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日本に生きる者として、既に体験していたアメリカ大統領選挙。

李信恵2016.11.16

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民主党のヒラリー・クリントン前国務長官が、8日の米大統領選で共和党指定候補のドナルド・トランプ氏に敗北。「米国史上初の女性大統領」は、誕生しなかった。予想では、ヒラリー氏という見方が多かったのに、まさかの結果になった。女性蔑視発言にメキシコ移民やイスラム教徒に対する暴言の数々。まあ、びっくりしたよね。

でも、この結果をどこかで私は見たことがある。この日本で、大阪で、そして東京で。

2012年の12月15日、衆議院総選挙の最終日に自民党の安倍晋三総裁は、東京・秋葉原で街宣を行った。無数にたなびく日の丸、熱狂的に「安倍晋三!」と叫んでいた人たち。君が代の大合唱、朝日新聞に「ぶっつぶせ、朝日!」、」「安倍総裁を守るぞー!朝鮮人は海外に追放しろー!」のコール。ネットでその光景を見ながら、とても怖くなったことを覚えている。誰かが「このままでは、ドイツのクリスタルナハトみたいなこと起きるんじゃないか」とつぶやいていた。

そして、その翌年の2013年、日本国内での在日朝鮮人へのヘイトスピーチは激化した。

一方、大阪では橋下徹氏が2008年1月27日投開票の大阪府知事選挙で183万2857票を獲得し当選し、2月6日に大阪府知事に就任。2011年11月、大阪府知事を辞職、任期満了に伴う大阪市長選挙に立候補し、初当選。どちらの選挙も、圧倒的な人気を見せつけた。

橋下氏は知事時代、 高校無償化から朝鮮学校が除外されている問題について、同府東大阪市の大阪朝鮮高級学校などを視察。自身もラグビー部出身であるため、同校ラグビー部員に対し「大阪代表になってがんばれ」と激励。しかし、その当日、知事は朝鮮学校への補助金支給の停止を表明した。

また、市長時代の2013年5月には「(戦争)当時の歴史を少し調べてみれば、日本だけじゃなくいろんな軍で慰安婦制度を活用していた」「…慰安婦制度は必要なのはこれは誰だってわかる」などと発言。同月初めに沖縄の米軍普天間飛行場を訪問した際には、沖縄県に駐留する在日米軍の高官に「もっと風俗業を活用して欲しい」と述べたという。

2014年7月10日の定例記者会見で、在日朝鮮人などを標的とするヘイトスピーチについて、対策を講じる考えを明らかにした。10月20日には「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の桜井誠会長(当時)と面会、意見交換を行った。その翌日の21日、には在日韓国・朝鮮人らに認められている特別永住資格について通常の永住者制度に一本化する必要があると言及した。

大統領選の結果が出た翌日、この翌日、在阪のテレビ局のニュースバラエティ番組をたまたま見ていると、トランプ氏が橋下徹氏に似ているって話になっていた。うん、すごく似ていると思う。「建前でなく本音で話す」ふりをして、大衆の憎悪を巧妙に(トランプ氏は巧妙じゃないかも)煽るところ。コストをカットすることを主張し、弱者や教育をないがしろにするところもそっくりだ。

また、排外主義のトランプ氏にそっくりと云えば在特会の桜井誠元会長もそうだ。彼は今年の都知事選に出馬し、11万票以上も獲得した。排外主義を肯定する人々が、差別を否定しない人がそんなにもいること、それが可視化されたこと。それにもゾッとした。みんな、半年前の出来事を忘れちゃったんだろうか。

一方、橋下徹氏は自身のツイッターで
「トランプ氏は道徳的にはアウトだろうし、様々な混乱をもたらすだろう。でも権力とカネで筋をゆがめる疑惑がつきまとうクリントン氏は政治家としてアウトだと思う」
と発言していた。
https://twitter.com/t_ishin/status/790759975534505984?lang=ja

どっちもアウトかもしれないけど、せめて差別をしない方を選んでほしかったなと思う。ヒラリー氏が案外女性にも人気が無かったそうなんだけど、それもまた興味深い。「ヒラリーが嫌われる理由は、女だからだ」と云う記事を読んだんだけど、「“成功した”女」だからって云うのもあると思う。

11月12日には韓国で朴槿恵大統領の退陣を求めて126万人の市民がデモに参加した。ダメなものにはダメって云うこと、ちゃんと路上に出て意思表示が出来ること、すごいなあと思った。30代以下の支持率が0パーセントって、どんな大統領やねん。ちょっと前にTwitterで韓国人が「ヒラリーがいらないなら韓国にくれ」とつぶやいたというのを見て爆笑した。まあ、笑い事じゃないんだけれど。どこの国の政治家もあかんよなあ。

あと、米国の大統領選がずっと日本でも報道されていたことも、よく考えると不思議。まあ、米国がくしゃみすれば日本が風邪を引くからとか、米国が超大国だからかもしれないけど、どこかバラエティみたいに消費しているようだ。

その一方で、米国の将来を憂う声が多方面から聞こえたことも、微妙な感じだった。米国の心配する前に、まず日本、大阪、東京じゃないの?って思った。自分の足元がぐらついていることに、あんまりみんな気が付いてないのかも。まあ、東京なんか石原都政が13年余りにわたったぐらいだからなあ。

そして、トランプ氏の勝利後、まだ大統領に就任さえしていないのに、その直後から全米でイスラム教徒やヒスパニック系らを標的にした数え切れないほどのヘイトクライムが巻き起こっている。私たちは、もうすでにこの状態を過去に体験しているはずだ。2013年の新大久保で、鶴橋で。そして、90数年前の関東大震災の際の東京の路上で。

米国はもちろん、日本でも私には選挙権がない。米国の選挙結果に落胆するのも当然だけど、それは私たち外国籍の人々がいつも感じていること。この国にも選挙権が無く、ただその結果を黙って見届けることしかない人がいることも心の片隅にでも置いといてもらえたらと思う。未来を変えるのは、有権者のみんな。

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李信恵

李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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