ハァ……ッッ!!」
一呼吸ごとに、新たな絶頂を迎えながら、私は彼の中へと融けていく。

知らなかった。
吸血鬼の生贄になることが、こんなにも甘美で淫らな体験だなんて……

「ちょっと、遅かったじゃない! 迷ったの?」
声と同時に、手を引かれて我に返る。
デスメタルっぽい音楽と、ムードたつぷりのライティング。
私の手を引いているのは、ハロウィンパーティーの主催者だ。
「……」
凄まじい絶頂の余韻で、わたしはまだ返事もできない。
あれは、いつもの妄想?
それとも……
「やだ、どうしたの? 今頃まだ、蚊かなんかいる?」
そんな言葉に私、無意識に首の付け根に指を這わせる。
ズクン、と疼く快楽の余韻。
そして、ぬめぬめと纏わりつく、妖しい感触。

ハロウィンの夜。
私は世界的アスリートが胸の奥に密かに抱える、永遠の飢餓感に、囚われたのかもしれない。

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鍬津ころ

鍬津ころ(くわつ・ころ)

札幌出身、東京在住。山羊座のO型。アダルト系出版社、編集プロダクション勤務後、フリーの編集者&ライター。2011年『イケない女将修行~板前彼氏の指技vs官能小説家の温泉蜜筆』でネット配信小説デビュー。近著『ラブ・ループ』(徳間文庫)。馬、鹿、ジビエ大好き飲んだくれ系アラフォー女子。タバコの値上がりには500円までつきあう覚悟。 

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